第七章 辿り着く真実の先に 2話
祭壇は、室内であるが何故か光に溢れた場所だった。中央の祭壇の前には円の形の床に、椅子がぽつんとあるのみ。周囲には知識の神様らしく、本棚が天井に届く程高く、本がみっちり入っている。
「さぁ、お呼びします。」
バズス司祭はそういうと、祭壇の前に膝を落とし、祈りの姿勢に入る。祈りの言葉が紡がれ、周囲の空気がざわつき、落ち着かない。
やがて、祈りの言葉を聞いたか、天井から降り注ぐ光が溢れだし、椅子に収束すると人の形になり、姿を現した。
ギリシャ神話に出てくる神様のような容姿、金髪は緩やかなウェーブで、肩まで流れている。開かれた瞳もまた虹色を纏った金色。服は魔術師のような長いローブを着こんで、眼鏡をかけていた。
「呼び掛けに応じ、下界した。」
まるで人気声優の声かと思うほど、色気のある男性の声。中性的な見た目だったせいか、声を聞くまで解らなかった。
「応えていただき、ありがとうございます。」
バズス司祭の言葉を聞き終わる前に、知識の神は立ち上がり、づかづかと私達に近づいてきた。
私は咄嗟にカズトの斜め後ろに下がり、カズトも右手で私をかばうように伸ばす。
そんな私達を、いや、私を見ることなく、カズトの目の前に立つ。
「貴様らが異世界人か。」
どう答えるべきか判断しかねる状況に、バズス司祭は慌てて間に入る。
「はい。彼らは、」
「話したいのは司祭ではない、そうであろう?」
余計なことをするな、と知識の神がバズス司祭を一睨みすると、カズトに向き直る。
「私達は異世界人です。非礼があるかと思いますが、ご容赦ください。」
カズトが仕事モードの無表情敬語マンに切り替えた。私はどうやら眼中になさそうなので、そろそろ後ろの方に下がる。
「かまわん、貴様と話したい。他の者は下がれ。」
「は、はぁ。」
バズス司祭は渋々答えて、私達に目配せしてきたので下がることにした。
「ああ、もう一人の異世界人よ。」
まさか声をかけられると思わず、私はびくっと肩を震わせてしまった。振り返ると、知識の神がニヤリと口を歪めた。
「豊穣の女神が、貴様と話したいそうだ。話は通しておくから、今すぐ会いに来い、と。」
「えっ。」
女神からの呼び出し、予想外な状況に私が固まっていると、ザイアスが肩を叩いたので我に帰る。
「わ、わかりました。すぐに伺います。」
「あいつは相当、貴様を気に入ってるようだぞ。」
それだけいうと、知識の神はすぐカズトの方を向き、話を始め出した。こちらには全く興味がないようだったので、さっさと退散することにした。
「あの方だけで大丈夫ですかな?」
バズス司祭は困った顔を見せるが、私はまぁ、と頬をかきつつ答えた。
「カズトなら、大丈夫だと思います。」
何せ仕事モードのカズトなら、相手がどんな嫌いな相手でも丁寧に、かつそれを悟られないように振る舞うから、会社ではクレーマー対応の達人として知られていたんだけどね。
まぁ、日本での話だから、詳しく話す必要ないかな。
「じゃ、呼ばれてますし、私はこれから豊穣の女神に会いに行きますね。」
ザイアスにそう告げると、うなずいて返した。
「では、豊穣の女神の神殿へ向かいましょう。バズス司祭、彼女を案内したら私はまたこちらには戻りますので。」
「承りました。」
あわただしく挨拶を済ませ、私達は馬車に飛び乗り、豊穣の女神の神殿へ急ぐことになった。幸い、近くにあったのですぐに到着した。すると神殿の前には、神官と司祭らしき女性たちが待っていた。私が馬車から降りると、神官が近づいてきてお辞儀をした。
「失礼ですが、アカネ様でございますか?」
「はい、私です。」
神官は笑みを見せて、司祭らしき女性の前に案内してくれた。
「ようこそ、豊穣の女神の神殿へ。わたくし、司祭のレーアと申します。」
「突然の訪問になり、申し訳ありません。」
私は頭を下げると、レーア司祭は恐縮したのか、慌てて首を横に降った。
「いえ、女神より話をうかがっております。こちらへどうぞ。」
「アカネさん、私はすぐ戻りますので。レーア司祭殿、終わったら待たせていただきますか?」
ザイアスがレーア司祭と話すと、彼女はうなずいて答えた。
「勿論です。」
「では、失礼します。」
私は急いで引き返すザイアスを見送った後、神官たちとレーア司祭と共に、神殿内にはいった。




