第四章 魔導師のお仕事 1話
※爬虫類注意。
読み返したら、ミズハの友達と使い魔の名前が一緒だったので、変更しました。
最初の冒険から2週間後。
カズトは自身の杖を、私は鉱石トカゲの孵化で食事と睡眠以外は会わない日々を過ごしていた。
何やら集中することや材料を取りにザイアスと出掛けたりで、カズトは忙しそうだった。
ただ、普段は無表情なカズトがとても楽しげに笑う姿をミューラ達やザイアスが見れているので、かなり満喫していたようだ。
その代わりに私はかなり地味な作業が続く。
育児中に使っていた抱っこひもを下げ、私が魔力を使って縫いあげた保温性のある布に包まれた鉱石トカゲの卵と過ごす作業だ。
ザイアスが言うには、本来はあの場所で周囲に出来た魔石から魔力を貰って孵化するらしい。
それを私が肌身離さず、同じ状況を作れば、魔力を通して、私を親と認識するらしい。
後は産まれてから儀式等を経れば、晴れて使い魔になるそうだ。
「早くて2週間でしょうか。その後すぐに儀式に取りかかれば、その日の内に使い魔になるでしょう。」
ザイアスのこの言葉を信じて、ミズハと仲良く遊びながら温めてきた。
「かえったらなまえなんてつけるの?」
「何にしようかなぁ。」
そんなことを話していると、ミューラが部屋に入ってきた。
「ミズハちゃん、お友達が来たわよ。」
「アイリスちゃんたちだ!」
嬉しそうにミズハは笑うと、私なんかそっちのけで部屋から出ていった。ミューラがニヤニヤしているのを見て、私は娘のお客様に挨拶しようと立ち上がろうとした。
「ああ、私がやるから休んでなさい。卵持ったまま会う気なの?」
ミューラに突っ込まれ、あっと私はおとなしく座り直した。
「ごめんなさい、お任せします。」
「ミズハちゃんの友達が来ると思って、マフィン作ってたのよ。後でアカネにも届けるわね。」
マフィンと言う言葉に私の目が輝いたのがバレたか、ミューラは笑いながら部屋から出ていった。
「マフィンが来るなら、こないだ貰ったハーブティーでも淹れるかなぁ。」
立ち上がり、茶葉や茶器を置いてある棚へ移動する。フェアリーから貰った小瓶を出して、茶器を出している時だった。
「(---------)」
私の耳に何かを呼ぶ声がして、ハッとする。すぐに卵だと分かって慌てて机に移動する。抱っこひもを肩から外し、布に包まれた鉱石トカゲの卵を取りだし、布を慎重に外していく。
パリッと音がして、ステンドグラスのような卵の殻にヒビが入る。
「来た!」
私は殻を破って出てくる鉱石トカゲの赤ちゃん用に、小石サイズに砕けた魔石を茶器の棚から出した皿にうつす。
その他にも、茶器用に用意してた白湯をポットに淹れて持ってきて、白磁の洗面器サイズの器にうつす。
バリバリと割りながら、トカゲの手が先に姿を見せた。
「産まれておいで。」
優しく声をかける。ミズハを生んだ時にも言った命を歓迎する言葉に、トカゲは今度はしっかりとした言葉を紡ぐ。
「(-------マ、マ。)」
卵の殻からおずおずと顔を出したトカゲは、目がクリクリの琥珀色で、全身はアメジストを思わせるような光沢のある紫色だった。
すぐに視線が私と合うと殻から這い出て、私に小さな舌を見せる。
「(ママ。)」
手のひらサイズとは言え、普通のトカゲよりは大きかった。しかし、この体躯に似合わず愛らしき声で鳴いた。
「はああ、よしよし、おいでおいで。」
白湯に浸けたタオルで体を吹いて、キレイにする。嫌がらず嬉しそうにしているのが分かる。
爬虫類の肌というよりは、金属を撫でる感触だが柔らかく温かい。
「産まれてきてくれてありがとう、初めまして。」
「(ずっと、感じてた。)」
トカゲはタオルの中で私に話しかける。会話がちゃんと出来てるようだった。
私の声に驚いた皆が部屋に顔をだし、産まれた命に歓喜した。
ミズハはアイリスという友達を連れてきたが、初めてみる鉱石トカゲに少し驚きながらも、興味深々だった。
「いやぁ、これなら使い魔の儀式も簡単なもので済みそうですね。」
リゼルから報告を受け、協会本部にいたザイアスが来てくれた。私の書いた貴重な鉱石トカゲの孵化作業の報告書と、卵の殻等は資料として渡すことになった。
「ちなみに報酬出ますからね、かなり貴重な実験となりますから、金額は多いと思いますよ。」
「これから成育記録もつけていけば、なお金額は増えるだろうな。」
ザイアスとリゼルは貴重な体験として、鉱石トカゲを撫でたりしている。トカゲはよしよしされて嬉しそうに舌を出していた。
「名前は決まったんですか?」
私が散らばった殻を集めている最中に、リゼルが聞いてくる。
「あー、まだ悩んでるんだ。」
「使い魔契約には名前が必須ですよ。」
ザイアスが儀式に必要な道具が入ったスーツケースみたいなバッグをちらつかせている。
「うわ、今決めろとおっしゃいますか?」
「じゃないと始められませんよ。」
私は再び悩み出すと、近くでトカゲと戯れていたミズハが、
「アメリ!」
とすでに呼んでいたことに気づく。
「ミズハ。」
「あ、ごめんなさい。」
勝手に名前をつけて呼んでたことを怒られると思ったのだろう、ミズハは目に見えて落ち込んだ。
「ありがとう、その名前にするわ。」
ミズハの頭を撫でながら、アメリと名付けたことを感謝した。
「いいの?」
「似た名前は思い付いたんだけど、しっくりこなかったけど、ミズハの一言でぴったり決まったわ。」
改めて頭を撫でながらお礼をいうと、ミズハはぱあっと明るくなり、再びアメリと遊び始めた。
「(ミズハ、ありがと。)」
アメリがちろっと舌を出して、ミズハを見上げている。ミズハはよしよしと撫でていた。
「もう言葉を話し出すとは。」
ザイアスは儀式の準備しながら、アメリの知力を感心していた。
「では、始めましょうか。」




