第一章 マナリスでの異世界生活 1話
ここ半月から今の一日の流れはこうだ。
朝、日が上る頃にミューラが起こしに来る。
マナリスには共通時刻があり、その時刻をマナリス上の国々に置かれた巨大魔導時計が管理している。
エレナス公国は、中央都市にあるみたい。
その巨大魔導時計を基本に、各地に正確な時間が届けているらしい。
まだ、詳しく勉強してないので、らしいとかばっかりだなぁ。
で、支度を整えてキッチンに向かうと、ミューラから備蓄してる食材リストをもらう。
そこから朝食から夕食までメニューを決める。
直前にメニューのリクエストがあったりすると、またその都度調整する形になった。
カズトが食事だけ私がメインでやってほしいという要望には、最初はミューラが困惑した。
「カズト様は何故あんなに食事だけはこだわるのかしら?」
私達は異世界人であり、ミューラにとっては仕える主人だから、マナリスで不自由なく過ごせるように給料以上のサービスをしたがってる部分があった。
気を使ってくれなくても良かったが、そこはミューラのお節介が発動している為だろう。
私はミューラのその気遣いも含めて、本当に助かってるが、カズトの考えはそうじゃなかった。
「ミューラ、あのね。カズトは昔から食には何かとこだわりがあって、きっとまだマナリスの食文化に抵抗があるんだよ。」
確かに、マナリスの食文化は日本の食文化とは若干違った。
まず、米を食べない。ただ、米自体はあったが、酒等に活用されていた。
それから卵は生での活用法がなかった。
調味料は唐辛子がなく、辛味はスパイスが大半だった。
今までの食の常識がズレているのに、カズトは慣れるのにかなりの時間がかかるのだろう。
だから、気長に待ってあげて、と頼んだ。
「あと、私が家事をしないと、ミューラが居ない時に対応できないのが、多分嫌なんだと思う。」
と拗ねた顔で言うと、ミューラはクスクス笑って納得してくれた。
朝食ができる頃には皆も起きていて、皿を並べたりコップに水を汲んだりと手伝ってくれる。
ミューラ達も一緒に出来上がった朝食を食べる。
私達が米を食べているのを見たミューラ達が試しに食べたら、美味しかったらしく、その次の日から米は定番化した。
そう、毎朝必ずリゼルとシャナルはおかわりをするくらい。
食事中も和やかに会話が始まり、今日の予定や昨晩の夢の内容、さらに町の流行り等を様々な会話が流れていく。
端から見たら、家族の会話なんだろうけど、半分が異世界人で構成されているこの状況。
なんだか不思議な感覚になる時がある。