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第六章 日本へ里帰り 8話

とにかく歩けば騒動が起きる状態だった。

オフェリアはアトラクションを待ちきれず文句をいったり、いざ順番が来ると怖いのかハイテンションで誤魔化しだしたり、実際に乗るとビビりまくって大騒ぎしていた。

いくつかのアトラクションを回ると、まるで入場当初の元気が嘘のようにしぼんでいた。

「アカネ、日本はこれを娯楽としてるのか。」

「まぁ、あっちのような危険な生活とは無縁だからね。」

休憩として、遊園地併設のレストランに入った私達。広めの個室が空いていたので助かった。

「オフェリア、ほら、和食があるぞ。」

父さんがメニューをオフェリアに手渡すと、打って変わってキラキラと目を輝かせ、食い入るように見始めた。

すでに最初から家族のように過ごせているオフェリアを横目に、私は窓から遊園地内を見回す。

ここにもあの"線"がある、神代町だけでなく、隣町にもある。遊園地に来るまでにも何ヵ所か見つけていた。こうもたくさん見ていると気になって仕方がない。

「アカネ!決まったか?」

「あ、ああ。私はいつも決まってるから。」

この遊園地にきたらと、毎回頼むメニューを注文すると、賑やかな話が始まった。昼食も和やかに進み、休憩が終わる。

「次はお化け屋敷でもいくか。」

とカズトが提案して、お化け屋敷の前でまず父さんがミズハを抱っこしたまま、

「まだミズハには無理だな、じじいと待とうか。」

と抜け出し、次に母さんがアズサに気を使い、いかないと言い出したので、残るはダイキと私、カズトとオフェリアになった。

「なら、こっちは兄妹で仲良くいくから、そっち頑張って。」

カズトとオフェリアに言うと、二人とも笑顔で中に入っていった。私はダイキと久々のペアで、続けて入る。

「昔はこういうの、入らなかっただろ?」

泣き虫だった小さな私を思い出したか、ダイキがそう言うと、私はまぁ、と頬を掻いた。

「何だろう、そのうち、こんなん目じゃないような怖いのに会いそうだから、予行練習的な?」

「そう、だったな。お前は魔導師だもんな。」

ダイキは私を見て呟いた。私はまぁね、と上着の短杖に意識を向ける。

「日本じゃ考えられない位、危険なこともあるよな。」

「うん。でもジェルドは、今住んでる所は平和だよ。マナリス全体を見ても国同士は良好だし、今は日本との交流で争ってるどころじゃないならね。」

通路のあちらこちらに恐怖演出が盛りだくさんなのだが、不思議と怖さを感じなかった。なんか、作り物だって分かってしまってるせいか、それとも森の一件で本当の恐怖はこんなもんじゃない、と思い始めたか。

元々、お化けや絶叫マシーンに慣れっこの兄は、演出に驚かない私に不思議そうな顔つきだった。

「あーあ、アカネも大人になっちまったな。」

と寂しげに呟いたダイキ。と思ったら、横から飛び出してきたお化け役の女性に、ラッキーといわんばかりに抱きしめようとしたので、腕を引っ張ってから頭をはたく。お化け役の女性はビックリして引っ込んだが、一応そこに向かって謝罪しておいた。

「兄さん、いい加減にしないと、アズサに嫌われるよ。」

「はは、たまにはいいだろ?」

「よくな------」

私は突っ込みを入れようとしたその時、前方から強烈な気配が生まれた。咄嗟に兄を左腕で庇い、右手で上着から短杖を掴む。

「アカネ?」

ダイキの言葉に短杖を構え、前を見つめる。その行動にダイキも警戒してくれている。相変わらず、前方から強烈な気配は消えない。

「何?この気配。」

「気配?俺は何にも感じないぞ。」

私は前方に集中すると、次第にカズトとオフェリアの気配を感じたが、それとはまた別に強烈な気配が、カズト達に敵意を向けているのが分かる。

「カズト達が、戦ってる?」

「おい、ここでか!?」

兄さんが慌ててスマホを取り出したが、操作が効かないのか、すぐポケットにしまった。

「大丈夫。オフェリアもカズトも私よりも強いから。」

「そりゃ、アカネよりはな。」

「私だってある程度は出来ますー。」

そう不満を述べると、強烈な気配が動き出したので、再び前方に意識を向けた。こちらに向かって来ている。

「兄さん、下がって。私の後ろから離れないで。」

杖を構え、魔力を杖についた魔石に込め始める。強烈な気配が迫ってくるせいか、冷気が頬を撫でた。

「この気配、幽霊かな?」

「マジかよっ!お化け屋敷で本物の幽霊とか、笑えないぞ!」

私の後ろから兄さんが話しかけた。その声に恐怖もあるが、何やら楽しげだったが、私は前方に集中する。

「【死霊探知(ガジリア)】。」

聖光魔法を唱えて確認すると、ばっちり死霊の気配を捉えた。続けざまに、私は聖光魔法を唱え続ける。

「【死霊祓清(ガイア)】、【死霊祓清(ガイア)】、【死霊祓清(ガイア)】。」

死霊系を安らかに天へ還ってもらうように、かなり強めに聖光魔法を短杖に込め続ける。

やがて、死霊がものすごい勢いで迫ってくるのを目視できた。黒い髪を振り乱し、悲鳴をあげながら、こちらに向かってきていた。

「うわわわわわっ!」

ダイキがパニックになりかけているが、それよりも目の前に迫る死霊に向かって、短杖に込めた聖光魔法を放つ。

「【天還(ガイア)】!」

短杖から放たれた聖光魔法は、向かってくる死霊に鋭い光となって突き刺さり、そこから産み出された光の渦の中でまるで溶かされるように光と共に消えていった。

「ふぅ。」

気配がなくなったのを確認してから、短杖を下ろして一息をついた。チラッと後ろを振り向くと、見ないように頭を抱えたダイキの姿があった。

「あー、兄さん?」

「はっ!あ、アカネ、終わったか?」

気まずそうにダイキがこちらを見上げ、慌てて立ち上がった。私はまぁね、と呟いた。

「アカネー、大丈夫かー?」

ついさっきの戦闘が嘘のような声が聞こえ、カズトとオフェリアが進行方向から戻ってきた。

「ああ、無事だよ。」

「すまん、仕留め損ねた。」

オフェリアがブレスレットを握りながり、私達には謝ってきた。

「気にしないで、むしろ死霊相手がよくできたね。」

「一応、対策はしていたんだ。すまない、ダイキ。巻き込んでしまったな。」

苦笑いしながら、オフェリアはダイキにも謝罪した。ダイキはいやぁ、と言いながら曖昧な返事を返した。

「でもなんで死霊なんかが、こんなところに?」

「わからん。」

カズトがバッサリと言い捨てると、私もデスヨネー、と返すしかなかった。

「もう、平気か?」

どうしていいかを悩んだダイキの言葉に、私達は頷いて大丈夫と伝えた。そうすると、ふぅとため息をこぼした。

「魔導師なんだな、二人とも。」

「ん?ああ、そりゃね。魔導師になる為に移住したし。」

と話していると、従業員らしき人達の声が聞こえて、私達はそれ以上の話をやめた。




結局、何が起きたか解らない従業員は、とりあえず謝罪しながら、遊園地のマスコットのぬいぐるみをお詫びとして渡してきた。

このぬいぐるみにオフェリアが喜んだので、私達も特に何も言わずに受け取って、お化け屋敷から出てきた。

近くの喫茶店で待っていた父さん達が心配していたので、軽く説明をしておいた。

「そう、きっとオフェリアが気になっちゃったのね。」

母さんが冗談を口にしたが、あながち当たってそうでオフェリアが苦笑いをしていた。

「さて、そろそろ帰って、夕飯の準備しなきゃね。」

母さんの音頭で私達は遊園地から出る。ぬいぐるみが可愛かったのか、ひたすら抱っこしたまま頬擦りを続けるオフェリア。

「じゃ、俺達はここで。」

ダイキとアズサが遊園地の駐車場で別れることになった。オフェリアとアズサが抱き合って、再会の約束をする中で、

「アカネ。」

いつもよりも優しい声音で、ダイキが声をかける。

「無理するなよ?」

「当然。兄さんも、アズサと仲良くね。」

笑顔でそう返した後に、意地悪そうに笑みを切り替える。

「兄さんが他の人に目が向かないように、呪っとく?」

「勘弁してぇ!」

頭を抱えて悲鳴をあげるダイキに、私はお腹を抱えて大笑いして返す。久々に兄妹としての戯れが嬉しかった。

「冗談だよ、呪い関連はまだ習ってないし、使う気もないよ。」

「頼むぞ、アズサにも教えるなよ。」

「頼まれたら無理かなぁ。」

再び悲鳴をあげるダイキに、意地悪そうに笑って見せる。

「だから、仲良くね。」

「分かってるよ。」

アズサの肩を抱き寄せ、仲睦まじく去っていくダイキの後ろ姿に私は少しホッとしたのか、ふぅとため息をこぼした。

今回、ダイキを巻き込んでしまったので心配したが、大丈夫だ。

今回の章、次がラストです。長くなったねぇー↑

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