第六章 日本へ里帰り 2話
翌日、両親に日程や同行する人数、等の詳細を書いた手紙を出した。
そして、その足でオフェリアの屋敷を訪ねる。今日は私とミズハの二人だ。
服装はシックな失礼のないスーツスタイルで、ミズハはフリフリのワンピースだ。
「今日は娘がいますが、失礼のないようにしますので。」
執事とライガに挨拶をして、オフェリアが待つ客間へ向かう。扉を開けると待ちわびたかのようにオフェリアが席から立ち上がったところだ。
「アカネ!待ってたぞ!」
嬉しそうにかけより、私に握手をした後、オフェリアはミズハを見る。ミズハは可愛らしい人形のようなオフェリアに笑顔を咲かせていた。
「はじめまして!ミズハです!」
「おお!ミズハ、待ってたぞ!今日は一杯話そうな?」
始終にこやかなお茶会になるだろうと、私は笑みが止まらなかった。
話は日本へ里帰り、オフェリアにとっては異世界旅行の内容だった。
「オフェリア、日本で何したい?」
私の実家がある神代町は、市街地はビルもたつ賑わいがあるが、古い歴史のある寺や神社、パワースポットの霊山もあるので、観光地として人気なのだ。また少し山に入れば、温泉もあるというハイブリッドな街なのだ。
オフェリアはんーっと悩みつつ、紅茶をすする。
「咄嗟には浮かばないな、なんでもいいぞ!」
「じゃ、こっちで定番スポットを回るからね。」
楽しみでしかたがないらしいオフェリアに、私は持ってきた紙袋から服を取り出す。
「服装なんだけど、こっちの服装だと目立っちゃうから、私が適当に見繕ったから、これを着てね。」
ガサガサと袋を開けて、服のサイズを確認するためにオフェリアを立たせて服を押し当てる。
「動きやすいシンプルな服にしたけど、嫌だった?」
日本も今は秋頃のため、長袖ジーンズ、薄手のカーディガン、帽子と用意した。色合いは暖色系にして、帽子はキャップ、合わせてみたらばっちりだった。
驚いたのが、オフェリアが大人のSサイズを着れることで、私の着てない新品の服で間に合ったのだ。最悪はお取り寄せになって、帰省が延びる可能性があったが、執事から送られてきたサイズを記した手紙で助かった。
「この服は、日本では普通なのか?」
「私が普段着ているような服だから、普通かな。」
オフェリアは興味津々だったが、すぐ服をたたんで仕舞うと、
「着るときのお楽しみね、はい。」
紙袋に仕舞って渡すと、オフェリアはワクワクした顔で受け取っていた。私は席に戻って、ミズハのジュースを継ぎ足す。
「お姉ちゃんもいくんだね。」
「そうよ。一緒に泊まるよ。」
ミズハの嬉しそうな顔にオフェリアも楽しみで仕方がない様子だった。
「あと、日本では異世界人とは言わないことね。私の両親は知ってるけど、他の人は知らないから、注意してね。」
「ああ、わかってる。」
今回はお忍び的なニュアンスがある旅行の為、オフェリアには私の知人の外国人という形で行くことに。
「言葉は通じるから、なんとかなるけど、間違ってもマナリスなら、とかエレナスなら、って言っちゃダメだからね?」
「わかってる。なんだ、アカネ。君まで私を子供扱いか?」
もう成人だぞ!と怒るオフェリア。私の感覚ではその年齢はまだ子供のイメージの為、なんとなくそう扱ってしまう。
「ごめん、ごめん。じゃ、これから実家の土産探しするから、そろそろ行くね。また来るね。」
「バイバイ!オヘリアちゃん!」
ミズハの舌ったらずに可愛かったのか、オフェリアはクスッと笑っていた。
家に帰ると、ザイアスとカズトの土産バトルが佳境に入っていた。帰り道に買ったフルーツを食べ終わり、ミューラから受け取ったタオルで手を拭くと、進捗を聞いた。
「結局、食べ物の一部はオッケーになったんだね。」
「まさか、技巧魔法でマナリスしかいない菌を滅菌するという手を打たれるとは思いました。」
ザイアスが頭を抱えていたが、カズトがそこまでこだわるには多分理由があるのだろう。私は苦笑にとどめた。
「お酒もある。こっちは大丈夫なんだね。」
「こちらは、今後売買が確立するものですから。問題はないですよ。」
テーブルに並ぶのは食材からお酒、マナリスの技術で作られた美術品がある。魔力で動く美術品もあるが、幸いなことに私の両親は魔導師の素質があるので、使い方を教えれば問題ないだろう。
「まぁ、このくらいなら良いでしょう。内緒で増やさないでくださいね。」
「アイテム収納するスーツケースの限界だから、これ以上は増えない。」
「カズトさん、ケース自体が禁止したマジックアイテムなんですが。」
オーコレハキヅカナカッター、と棒読みしたカズトを見て、ザイアスが天を仰いだ。私とミズハはお腹を抱えて笑いだした。
「ザイアス、これは私達の持ち運び用のだから、勘弁してもらえる?」
「はぁ、検閲、大丈夫だといいですが。」
「厳しいの?」
テーブルの上に並べた土産をスーツケースにしまいながら、私がザイアスに聞くと、まぁと呟いた。
「安易に日本にマジックアイテムが流通すれば、日本企業は大ダメージですからね。」
「ああ、そりゃそうだよね。」
再度、持ち込み禁止リストを見るが、持ち込み用のバッグは問題なさそうだが、それを売買したら犯罪になる、とかかれている。
「カズトがあのバッグを売らなきゃ、大丈夫よね?」
「貴方のご両親が他人に美術品を譲渡してもダメなので、注意してくださいね。」
あっさりと帰れないのは解っていた。こう色々あると大変だが、楽しみも増えるわけだし、気楽にいくとしよう。
チロチロとアメリが舌で私の頬をなめると、私はその背を撫でながら、懐かしの日本に思いを馳せる。
「何事もなく済めばいいな。」
それも叶わない程の大騒動が待ち受けていてそうで、私は不安な気持ちを無理やり押し込めた。




