第七章 辿り着く真実の先に 1話
日本から帰ってきてから、数日後。
私達は、ザイアスに魔脈のことを話した。また、ザイアスも確証はなかったが、アリスから聞いていたことを話してくれた。
「黙ってて、ごめんね。」
「いえ、こちらも皆さんに話してないことはたくさんありますから。」
驚く程あっさりと互いに謝罪し終わり、いよいよ本題に入る。
「いつ頃から見えてたんですか?」
「精霊王と契約した後からだな。」
「私はアリスから聞いてたなら、その時だよ。」
そうするとやはり、カズトはだいぶ前から見えていたことになる。
「なら、早く言って欲しかったんですが。」
「話す理由がないだろ。」
きっぱりと言い切ったカズトに、ザイアスは何も言えずに頭を抱えた。
「まぁ、この際置いときましょう。」
何とか話を再開する為に、私がお茶を注ぎながら、ザイアスに話しかける。
「で、日本政府から何を言われたの?」
「はい、まずは"扉"の再調査、後はまぁ、皆さんには関係ないですかね。」
鞄から書類を出しながら、ザイアスが軽く読み上げる。私達はさらっと書類に目を通す。
「あ、馬牛の流通。日本から依頼されたの?」
「はい、ただ数の確保やリスクの問題がありますからね。難しいですが、叶えたいとは思います。」
きっと母さんたちが喜んでた姿を見たからだろうな、と私は心の中でクスッと笑った。
「"扉"か。」
カズトが今までの"扉"の調査報告を見ながら、しみじみ呟いた。
「魔脈が関わってるのは間違いないかもな。」
「見えましたか?」
私達はうなずく。
「どちらの"扉"にも、魔脈が一つに集まってるように見えてた。」
「どちらも?」
ザイアスは少し驚いた顔を見せる。
「日本側にも魔脈があった、あっちはかなり太いラインが見えたの。」
私が補足すると、ザイアスはふむ、と考え込んだ。
「日本にも竜脈という、自然のラインみたいなのがあるから、それがこっちでいう魔脈になるかもな。」
カズトがそう話すと、聞いたことがあります、とザイアスは返した。
「マナリスの魔脈が、"扉"に集中してるのは間違いですが。」
「"扉"を形成してるのが魔脈なら、壊しちゃったりしたらマズイよね。」
ザイアスはうなずく、日本政府も我々もそれは望みませんから、と付け加えた。
「違うものに置き換えるのは?」
「魔脈ほどのエネルギーの代わりになると、マナリス内にはドラゴンや神々に助力を借りる位かと。」
マナリスのドラゴンや神々は、非常に気難しい上に、かなりの代償を要求するらしい。ハイリスク×2ハイリターンという、面倒なものらしい。
「そう考えると、精霊王はまだ気さくな方なんだね。」
「単純明快なだけですよ、彼は。」
ザイアスも苦笑いするほどの人物のようで、私はアリスとだけ面識があってよかったかも、とホッとした。
「まぁ、神々の中にも比較的、話を聞いてくれやすい方もいますから、話を通すのはアリかもしれません。」
「ちなみにどんな神様?」
「豊穣の女神と、知識の神ですね。」
神学は軽くしか聞いてなかったが、確かにどちらの神様も人族には寛大だったはず。
「特に、知識の神なら、日本や地球の知識を条件に助力を貰いやすいかもしれません。」
ザイアスはあぁ、でも、としぼんでいく。
「異世界の知識は邪道、と言いかねませんね。」
「あーいえばこーゆー、的な神様?」
私がそういうと、似たり寄ったりですね、とザイアスは肩を落とした。カズトは相変わらず頭の中で色々考察しているようだった。
「可能なことはやってみましょう、豊穣と知識の司祭と面会を取り付けましょう。」
「そうね、出来ることはやってみるしかないよね。」
とザイアスと二人で話し合いを終わらせようとした時だ。
「日本の魔脈、使えないか?」
このカズトの発言が、とんでもない事態の序章になるとは思わなかった。
次の日、私達はザイアスと共に、転移魔法で王都にやってきた。久々の正装をひきずりながら、向かった先は神殿、知識の司祭と面会の為だ。
「ここの司祭はご子息が魔術師で、我々との交流は盛んなので、気楽です。」
畏まった感じがなく、普通に神殿内を歩くザイアスを見て、私達は少し気を緩める。
「ザイアス殿。」
声をかけてお辞儀をした老人を見て、ザイアスは爽やかな笑みで近づいた。
「久しぶりです、バズス司祭。」
「以前会ったのは、異世界交流祭でしたかな?」
握手を交わし、親しげに話す二人を見ていると、バズス司祭と呼ばれた老人が私達に向き直る。
「ようこそ、異世界のご夫婦殿。」
「はじめまして。」
カズトが軽く会釈すると、ならって私も会釈をする。バズス司祭は私達を見て、柔らかい笑みを浮かべた。
「ザイアス殿から伺っております。カズト殿とアカネ殿ですな。」
「はい、今日はよろしくお願いいたします。」
カズトの顔が少しワクワクしているようだった。知識の神様、なんて聞いたら色んな文献がありそうと踏んでるんだろう。
「早速ですが、我らの神がお待ちしてますよ。」
バズス司祭が神殿の中でも、神との交信が出来る"祭壇"へ案内してくれた。
マナリスの神様は、意外と簡単に人間と会話してくれる。"祭壇"を通して、神託等を授けるが、必ず代償を要求する。一年間毎日神殿で祈りを捧げる、なんて楽なものから、寿命や人生で使える幸運を要求する、という尋常じゃないものも。
今回は何を要求されるか、私達はヒヤヒヤしているのだ。
やがて、私達は大きく荘厳な扉の前にたった。




