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第七章 辿り着く真実の先に 7話

社殿の中は清廉で豪奢な作りの祭壇があり、古びた木造はまるで生きてるような気がするほど健在だった。

祭壇の前に置かれた座布団は3つ、その正面にはさらに大きな座布団が1つ。当然その席にはカスミさんが座り、私達は横並びに座る。

「さぁて、これから真面目なお話になるけれど、いいかしら?」

カスミさんがそう言うと、今までの優しいオーラが荘厳なオーラに切り替わる。それを感じ取った私達は、気を引き締めた。

「はい、よろしくお願いいたします。」

カズトが真面目に答えると、カスミさんは神主らしく祭壇に向かって祈りを始める。カスミさんの言葉が紡がれる度に周囲の気配がより清廉で厳かな雰囲気が強くなっていく。それに合わせるように何かの気配がカスミさんのすぐ側に収束し、人の形に変わる。

そこには、少女といった方が合っている程幼い顔立ちで、長い黒髪を地面スレスレまで伸ばし、開かれた瞳はまるで一色の宝石が嵌まったかのような、気味の悪い色。十二単の鮮やかな着物が、酷く不釣り合いに感じた。

「カスミや、この子らか?」

艶やかな声は、見た目に反するほど大人っぽかった。なるべく警戒しないように、感情を出さずに抑えるのが精一杯の私。

「はい、どうか聞き入れていただけますか?」

カスミさんがほぼ土下座のような体勢だった為、私とザイアスはそれに習っていたが、カズトは今でも姿勢を真っ直ぐにし、真っ正面から神様を見つめている。その姿からは警戒も畏怖も何も感じない、仕事モードの彼だ。

「ほぉ。」

カズトを見て、興味が湧いたのか神様は近づいてくる。

「お主らがあの歪な入り口の調査をしている者、かえ?」

「はい。」

真っ直ぐ視線を外さず、神様に見据えるカズト。私は話が始まるようだったので、顔をあげた。ザイアスも同じく顔をあげて、神様を見ているようだ。

「して、何がしたい?」

神様はカズト以外に興味を示さない。今はそれが助かっているが、知識の神といい、この神様といい、何故か得体の知れないものに好かれるカズトに、少し不満だ。

-------一番、私なんですけど、と言う幼稚な嫉妬心が疼く。

「現在、日本の竜脈に、マナリスの魔脈と呼ばれる自然エネルギーが混じり、本来ならば生まれるはずのない、魔術を操るものが生まれています。」

「ふむ、お主らのことか。」

神様は状況を把握してるようで、カズトだけでなく私を見てそう呟いた。カズトは話を続ける。

「この魔脈をマナリス側へ戻すと同時に、日本側からも竜脈を通じて、"扉"を維持したいと考えております。」

「ふむ、その手段は持ち合わせておるようじゃな?」

少し考えこむ仕草を見せる神様。ちらりとザイアスを見た後にカズトに話しかける。

「なら構わぬが、今後も日本で魔術師は生まれるのか?」

カズトはこれは自分が答えるべきでない、とザイアスに視線を向けた。それを受け止めて、恭しくザイアスが神様を見る。

「その話は私が。申し遅れました、ザイアス・シルフィ・エレノールと申します。」

「長いのぉ、ザイアスで良いか?」

神様がめんどくさげにそう言うと、ザイアスは苦笑いしつつもうなずいた。

「今後も日本に魔術師の才能があるものは、低いとは思います。ですが、カズト達のようにマナリスの魔脈に触れて、生まれてしまってる者がいるかと思います。」

「ふむ、ならその者たちはどうするつもりか?」

ザイアスは少し思案した後、キッパリと言い放つ。

「希望があれば、こちらへ移住していただきます。無論、強制はしません。」

「そうか、ならよい。魔術を持つ我が子らを頼むぞ。」

神様がふっと、かすかに笑いながらザイアスに告げた。それを受け止めたザイアスは深々と頭を下げた。

「なら、話そうかの。」

カスミさんがいつの間に用意したのか、ちゃぶ台と緑茶が入った湯飲みが5つ並んでいた。座布団にどすんと座ると、神様は私達にも飲め、とすすめたので遠慮なく頂くことに。

「妾がマナリスの魔脈を察知したのは五十年ほど前だ。」

「ご、五十年前!?」

ザイアスは予想外の年月に、思わず声が上がった。神様はうむ、とうなずいた。

「その頃はまだ異世界からなのかはわからぬし、新たな神が生まれて災厄となるかも、年月が経たぬと判別つかぬのだ。」

故に様子を見るしかなかったのだ、と神様はいつの間にか、手元に大福を持っていた。もぐもぐと少女のように食べる神様をみて、先程感じた畏怖が泡のように消えたのを感じた。可愛い。

「そこから十五年程経つ頃に、子らには見えぬが、"扉"の兆候を見つけたのだ。」

異世界からの侵略か、と警戒したが何も起きず、代わりにマナリスの魔脈がまるで日本の竜脈に混ざりこむように流れ始めたのがこの頃らしい。

ザイアスは衝撃の事実に、唖然としながらも話を聞き逃さないように真剣な顔つきになる。

「そして、カズトや。お主が生まれる直前にその魔脈は恐ろしいスピードで竜脈に流れた。妾も呑まれかけた程の勢いじゃった。」

「生まれる直前っと言うと、三十五年前か。」

カズトが呟いた直後、ザイアスがあっと声をあげた。

「その時期です。」

「えっ?」

「第二王子の王属魔術師たちの入れ替わりがあった時期です。まさか、しかし、タイミング的には。」

ザイアスは頭を抱えて考えこんでいる姿に、神様は遠慮なく言い放つ。

「魔脈に意志があるとは思わぬが、いくつもの魂が悪霊のように暴れる様を、呑まれかけた際に感じたが、よもや、魔術師達が犠牲となっておらぬか?」

「っ!………調べておきましょう、もしそうだったのなら、第二王子は裁かれなくては。」

ザイアスは怒りを押さえながらもそう呟いた。神様はそれに構わず、さっさと話を進める。

「カズトが魔術師の才があるのなら、その時期に竜脈付近で生まれた子らを探せばいるかもしれぬな。」

「その調査もいずれ。今は"扉"の維持が急ぎになりますので。」

色々判明したことにザイアスは混乱しているようだった。しかし、今やるべきは決まってるし、大丈夫かな。

「後の話はお主らも知っての通りじゃ、マナリスの魔脈が日本の竜脈を目指して集中した為に、あの"扉"が生まれた。そんなところかのぉ。」

「一つ、聞いてもいいですか?」

私は何となく気になって、神様に質問をする。大福の次は団子に手を付けだした神様が、良いぞと返す。

「神様はマナリスを、異世界を受け入れるのには反対されないんですね。」

「ちょっと文化や技術が変わった国が3つ増えるだけじゃ。魔術は確かに分野が違うが、この世界にも似たものなぞ、ごまんとあるのじゃぞ?今更じゃ。」

カラカラと笑う日本の神様は、寛大だったんだと改めて思い知った。

「魔脈に呑まれかけた時は怒りもあったがのぉ、実際に体感するとなかなか興味が沸くものじゃな。」

不幸中の幸いがこれかな、神様はザイアスに、魔術のことやマナリスのことを聞いているようで、真面目な話はこれで終わったようだった。


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