第七章 辿り着く真実の先に 3話
こちらの祭壇は、天井から降り注ぐ光と円の形の床と椅子は同じだったが、周囲は室内とは思えない草花が咲き乱れてた。見る限り、地面が人口的に作られてるようだ。
「さぁ、お呼びしますね。」
神官達は部屋から出て、レーア司祭と二人きりで祭壇の前に立つ。バズス司祭と同じように、膝を落とし、祈りの言葉を呟いた。
すると光が溢れだし、椅子に光が収束する。人の形になると、現れた姿に私は思わず驚愕した。
淡い桃色の長い髪に、開かれた瞳は煌めく虹色を纏った緑。優しく穏やかな表情は、癒し系。そして、たわわに実った胸を申し訳程度の薄い布のワンピースで飾っている。
「呼び出しに応じ、下界しましたわ。」
立ち上がり、私達にまるで朝日のような爽やかな優しい笑みを見せた。声も癒し系で優しい。
「呼び出しに応じて頂き、ありがとうございます。女神様。」
「ごめんなさいね、レーア。いきなり、こんなお願いをしちゃって。」
女神とレーア司祭が親しげに会話をしているので、私はゆっくり立ち上がって、会話を待つ。
「で、彼女ね。」
女神が私の方を向き、優しげな笑みを向けた。
「はじめまして、女神様。会いに来るのが遅くなって申し訳ありません。」
「アカネ、会いたかったわ。」
女神は笑みを浮かべたまま、まるで久しぶりに会った家族のように抱き締めてきた。私はちょっとビックリしたが、母さんのような暖かさを感じて遠慮なく抱き締め返した。
案の定、レーア司祭はかなり驚いた顔をしたのが見えてたが、気にしないことにした。
「早速だけど、色々話を聞かせてほしいわ。」
「何なりと、女神様。」
冗談っぽく言ってみると、女神様なきょとんとしたあと、満面の笑みに変わった。
女神と司祭とのお茶会は、私が一方的に話して聞かせる形になった。何せ、女神様がたくさん聞きたがって、答えるパターンだったからだ。
「美容に充実してるなんて、うらやましいわ!」
大体は美容や衣服に関する内容で、たくさん聞けたので、ご満悦の様子だった。
「また日本に帰った際には、何か買ってきましょうか?」
「あら!良いの?」
「まぁ、これから色々、助力を借りれれば、ですが。」
私がちらっとそんな風に言ってみると、女神様はあぁっ!と突如思い出したかのように手を叩いた。
「嫌だわ、私ったら!神様の仕事のこと、すっかり忘れてたわ!」
まさかの、女神様の仕事放棄。レーア司祭も頭を抱えたところから察するに、いつものことのようだ。
「勿論よ、アカネ。じゃ、こうしましょう。貴方は私に日本の美容製品と洋服を、そうねぇ、毎年2回位献上して。」
「あ、はぁ。回数少なくて大丈夫ですか?」
「そんなに頻繁に帰れないでしょう?」
女神は首をかしげて答える。私はそうですね、と
呟くも解決策もないので、
「では、それでお願いします。」
と合意が得られたところで、女神は早速と言わんばかりに、女性誌のカタログをどこからか取り出して、これとこれとー、と選び出したので、慌ててメモを取る。
見た限り、私が普段着ている服と違うジャンルの為、ブランド名をチェックしないと間違ってしまいそうだ。
「化粧品はこのブランドを試したいな。」
次に出したカタログは、有名な化粧品メーカーのパンフレットだった。見覚えのある名前で、
「ああ、それなら私の母に以前社員だったので、良いものがあるか、聞いてみます。」
と返すと、女神様は大喜びでカタログをめくりだした。レーア司祭も興味がありそうなので、今回のお詫びに試供品を用意しよう。
「で、女神様、助力の方ですけど。」
「そうね。助言は知識の神がしてそうだから、私からは違う方がいいわね。」
女神は何か考え込んだ後に、私に手を差し出す。
「貴方には魔脈が見えているから、魔脈の流れを操作できるようにしましょうか。」
その言葉に驚いたのはレーア司祭だ。まさか、魔脈を操作どころか、見えていることすら驚きなのだ。
「よろしいのですか?操作出来るのなら、この世界から魔脈を消し去るのも出来ますよ?」
と半分脅しのような言葉を吹っ掛けると、レーア司祭の顔色が警戒を変わった。
当然だ、魔脈がなくなるということはマナリスから魔法が消え、今の生活水準が変わり、世界が混乱するのは明白なのだから。
女神はこちらの意図を解っているのか、子供のいたずらに困った笑みをする母親の顔になる。
「貴方がそんなことする子なら、私は貴方をここに呼ばないし、気に入っていないわ。」
「勿論、そんなことするほど無知でもなければ愚かな考えは持ってません。」
例え話ですよ、とレーア司祭にいうと、心の底からホッとしたようだ。
「アカネ、そういう冗談は人に好かれないわ。」
「すみません、どうも昔からこんな性格なんですよ。大事な場面で敢えてこういう事態もありえる、とわかってもらいたいので。」
私の悪い癖をそう弁解したが、レーア司祭の表情は警戒したままだった。
「レーア、大丈夫よ。裏を返せばこの子はそれだけマナリスを考えてくれてるのよ。」
「私だってせっかく憧れの魔法使いになったのに、そんなことして手放せませんよ。」
初対面であんなこと言われたら、そういう態度にはなるのは解っていたけどね。
「失礼しました、アカネ殿。」
ようやく納得いったのか、レーア司祭は頭を下げた。私はこちらこそ、と謝った。
「では女神様に誓って、この力は必要に迫られた時以外は使いません。必ず女神様に許可を取ります。」
「じゃ、このブローチをあげるわ。」
女神から手渡されたのは、金で出来た稲穂に束ねたリボンの所にエメラルドが嵌まったブローチだった。
「ありがとうございます。」
「ブローチを握って念話してくれれば、私に聞こえるから。」
受け取ったブローチを早速胸元に着ける。キラキラとキレイに光って目立つかな。
「今後は神殿を通さなくても話ができるわね!」
嬉しそうに話す女神の横で、微妙そうな顔になるレーア司祭。
「献上品を納めに来るときには神殿を利用させていただきたいのですが。」
そういうと、レーア司祭はハッとなって笑顔に変わる。
「また来て下さい。私もお話できて楽しかったです。」
こうして、豊穣の女神の助力を貰い、私はザイアス達が来るまで気長にお茶会を楽しんだ。




