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第七章 辿り着く真実の先に 5話

「今日は帰れない、良い子にしてなさい。」

と、魔法で作った伝書鳩をミズハ宛に送る。あっちにはミューラたちやリリィがいるし、今さっきミューラ達にも詳細を記した伝書鳩を飛ばしてある。

「よし、向かいましょう。」

ザイアスも伝書鳩を飛ばし終わったのか、"扉"の横にある検問に向かって歩き出した。ザイアスが手続きをしてもらってる間に、アメリに魔石を小さく砕いた小石の餌をあげる。

「(またいくの?)」

「今回は別の用件で急いでるから、神畑の家には行かないからね。」

アメリは何故かあの家が落ち着くようで、また行きたいと言っていたのだ。恐らく魔脈のすぐ側だったせいだろう。アメリはたっぷりと魔力を補給したせいか、この数日でアメリの持つ魔力量が増大していた。

「(うん、まみゃく、何とかするんでしょ?)」

まみゃく、の発音が可愛すぎて、一瞬ほっこりしたがすぐ我に帰り、そうだねと答えた。

「お待たせしました。」

ザイアスが戻り、私達の検問はなしで通る話となった。緊急事態だと伝えたのもあるのだろう。

私達は数日前に通った"扉"に、再び向かい合うことになった。数秒の感覚は何も感じず、あっという間に日本側にたどり着く。

「あれ?神森さん。」

そこにいたのは、前回の爬虫類が苦手なあの女性だった。慌ててアメリが私の服のポケットに潜り込んだ。ザイアスが女性に話しかけ、事情説明をし、書類を渡している。女性は青ざめた顔になり、慌てて駆け出していった。

「彼女に上の人間に話を通すように、書類を渡しました。すぐ終わるはずです。」

ザイアスがそう話して待っていると、カズトが突如周囲を見渡しながら、警戒し始めた。手には杖を構えて、明らかに戦闘モードのようで殺気まで感じた。

そんなカズトを不審に思って、私が声をかけようとした瞬間。

---------------りぃん。と鈴の音がした。

私も唐突に聞こえた鈴の音が、今まで感じたことがないほどのとてつもない畏怖を感じ、同じく短杖を構えた。

「お二人とも、一体何が?」

ザイアスは聞こえてないのか、突如臨戦態勢になった私達に声をかける。

「鈴の音がするの。しかも、とびっきり嫌な空気を纏った何かが私達を見てるの。」

「建物の外にいるな。」

カズトは出入口の方を見る。ザイアスも集中しているようだが、やはり感知出来ないのか、首を降っている。

「私には感じませんね。」

「まぁ、無理かもな。多分、ザイアスは初対面だ。」

カズトはゆっくりと杖を下ろした。気配が先程からあるが、畏怖は収まったからだ。私は初対面、という言葉が気になって、カズトに問いかける。

「初対面って?」

「会えばわかる。」

カズトがはぐらかした後すぐに、女性が初老の男性を連れて戻ってきた。

「お待たせしました。」

「はじめまして、ザイアス殿。そして、神森ご夫妻。」

検問管理の責任者と名乗った男性は、ある程度の話をした後、どうぞと通してくれることになった。

「ああ、そうだ。外で神森ご夫妻をお待ちしてる方がいますよ。」

ようやく思い出したのか、男性がそう言った。

「旦那さんの方にご用事のようですが。」

「ああ、納得した。ありがとうございます。」

カズトは男性に礼を言うと、すたすたと歩き出した。慌てて私とザイアスは礼をいって後を追う。

出入口を出ると、私は思いがけない人の顔を見て、驚愕した。

カズトは解っていたようだが、明らかに嫌そうな顔で、その人物に話しかけた。

「お待たせしましたか、大叔父さん。」

そう呼ばれた人物は、こちらも明らかに嫌そうな顔で睨み付けた。






「乗れ。」

ついてこい、と言われて渋々行くと駐車場の車にたどり着く。黒塗りのベンツの運転席から、人が出てきて、私達に会釈する。

「何処へ行くんですか?」

ザイアスがそう大叔父にいうと、鼻であしらったまま、運転手があけた助手席のドアに滑り込むように消えた。すぐ、運転手が後部座席のドアをあけ、私達を促す。

「カズト。」

「乗ろう。」

私がどうするか聞く前に、カズトはあっさりと車に乗り込んだ。私ははぁ、とため息をついて、ザイアスに先に乗るように促す。続けて私も乗り込むと、ドアが閉められ、運転手が車を運転し始めた。

「あの、そろそろ話してもらえますか?」

鼻であしらわれたザイアスは、少し不満げにカズトに話しかけた。カズトは明らかに嫌そうな顔のまま、話そうとしないので代わりに私が話すことにした。

「今の人はカズトの親族で、義父さんの叔父にあたる人だよ。」

「何故、ご親族が?」

と、質問したザイアスの声にベンツの仕様で助手席に座った大叔父の姿は見えないが、嫌そうな声で話し出した。

「俺だって二度と関わりたくないが、何せ本家のご当主様が迎えに行け、というもんだから、来てやっただけだ。」

その言葉に私は愕然とした。

「え、あの、大叔母さんが?」

「末席の嫁風情が、ご当主様と言え。」

ぼそりと呟いたその理不尽な言い様に、ザイアスが殺気を放ち出した。私も同じ位殺気立ったが、大叔父はビクッと震え上がったので、

「す、すまなかった!言い方が悪かった!頼むから魔法はやめてくれ!!!」

姿は見えないがかなりビビったようで、慌てて謝り出した。あまりの豹変ぶりに、私は呆気にとられてたら、カズトがぼそっと、

「ザイアス、次似たようなこと言ったら、やって良いぞ。」

と言い出したので、状況を察知したザイアスがニヤリと笑った。

「わかりました。容赦しなくて良いですね?」

「た、頼むっ!やめてくれ!もう言わないっ!!」

大叔父はひたすら謝り倒している。一人だけ置いてきぼりの私に、ザイアスがメモを見せてきた。

「どうやら魔法使いになった貴方達に、何されるかわからないので、怖くて仕方がないようですので、軽く脅してます。」

恐らく念写したであろう、その書かれたメモを見て、私は思わず口許を隠しつつ、ザイアスにウィンクして礼をした。

「と、とにかく、話は彼女から聞いてくれ。」

このヘタレバカ大叔父は、婿養子で本家の当主である奥さんの威光を借りてるだけで、実質は当主のパシリなのだ。以前からこの高圧的な態度だったが、私達がマナリスに移住し、魔法使いになった後は、借金の際のいざこざの復讐をされるのではないか、とビクビクしているようだ。

事情がわかったら何てことはない、私は気持ちを持ち直した。

「では、向かってる先は。」

「神代山を本山とする、神森神社だ。」

カズトが嫌そうにザイアスに言った。

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