序章 今に至るまでの物語 3話
私達が、結婚する直前の9年前。
日本では、ある出来事が起きていた。
とある山の中腹に、異世界に通じる扉が開いた。
これは世界情勢をひっくり返すには充分だった。
調査等が行われ、世界が大パニックになった。
さらに、扉から異世界人が使者として現れ、日本政府との間に国交を開いた。
これにより、日本は唯一、異世界との国交が行える国として、世界の立ち位置が変わった。
異世界から物流だけでなく、旅行もできるようになった。
ただ、やはり日本のみでしか行われない為に、異世界産の物や、旅行次第がかなり高額であり、法的な手続きに時間がかかってしまう状態らしい。
日本政府は、今でも異世界の対策に追われ、世界中からの対応に追われ、国内の反応に四苦八苦している。
そして、私達がザイアスに会ったあの日に戻る。
ザイアスは、ゆっくり腰を据えて話したい、と誘われてホテルの一室に招かれた。
ホテルの一番広い部屋を取ったザイアスに私達はとても焦ったが、
「こちらの支払いは私がすべて持ちます。ご遠慮なさらず。」
ということだったので、受け入れた形になった。
何より、ミズハが初めてのスイートルームだった為にはしゃぎ出したので、断りきれなくなったのが本心だった。
夕食もご馳走になり、全員がようやく落ち着いた辺りでザイアスは口を開いた。
「先程の話の続きをしてよろしいですか?」
私とカズトは、ミズハが大型テレビで好きなアニメを見始めたのを確認したのち、頷いた。
「では、お話を続けます。」
ザイアスが語りだした内容は、あまりにも現実離れしていた。
「借金を肩代わりするので、私達の世界に来ませんか?」
という内容だったせいだ。
詳しく聞くためにも、このホテルに来たと言っても過言ではなかった。
何より、私達には借金の肩代わりが本当なのか、知りたかった。
「私は異世界人、貴方達日本人にとある可能性を見つけております。」
ザイアスは食器が片付けられた机に、書類を並べ始めた。
書類に目を通すと、その内容に驚いた。
「日本人には、私達の世界でいう所の、魔導師の素質が濃く見受けられます。」
魔導師---その言葉に私は心臓が跳ねた。
ファンタジー小説の好きな私には、たまらないフレーズであり、顔が緩みかけたが、なんとか押さえる。
カズトの方を見るが、表情が変わらないが、夫婦としての付き合いで分かる程度に興奮しているのがわかる。
そんな私達に構わず、ザイアスは続ける。
「ここからは、私が謝罪しなければならないことがあります。」
「謝罪?」
「はい、奥様に、アカネ様にですが。」
名前を呼ばれてきょとんとした私に、ザイアスは頭を下げながら話す。
「実はこの話は、アカネ様のご両親にする予定のお話でした。」
「え?」
両親、その言葉に私は戸惑った。カズトは話の先を促すように黙っている。
「この話は、実は老後の移住プランとして、日本人の皆様にご紹介していました。かなりの応募者があり、選考するも中々、素質がある方には会えませんでした。」
「え?だって、日本人なら素質があるんじゃ?」
先程の話と矛盾してないか、と不安になり、話の途中で質問する。
「はい、濃く見受けられる、と申しましたが、あくまで私達の基準よりは、です。」
ザイアスは時折笑みを浮かべて、疑問に答えた。
「話を戻しますね。そんな中、アカネ様のご両親の応募があり、選考した結果、素質がありました。」
苦労した末に見つけたのだろう、少し遠い目をしたザイアス。
「早速、お話を進めようとお伺いした際、ご両親からこうご提案されたのです。
-----自分たちの代わりに、娘夫婦ではダメか?と。」
「!!」
息を呑んで、口に手を当てた。カズトも驚愕の表情をしているのを見て、ザイアスは努めて笑顔を崩さない。
「ご両親のお話を伺い、事情を知っております。それでご両親のご協力を得て、アカネ様の髪の毛を採取させていただきました。」
「え!?い、いつの間に。」
「直近で実家に帰省なされた日に。」
実際に思い当たり、私はうわぁっと声に出していたのを見て、ザイアスは頭を下げた。
「申し訳ありません。不愉快な思いかとおもいます。」
「あ、いや、嫌だったわけじゃなくて、驚いたというか。」
「ちなみに、カズト様、ミズハ様も採取しましたので、合わせて謝罪します。」
「俺もか。」
今まで黙ってたカズトが思わず呟いていた。
「こちらで検査、選考した結果が、」
ザイアスは三枚の書類を並べ、私達の前に差し出した。
「3人とも、かなり高い素質が判明しました。」




