パーティーからの.........?
この仕事にも慣れて来た頃の朝。私の部屋にドレスが届いた。ドレスを広げると、そこまで飾りの付いていないシンプルなドレスだった。これなら...と思った所で胸の所開いてんのかよっと思う。ドレスを畳んでしまい、身支度をする。今日は訓練をしに行くから楽しみだ。パーティーもあるけど。
「レイラ、クラウおはよう。」
「おはよう。」
「おはよう。」
レイラ達は普通にしゃべる事と私の影に入る事が出来るそうだ。いつもは心の中でしゃべり、外に出ている。
そろそろ行こうかな。あ、そうだ。アティ起こさなきゃ。と思い出してアティの部屋に入る。そして、寝室に向かう。
「アティ起きて!」
大きな声で言う。防音対策はしてる。音だけ通さない結界を張ってるのだ。無詠唱は楽。アティは起きない。次は実力行使だ。まず、鼻をつまむ。次は口を塞ぐ。最後に無詠唱で拘束すると、なんてことでしょう。
「んー!ぷはっ」
アティが起きました!!拘束と結界を解く。
「おはよう!」
「おはよう!じゃない!!死ぬかと思った!」
「だってアティが起こしてって言うから起こしたのに。」
「起こし方があるだろう!呼ぶとか。」
「起きなかった。」
「揺らすとか。」
「えーめんどくさい。」
「フィナ......」
「じゃあ私もう行くからね。」
と言って部屋を出る。レイラとクラウは両肩に乗っている。
訓練場に着くと、「相手をしてください!」と言って周りに集まって来る。そして、キラキラした目で見てくる。
「わかった。相手をしてほしい者は並べ!」
並んだ順に相手をしていく。そして、その相手の欠点を言っていく。皆前よりも強くなってきている。てゆうか近衛騎士って若いのしかいないのに強くて凄いな。
それが全部終わると15人程の令嬢が駆け寄って来て、
「フィナリア様、差し入れですわ!」
と、沢山の差し入れを持って来てくれる。
「ありがとう。」
私がそう言うと令嬢達は一様に頬を赤く染める。
そう!私はこういう反応が見たかった!
「で、では失礼いたしますわ。」
と、優雅にお辞儀をして去っていく。
その時、いつも私にキラキラした目を向けてお願いします!と言って来る奴が緊張した面持ちで私の方に歩いてきた。周りの騎士達はマジかよと言わんばかりの表情だ。
「どうした?」
「副団長、僕と結婚してください!」
と元気な声で言う。少しの間シーンとして、「抜け駆けは許さん!」という声でわらわらと私の周りに集まり「結婚して下さい!」「いや私と!」という求婚合戦?が始まった。
私が、はぁとため息をつき
「私じゃなくてエリセント家に言え!」
と言うと静かになった。
「全く。私は戻る、じゃあな。」
そう言って部屋に戻った。そこにはもう既に父様が派遣してくれたメイドがいた。
「お嬢様お久しぶりでございます。」
「久しぶり。」
「そんなことよりお嬢様。支度しますよ!」
そうしてアティが扉をノックする頃には私は完璧に仕上がっていた。いつもポニーテールしている髪は下している。ドレスは勿論あれだ。
「どうぞ。」
私の部屋に入って来たアティは、凄く似合っている。完璧な王子だわ。
「そ、そろそろ行くぞ。」
レイラとクラウには影に入ってもらっている。まあ話せない訳じゃないけど。
「分かりました。」
会場に向かっている最中、
「父上の話が終わったらすぐに真ん中に行ってダンスだ。それさえ終われば後は簡単なはず。」
「うん。」
それにしてもほんとかっこいいよな。じーっと見る。
アティは全く気付いてない。
そんなことをしていたらもう会場だ。アティにエスコートをしてもらいながら会場入りする。
丁度国王が言葉を述べ始める所だ。
「今宵は我が息子の為によくぞ集まってくれた。存分に祝い楽しんでくれ!」
パチパチと、拍手されている間に中央に向かう。
拍手が止み、音楽が始まる。そこで私とアティだけが躍る。その優雅さに誰もが感嘆のため息をつく。
ダンスが終わり今は挨拶回りだ。嫉妬の視線に顔が引き攣りそうになるが、頑張って微笑む。
話すのはアティがやってくれてるから私は微笑んでお辞儀をするだけだ。
挨拶回りが終わりそろそろ戻ろうかと考えていたとき、
「あ、あの...少しお話をしたいのですが.......ついて来てもらえないでしょうか.......」
『なんなのじゃ。はっきりしない娘じゃな。』
『うん。何の用かな?』
この可愛らしい令嬢は確かデスティラ家の令嬢だったはず。デスティラ家は父様に不正を発見されて罰として、財産の7割程を国に納めたはずだ。アティに視線を向け、良いかと確認すると、良いぞというように頷き、
「休憩室で待っている。」
「わかった。」
と私達にしか聞こえない声で言葉を交わす。
「少しだけでしたら構いませんわ。」
「は、はい...少しでございます......」
と言って歩き始めた。
結構歩いたと思う。
『クラウ、姿って消せる?』
『出来るに決まっているだろう。』
『じゃあ姿消してアティに少し遅くなるって言って来てくれる?』
『承知した。』
と言ってクラウが行く。
「......どこまでいくのです?もう結構歩いたと思うのですけれど、少しじゃないのですか?」
「そっ、そろそろです......」
そう言って着いたのはひと気の無い場所だった。
「で、話とは何なのでしょうか。」
デスティラ家の令嬢は泣きながら、
「ご、ごめんなさいっ!」
と言って抱きついて来た。
『フィナっ!』
と、レイラが焦ったように言うが、時既に遅し。首の後ろからカチッという音が聞こえてきた。首を触るとチョーカーが嵌められていた。鍵が無いと外せないようだ。
「.........」
声が出ない。魔法を使えないようにだろう。まあでも無詠唱で出来るからいいけど...あれ、出来ない...
令嬢が逃げ去ったその時後ろからガサガサという音が聞こえ、
「はっ!驚いたか?それはな、声も出せなくし、思うように動けず、精霊も寄せ付けない。さらに使い魔を影から出れなくする高性能なチョーカーだ。」
と、男が出てきて言った。
そっか。だから魔法が使えないし、クラウも戻ってきたのか。ほんと高性能だな。こりゃ詰んだなぁ...
そして顔に布を当てられ襲ってくる眠気に身を任せたのだった。




