ページの外側
教室の中は、異世界人の転校生のことで大騒ぎだった。
大体の生徒は、町の速報に貼られた写真の隅にいた少女だと解っている。
「はーい、みなさん、席に座ってー。」
アウラがミズハを連れて教室に入りながら、生徒達に声をかけている。
席に座るも、異世界人への期待に声は抑えきれない。
アウラは小さくため息をつきながら、先に進めた。
「今日からみなさんと一緒に勉強する転校生を紹介します。」
ミズハはびくっとしながら、背筋を伸ばした。アウラは笑顔を向けて、挨拶を促す。
「あ、あの、」
ミズハはぎゅっとペンダントを握って声をだす。
「知ってるよ!ミズハちゃんだろ!」
そう声を上げたのは、クラスの中でも一目置かれたクラス長の少年だった。
アウラはあ、と呟いたのをミズハは聞き逃さなかった。
少年は椅子から立ち上がって、ミズハの前に来た。
びくっと体を震わせたミズハに、少年は手を差し出す。
「オレ、クロト!クラスちょうだ!」
クロト、と名乗った少年に、ミズハはどうしていいか解らず、顔を見るだけだった。
「オレのオヤジ、ちょうちょうなんだ!あったろ?」
それを言われてミズハは、両親と共に会いに行ったことを思い出した。
「あのおヒゲのおじさん?」
「そうそう!えらそうにみえただろ!オヤジがじまんしてたぜ!」
クロトがにかっと笑うと、ミズハは釣られて笑った。
「クロト、ずるいぞー!」
「あ、わらった!」
クラスメイトの子供達はわらわらとミズハの前に近づき、口々に喋りだした。
「こーら!ミズハちゃんがこまってるでしょ!」
収集がつかないほど質問責めに、ミズハはふいに笑った。
緊張していたのがほぐれたのだろう、ミズハは席に戻ったクラスメイト達に頭を下げた。
「なかよくしてくださいっ!」
それは心からの願いだった、苦痛と悲哀の時間は過ごしたくなかった。だからこそ、元気よくクラスメイト達に伝えた。
クラスメイト達は、それに笑顔で答えた。
授業以外の時間はモテモテ状態になるミズハ。
友好的な異世界人に興味がない訳がない、クラスメイトだけでなく、他の学年からも様子を見に来るのだが。
「いっきにはなすなよ!」
「いっこずついえよ!」
「かってにさわるなよ!」
クラス長のクロトが完全に仕切って、ミズハはとても安心していた。
頼もしいクロトに、ミズハは自身の父親を思い出す。同じ、トで終わる名前だから、余計に。
「ありがとう、クロトくん。」
人の波が去った後、ミズハは改めてクロトに礼を言った。
「オヤジがいってたんだよ。」
照れくさそうにクロトは顔をかいた。
「なかよくしてやれ、って。おんなのこをまもるのは、おとこのやくめだ!って。」
父親の教育はいい方向に働いたようで、クロトはミズハを助けている。
「でも、なにかいいことしてもらったら、ありがとう、ってママがいってたの。」
ミズハはちょっと照れくさそうに言うと、クロトは当然だろ、とドヤ顔だ。
「わたし、がんばれる。」
ミズハがペンダントを握ってそう呟いたのを、窓の外で見守っていたフェアリーは笑顔で聞いていた。




