第四章 魔導師のお仕事 4話
アリスと和気あいあいと作業をしていたら、あっという間に終わっていた。
「(いいんじゃない?)」
「はぁ、終わった!」
私はぺたんと地べたに座った。無駄な作業をしたり、制御に慣れてなかったり、でかなりの魔力を消耗した為だ。
「お疲れ様、お二人とも。」
奥さんが近づいてきた。私は慌てて立ち上がって笑顔を向ける。
「ホントに早く終わってしまったわね。」
夕飯の準備があるので、早く終わらせたいと話していたので奥さんが心配していた。
「はい、すみません。きちんとおこないましたので確認ください。」
「ええ、見てましたから大丈夫ですよ、ありがとうございました。」
丁寧にお辞儀され、私も恐縮した。
「依頼完了のサインをもらいたいのですが。」
依頼書の最後の方にある、完了サインの欄に持ってきた小さな羽ペンを渡し、奥さんに促す。笑顔でサインをしてくれ、依頼は完了となった。
「お疲れ様、また何かあったらよろしくお願いしますね。」
「ザイアス殿によろしく言ってくれ。」
老夫婦の見送りを受けて、私は大きく手を振って挨拶して、協会へ足を向けた。
協会本部に帰ると、シェナが居たので依頼書とコインを渡すと、処理してくれた。報酬の銀貨2枚をもらった。ちなみに1日銀貨1枚でちょっと贅沢な方らしい。
日本から持ってきたチェーン付の財布に銀貨をしまうと、ザイアスの姿が見えない。シェナにきいてみると、
「あー、アカネさんの旦那さんが来られて、今、一緒に依頼を中でこなしてますよ。」
指差された場所は、魔導師協会内にある研究室の方だった。おそらくカズトが得意な技巧魔法系の依頼だろう。
「じゃ、私は終わる頃にまた来ますよ。いつぐらいかな?」
「どうでしょう?一応、さっき来たばかりだから、数時間位ですかね?」
シェナと私が見上げた魔導時計は、今、夕方3時を差していた。
「ちょっとブラついて、5時位に来ますね。一人で出歩いてみたいので。」
「はーい、気をつけて。」
私はそういえばこのジェルドで一人で出歩くのが初めてだったことに気づいて、せっかくだからブラついてみようと思い立ち、シェナと別れて協会本部を後にした。
ジェルドの商店街を一人で出歩く。
日本の風景とはまた違う趣だが、活気は似たり寄ったり。でも、私が異世界人であるせいか、売り込みが近づきやすいのだ。
「異世界人の奥さんじゃない?フルーツ、安くするわよ!」
青果店の女将さんは顔見知りなので、気軽に声をかけてくる。私は一応金貨1枚と、銀貨2枚しかないので一旦断ることにした。
「どうも、今日はミューラが一緒じゃないので、勝手に買うわけには。」
「あら?今日は一人?」
頷いた後に、ようやく仕事を始めたんです、と杖を見せる。すると女将さんが良かったわね!と他人なのに、娘のように誉めてくれた。
「またいつでも来てね!」
別の客が来たのでそちらの対応の為に、女将さんは離れていった。他にも色々と声をかけられ、謝りながらブラつく。
「あっ。」
目に入ったのは、年の差夫婦のあの雑貨屋さんだった。そういや、フェアリーの一件の後、行ってないなと思い立ち、足を向ける。
雑貨屋に近づくと、店の前で座るあの店主が居た。
「どうも、お久しぶりです。」
声をかけるとすぐ私だと分かったか、店主は笑みを浮かべた。
「おー、あの時の!」
「あれから大丈夫でした?」
森の民である妖精族はたまに仕返ししたりすると聞いていたので、一応聞いてみたが、大丈夫だったようだ。
「むしろ、薬草のいい繁殖地を教えてもらったよ。」
どうやら仲良くできたようだった。しかし、雑貨屋で薬草なんか扱うのか、と思っていたら、奥から店主の若妻ナリアさんが顔を出した。
話し声が聞こえていたらしく、お茶を持ってきてくれたのだ。
「ナリアさんもお久しぶりです。」
他愛もない挨拶から、ナリアさんが混ざり、店主は先程の話の続きをする。
「そうだ、異世界人のお嬢さん、頼みがあるんだが。」
「はい、何ですか?」
店主がナリアさんに耳打ちをし始め、ナリアさんもぱぁっと明るい笑顔になる。
「私からのお願いなんですが。」
ナリアさんが話した内容だが、要は薬草採取の依頼だった。
なんと、ナリアさんは薬師でもあり、よく見れば雑貨屋なのに薬瓶の並ぶ棚があり、種類豊富のようだった。
「ちょうど明日、魔導師協会に行って、お願いする予定だったので。」
顔見知りであり、フェアリーとの面識がある私なら、問題なく出来るということだった。
「いいですよ。」
「なら明日、朝から魔導師協会で待ち合わせしましょう。」
「ミズハを送った後すぐ向かいますので。」
こうして、私はまた新たな仕事を受けることになった。
再び魔導師協会へ戻ると、かなりの騒ぎになっていた。ひっきりなしに人が出入りし、ある人はうなだれ、ある人は歓喜の声をあげていた。
呆気にとられながら、空いてたカウンターにいき、シェナに話しかける。
「あー、薄々気づいてるけど、まさかこれ。」
「はい、貴方の旦那さんが原因です。」
「デスヨネー。」
頭を抱えていたら、当事者が研究室から出てきた。出てくるなり私を見つけるとちょいちょいと手招く。
私はカズトに近づくと、そのまま肩をガッと掴んで連行した。容赦ない行動に、頭にはてなマーク浮かべながら、第四研究室とかかれた部屋に入った。そして、案の定、真っ白になったザイアスとリゼルの姿があった。
「で、何をしたの?」
「杖が出来たから、オルゴールの手直し依頼を受けた。」
カズトは言うには、私同様に簡単な技巧魔法の依頼を受けたらしい。完璧に修復し、かつ亡き父の思い出が甦るようにと、死霊魔法を重ねた結果。
「オルゴールが流れる度に、死者の魂と交信できるマジックアイテム、もといアーティファクトになった、と。」
私は流石カズト、と言いながら、出来上がったオルゴールをみる。見た目は鮮やかな細工が施されたオルゴールだった。
マジックアイテムはある一定の効力や効果次第で、アーティファクトと呼ばれる部類になるそうだ。
その為、一度鳴らせば大変なことになりそうなので開けずにいる。
「何故そこで死霊魔法重ねた?」
「・・・・思いやり?」
「そこは求めてないだろ!書いてなかったぞ!」
リゼルが依頼書を机に叩きつけるながら叫ぶ。あれが魂の突っ込みだな、気持ちはわかるよ。
ちらっと依頼書を見たら、銀貨1枚も払うのがやっとで、という文章があり、ますます申し訳ない、と思う。
「こんな完成度の高いオルゴールなんて、どうやって説明すれば・・・。」
ザイアスはガタガタ震えながら、オルゴールを見つめる。しかし、壊すわけにもいかず、悩んでるようだった。




