助かった...と思ったけれど?
ああ、牢屋だ。何度ここは夢なんじゃないかって思っただろう?本当は心細くて仕方ない。だからか、この所悪夢ばかり見る。
あれから3日程経った。ろくに食べてもいないし、寝てもいない。食事は出されるけど食欲がないし、寝るにしても悪夢にうなされて起きたり、ちょっとした気配だけでも起きたりしてしまうから寝れない。もう動く気力もない。ずっと壁に背を預けて座っている。
アティはどうしただろうか?助けて、くれるだろうか?
「...?」
ぺたぺたと足音が聞こえる。それは私の近くに来ると、とまった。
(なにか......来る?でもどこから...前じゃない...後ろ?)
その時、後ろの壁がズズズ....という重たそうな音を立てて動く。そこから現れたのは、黒い髪に緑の目
がのぞく。
(え?うそ。隠し扉?てゆうかこの子、たしかこの家の...?)
この子爵家の子息だった。まだ11才だが、幼さの残る顔は物凄く整っている。
(あれをどうすればこんな顔に...)
もちろん、警戒を緩めるなんて事はしない。
そんな私の態度をどう取ったのかおどおどしてこちらに近づいて来る。
「父様が.......すいませんっ!」
子爵家の子息はバッと勢いよく頭を下げる。
そんな彼に、まず思ったのは疑問だった。どうして、この子が頭を下げるのか?という疑問だ。
父を許してほしいから?そんな訳は無い。こんな事をしたら許されないなんて事子供でも分かるからだ。
(じゃあ、どうして?)
それは、分からない。だけども分かることはある。
確か、この子の母親.....子爵夫人は亡くなっているはずだ。よく、ここまで来たものだ。普通、父を見て育ったのだからあんな風になってもおかしくは無い。
そして、許すも何もこの子は何もしていない。...親と子は違うのだから、親が憎ければ子も憎いなどとんだ理不尽だ。
(えっと、この子の名前は確か.....)
と、思っていたら丁度よく自己紹介をしてくれた。
「ぼ、僕アルトって言います。」
アルトか。じゃあアルだな。
アルは私がしゃべらない事を不思議に思ったようだ。
顔を覗いてくる。そして私の首についているチョーカーを見て、顔を歪める。どうやらこれを知っているようだ。まあ、あれと親子だし...あれと...
アルはチョーカーに触れて魔力を流しこんでいるようだった。少しするとアルが「よしっ」と呟くのが聞こえた。それと同時にカランッという金属が落ちた時になるような音が聞こえた。
(まさか、あれが取れたの!?)
「もう、しゃべれますか?」
と言ってきた。さっきのはどうやらそういう事らしい。
「え、ええ。話せた...」
どうゆう訳かあのびくともしなかったチョーカーが取れたようだった。
そんな事をしていた、まさに、その時だった。




