最終章 これが私が望んだ世界 6話
唐突に険悪で始まった国同士のトップ会談に、私は完全に場違いな立ち位置になり、静観するしかない。
「最初から申し上げているが、我々エレナス公国が"扉"の全管理を引き受ける代わりに、生じる損益の8割を。その他、そちらの国々で損益を分ける話ではなかったか?」
「そもそも、それが気に入らないのですよ。」
ネーベル王がニヤニヤしながら、自前の髭をなでつける。ことあるごとに嫌みたらしくて腹立ってくる感じだ。
「確かに、そちらに負担をかけているのは事実。むしろ、我々であったら、この"扉"の維持は無理でしたからな。」
ベルズ王は比較的話ができそうだが、何かが引っかかる。高圧的でいい印象はない。
「魔術師協会の協力が得られたのが大きいですからな。」
エレナス公はそうつぶやくと、オフェリアの方を見た。何かを察知したのか、オフェリアは神妙な面持ちで私を見た。
「アカネ殿。」
いつもと違う呼び名、そして今まで見せたことがない、張り付けた笑み。
「ご協力感謝する、この場は我々の領分です。お帰りください。」
「えっ。」
オフェリアがこちらを見てるので、ベルズ王やネーベル王には顔は見えないが、
「でも、"扉"に関することなら我々がいた方がよろしいのでは?」
咄嗟に残るよ、と私の意思を見せた瞬間、オフェリアがくしゃっと表情を変える。
------巻き込みたくない、と言いたげだった。
するとライガが肩をガッと掴み、下がれと視線を向けた。
「-------かしこまりました。ベルズ王様、ネーベル王様。失礼します。」
「おお、異世界人の魔術師殿。我々も挨拶なしですまないな。」
「部外者は立ち去るがよい。」
私は深々と下げた頭をすっと上げて、ミズハを抱き上げ、"扉"を抜けることにした。その前に、と今まで静観していた豊穣の女神には胸元のブローチを握って、
「(魔脈操作の力、ありがとうございました。お返しします。)」
「(いいのよ。人間のゴタゴタなんて、まっぴらごめんよ。帰るわ。)」
念話を交わして礼を言うと、豊穣の女神は光となって消えた。それを見たベルズ王達は、
「何かを召喚してたのは、異世界人だったか。」
と呟いた。私はその言葉に驚いた、なんで豊穣の女神を知らないんだ?文化的には知ってるはずなんだけど。
「エレナス公、オフェリア姫。何かあればお呼びください。」
それだけいうと、心配そうにオフェリアを見つめるミズハを抱き上げたまま、"扉"をくぐった。
「ああああああ!!!あいつらムカつくぅぅぅぅ!!」
"扉"を抜けて、日本側に帰りつき、ミズハを下ろした瞬間に怒りのあまりに叫ぶ私。
「お気持ちはわかります。」
会話が聞こえていたらしく、状況を何とか把握していたザイアスがはぁ、と呟いた。
「"扉"に関する損益は、確かに私達が関与できる部分は少ないですからね。発言権すらない可能性だってあります。」
「だとしても!あの場で何で急に。」
そもそも終わった直後、タイミングがよすぎる。
ザイアスはおそらく、と呟いた後に事情を話してくれた。
「今回の作戦はマナリス中の魔脈を確認する為に、マナリス中にある魔術師協会のみで連絡していたのですが、内通者がいたようですね。」
「作戦内容の全容は話したのか?」
気になったのかカズトがザイアスに聞く。
「いえ、伝えたのは"扉"の維持を確固たるものにするため、魔脈調査を行う。魔脈が確認取れたら、精霊魔法にて合図せよ。としか。」
精霊魔法の合図は、アリスや精霊王が察知出来るようにするのと、精霊魔法の方が習得率が高いため、使える魔術師が多くいるからだ。
「それだけの情報で、国王が動く事態か?」
「先程、ネーベル王も言ってましたね。騎士王の貴方なら出陣しているはず、と。今回の作戦である程度、エレナス公が疲弊すると踏んでの行動でしょう。」
ザイアスは魔導インカムに触れる。耳にはオフェリアの魔導インカムを通して、会談内容が筒抜けなのだ。
話を聞くと、ベルズ王もネーベル王も共にもっと利益を取りたいが、維持や損はエレナス公が持て、という暴論きわまりなかった。
「それでは話になりませんな。」
当然、エレナス公は拒否。だが、この"扉"はエレナス公国の第二王子が起こした不祥事から生じた産物で、マナリス中から魔法が消えるという最悪な事態を引き起こしかねなかったことを、執拗に問い詰めて、不利に追い込むつもりらしい。
「まぁ、俺でもそうする。」
「でもこれ、公表しないんじゃなかったの?」
この不祥事は王族と魔術師協会の幹部、そして事情を知ってる私達しか知らないはずだった。その為、公表された内容は第二王子の病死と"扉"は魔術師協会とエレナス公国で安全面を保証、そのために維持の為の大掛かりな作戦を行う、ということになった。
ザイアスがはぁ、とため息をついた。
「今回の件といい、不祥事といい、うちの魔術師協会に内通者がいるのは確定ですね。」
「魔術師協会だけで考えない方がいいかもな。王族、もっと言えば俺達の周辺だって怪しいぞ。」
カズトの言葉にムッとしたが、確かに怪しいなら疑うべきだが、私の気持ち的には不愉快だ。
「今はこの会談の行方を見守るしかありませんね。」
「もし、ここの話でエレナス公が折れたら?」
嫌な話はしたくないが、それをあえて聞いてしまう私の癖。ザイアスはむぅ、と考えた後、
「今のような自由な行動や"扉"の利用は、ベルズ王やネーベル王の許可を得られなければ身動きすら出来なくなりますね。」
結論を口にして、げんなりした顔つきになる。
「場合によっちゃ、こきつかわれそうだな。」
「うわ、絶対に嫌だわ。」
そんなこと百も承知なのか、オフェリアの息を飲む声を魔導インカム越しに聞こえた。今、ベルズ王達との交渉は熱を帯びていて、出番がないようで私達の声を聞いていたようだ。
-------何とか今までのようにしたい。
その願いは、オフェリアもエレナス公も同じだった。
エレナス公「よろしい、ならば戦争だ。」
誰だ!?
異世界人にヒ○コーの漫画渡したやつは!!




