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日常  作者: さき太
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終章

 「兄貴。兄貴は俺の能力を封じただけじゃなくて、俺の想いもいじってたのか?」

 高英(たかひで)にそう問われて行徳(みちとく)は、そうだな、そうなるのかもなと答えた。

 「俺たちの能力である精神支配は、元来人の成長を見守るための能力だ。だから本来は人の想いまで縛るようなことはできない。でもな、強い想いの向いてる方向を勘違いさせることくらいならできる。俺はお前の沙依(さより)へ向けた想いはそのままに、あの子に向けた欲は表面に出てこないように押し込めさせて、あの子への想いを保護者としての想いとして勘違いさせた。」

 そう言って行徳は高英に、どうしてそんなことをしたのか解るだろ?と訊いた。そう訊かれて高英は何も答えず、目を伏せた。

 「この数年間能力を封じられて過ごしてどうだった?何でも解ってる気でいただけで、知らなかったことだらけだっただろ。」

 そう言って行徳は高英に笑いかけた。

 「お前は俺とよく似てるから、お前には俺みたいになってほしくないと思う。俺は自分勝手で独りよがりで、間違った事を沢山してしまった。最初の俺は本当に弟妹達を護りたかっただけなんだ。あの子達に幸せになって欲しかった。でも、俺のしたことの結果は、あの子達を追い詰めて、傷つけて、怒らせて、無関係な者達を沢山不幸にした。俺はどれだけ贖っても贖いきれない程の罪を犯した。全部、俺の高慢さが生んだ結果だ。お前も自分の能力を過信して道を踏み外し、人を拒んで頑なにそれを行き続ければ俺と同じようになる。お前は俺みたいにならないように、俺のことを教訓にしろ。」

 そう言って行徳は高英に自分の記憶をみせた。

 「俺はな、自分が幸せになるべきではないと思ってる。自分のしてきた事を考えればそんな資格はないと思う。でもな、誰も俺に罪を償えなんて言わないし、あの子は俺にも幸せになって欲しいと言うんだ。次郎(じろう)もあんなに俺を軽蔑して怒っていたのに、あいつには特に酷いことをして沢山のものを背負わせてしまったのに、あいつは言うんだ。俺のしたことは間違ってるけど、俺が願ったことは間違いじゃないって。贖罪ならもうできる事はしてるし、別に誰も俺に不幸になれとか思っちゃいないってな。それでも俺は自分を許す訳にはいかないと思っているのに、でもな、最近今の生活に幸せを感じている自分がいるんだ。お前達の成長が嬉しくてしかたがない。些細な事で憤ったり喧嘩したり笑い合ったり、そうやってごく普通の平穏で平和な日常を送っているお前達を見るのが、そこに自分もいることが、本当に幸せだと思う。そんな自分に戸惑っている自分がいて困る。自分がこんな感情を抱くようになるとは思っていなかった。」

 そう言って行徳は高英の目を真っ直ぐ見つめた。

 「お前はこれからだ。ちゃんと人と向き合うことを覚え、あの子からも離れて、ようやくお前は一歩外の世界に踏み出したばかりだ。これからちゃんと人生を歩んでいって、お前もちゃんとお前の幸せを見つけられると良いな。」

 そう言われて高英は目を伏せた。

 「俺は沙依が視た未来を覗いてたから、あいつの想いがどこにあるのかは解ってた。俺の沙依への想いが只の依存で執着でしかないとも解っていた。俺の想いは愛なんかじゃないって解ってた。だから兄貴に封じられなくても間違っても表に出すわけにはいかないと思ってた。だからこれで良かったんだと思う。」

 高英が絞り出した言葉に、行徳はお前の想いは確かに愛だよと呟いた。

 「兄貴。俺の想いが愛だったとしても、それは間違った愛だったんだ。俺はあいつの思いに寄り添ってやったことはない。本当にあいつが求めてたものを知ってたのにそれを与えてやったこともない。でも俺はあいつが好きだった。あいつに劣情を抱いてたくせに、ずっと子供のままでいて欲しかった。ただずっと俺の手の中にいて欲しかった。失恋っていうのは結構しんどいものだな。どう足掻いたってムリだって解ってたのに、それでも胸が締め付けられる。」

 そう言う高英に行徳は呑みにでも行くか?と声を掛けた。それを断って高英は困ったように小さく笑う。

 「外で呑んで醜態をさらしたくない。俺のこんな感情を知ってるのは兄貴だけでいい。」

 そう言って高英は行徳を見た。

 「兄貴。もう少しの間、俺の能力封じててくれないか?もう少しの間、能力に頼らないで頑張ってみたいんだ。」

 そう言う高英に行徳は解ったと言って小さく笑った。

 「高英。俺がお前に能力を返すときが来たら、その時はお前もこの平和で平穏な日常を護るために尽力してくれるか?」

 行徳のその問いに高英はもちろんと答えた。もう戦争なんてまっぴらだ。今の平穏が続くに越したことはない。生きるためには戦い続けなくてはいけなかった時代なんて、もう二度と来ないに越したことはない。新しい子供達の時代には武器なんて必要がない時代が訪れるといいと高英は思った。


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