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最終章 これが私が望んだ世界 5話

魔脈操作の詠唱は、豊穣の女神に許しを乞うような不思議な祈りの歌だった。

まさか、歌うとは思わなかったが、頭の中に流れてくるフレーズに合わせていくと、自然と歌となっていた。

そう思えば、カズトの詠唱も歌のようにも聞こえたが、そういうことだったのか。

「今、改めてアカネのを聞くと照れるな。」

自覚したくなかったが、カズトが言うので私まで照れてきちゃった。かといって、そういう場合ではないので、気持ちを引き締め直す。

隣で輪唱するように豊穣の女神も歌いだす。どうやらこの詠唱は双方が共に合わせて使うものだったらしい。体を通して、魔脈が緩やかに"扉"へ向かっていく。

「そろそろ維持する分には大丈夫かしら。」

詠唱をやめた豊穣の女神に合わせて、私も詠唱をやめて、体から魔脈がするっと抜けていくのを感じた。

「カズト、ザイアス。こちらは終わったよ。」

「了解。」

短い返答後、カズトの詠唱が始まり、私ははぁ、とため息をついて台座から杖を引き抜いた。体の中の力と言う力が抜けていくのを感じて、ぺたんと地べたに座り込んだ。

「アカネ、大丈夫か?」

「あー、うん。気が抜けちゃっただけ。」

オフェリアが心配そうに近づいてきたが、大丈夫と手をふってみせる。

少しはにかみながら、オフェリアが手を差し出した。


その直後、場の空気が一変する。

転移魔法の気配がこの付近、いやかなり広範囲に、しかも一気に増え出したのだ。

たまらず、私は気を引き締めて立ち上がる。オフェリアが首をかしげてる所から、理解してないと察知して、

「転移魔法で、何かが大多数でここにくる!」

と叫ぶ。オフェリアはライガとフルフェイスの騎士に目配せすると、身構えた。

私はミズハたちを確認、"扉"の近くに引き寄せる。

やがて転移魔法が終わり、姿を表したのは鎧を着込んだ騎士や魔術師、そして見た目でもはっきり解るほど冠をつけた数人の男性。

「ふむ、"扉"の維持は終わりましたか。」

「ベルズ王!何故貴方がここに!?」

オフェリアがその名前を呼ぶのを聞いて、私はあっと記憶を探って思い出した。確か、エレナス公国の隣にあるベルズ王国、その国王直々に来たというわけか。

「無事終わったか、確認しにきただけだが?むしろ、何故、高位貴族ごとぎがこの場にいるのか余は知りたいが。」

ベルズ王が鋭い視線でオフェリアを一瞥。しかし、オフェリアはこんなことでは下がらない。

「ベルズ王殿。私はつい先日、王位継承権を復権しました。ゆえに、私は王族の一人としてここにいます。」

突然のオフェリアの王族復権の話に、私は唖然としたが、ベルズ王もほぉ、と一言呟いたのみ。

「そうか、失礼した。」

「ベルズ王、今はその話ではないのでは?」

声をかけてきた男性も冠をつけている。嫌みたらしい声音が気分は悪くなる。

「そうだったな、ネーベル王。」

ネーベル、この国もエレナス公国の隣の国だ。つまり、この二人はエレナス公国の両隣の国の王様ということか。

「エレナス公王、そろそろ棚上げしている"扉"の利益配分を決めなくてはならないな?」

そう話しかけたのは、フルフェイスの騎士。彼は微動だにせず、剣に手をかけたままだ。ただ、放つ威圧感はかなりの圧だ。しかし、ベルズ王もネーベル王も負けず劣らずの気迫だ。

「騎士王たる貴方なら、必ず出陣されてると思いましたよ。」

ネーベル王はねちっこい声で、フルフェイスの騎士に見上げるように話しかける。

彼はそのフルフェイスの兜に手をかけ、脱ぎ捨てた。からん、と音がしたが、誰も兜を見なかった。

その騎士は、確かに一度、見た顔だった。精悍だが優しげな顔立ち、鋭い瞳。

町中にあるその顔の肖像画、エレナス公国のエレナス公。騎士王、の異名をもつ最強の王。

まさか、同じ場所に立ってるとは思わず、愕然と事態を見るだけの私。

ふと、エレナス公が私に視線を向ける。ハッとして私は頭を下げた。ふっとかすかに微笑んだ後、キリッとした表情にかわる。

「そうだな、待たせてすまなかった。」

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