第三章 魔導具製作 7話
発見した道は確かに地図の記載はなかった。
私達が後について入ると、入り口すぐ近くでカズトは壁に手をつけたまま止まってた。
通路は先が続いてるが、私達を待ってたのだろう。
しかし、私はカズトが待ってた意味を理解した。
「ん?」
通路の先に、何かを感じた。
「何か、いますね。」
「敵意はないな。」
ザイアスもオフェリアも気づいたらしく、感じるものを確かめるように話し合う。
ゆっくりとしたペースで近づいていくと、行き止まりになった。
そこには、壁一面様々な色の鉱石がびっしり詰まった行き止まりに、
「卵?」
私がそっと近づき、触ったもの。それはダチョウの卵くらいの大きさの、ステンドグラスのように煌めく卵だった。
その見た目はイースターエッグのようだが、芸術の域に入ってるのが、素人の私でも解る。
「これはもしかしたら。」
ザイアスが腕輪のついた手をかざし、鑑定魔法を詠唱しはじめる。
私はそんな中、卵の中で何かが動いているのに気づき、声を上げた。
「判明しました。鉱石トカゲですね。」
ザイアスの言葉に、私は動いた何かをよく見ると確かにトカゲのような、爬虫類の手足が見えた。
「ザイアス、こっちの壁は鑑定魔法使えるか?」
カズトに声をかけられたザイアスは、立ち上がりながら首を横に振った。
「鑑定しなくともわかりますよ。鉱石トカゲは卵を生む際に、体内に宿る魔力を大量に放出します。」
ザイアスの講義が始まる。本人も先程の鑑定魔法の内容を思い出しながら、メモを取り出した。
「その魔力を浴びると、岩石は全て魔力を帯びた魔石に、」
その言葉を紡いだ瞬間、ザイアスがあっと気づいた。
「これ、使えますね。」
あまりにも流れるようなコントに、私は思わずお笑い芸人のように肩をおとす。
「卵はまだ中で動いてるけど、孵化するのかな?」
「一定の魔力を与えてれば、そのうち孵化するらしいですね。」
私が話ながら持ち上げた卵を落とさないように抱えると、ザイアスがそう説明してくれた。
「せっかくだから、使い魔にしたらどうです?」
使い魔、と言う言葉におお、と唸った。
確かに魔法使いには使い魔いなきゃね!
「じゃあ、持ち帰るね。」
「こっちの手伝い頼むよー。」
カズトの声がかかり、私は一旦元の場所に卵を戻し、ザイアスと共に壁一面の魔石掘り出し作業に入った。
結果は魔石を大量に確保できた。
ジェルドになかった分も、これで補充できた。
「つか、魔導師協会本部に魔石がないってどうなのよ。」
ザイアスと数の確認をしていた際に、そういえばと突っ込んで聞いてみた。
「いやぁ、新しい魔導師が生まれなくなったから、魔石を補充したいという要望もなかったので。」
ちょうど良かったです、とホクホクした顔でザイアスは採掘した魔石をマジックバッグにしまう。
このマジックバッグは、要領が見た目よりもあり、かつ耐久耐水性に優れているらしい。
ちなみに、リゼルの作品だそうだ。
「ザイアス。これ、使っていいか?」
カズトが採掘した魔石の一つを手にして、ザイアスに許可を取りに来た。
一通りチェックした後、ザイアスはその魔石をカズトに渡した。
「いいですよ、杖に使うのですか?」
「ああ。」
魔石を見つめるカズトの目には、何か考えがあるようだった。
ザイアスが全て入れ終わったら、立ち上がってみんなに声をかける。
「目的は充分果たせましたし、戻りましょうか。」
私達は元来た道を引き返すことになった。
他の皆が武器をを持つ中で、私だけは杖を背中にしまい、両手で布に包まれた鉱石トカゲの卵を抱えている。
「つまらないなぁ、あっさり終わってしまったな。」
オフェリアはかなり不満げだったが、私は充分だった。
「怖い思いはもうこりごりなんだけど。」
「何を言ってる!私はカズトたちともう少し探検したい!」
その発言に全員がはいはい、と流すしかない。
「また何かあれば、一緒に行こう?だから今はね?」
ワガママを言う子供をあやすように、私がオフェリアに言うとぷくーっと頬を膨らませる。
「オフェリア様、アカネ殿はまた、と申してますし。」
「絶対だぞ!」
ライガのフォローもあり、オフェリアは引いてくれた。
ザイアスがげんなりした顔になっているが、とりあえず今は我慢してくれるとありがたい。
地図がほとんどいらない帰り道を進むと、やがて安全なエリアにたどり着く。
ここを出てから、そこまで経っていないせいか、すれ違う炭鉱夫たちは早いお帰りだな!と豪快に笑う。
成果がないとか異世界人は怖じ気づいたとか思ったのだろう。だが、私が抱えている何かを見て、目的は達したのだと悟ったようで誤魔化して去っていく。
ようやく冒険者ギルドにたどり着き、ザイアスが帰還の報告をしに行く。私達は、入る前に待機していた待合室で待つことにした。
待ってる間せっかくだから、と用意した昼食用のサンドイッチと私が作ったおにぎりを待合室のテーブルに広げていく。
「おおお!これがオニギリだな!」
オフェリアがキラキラと目を輝かせ、おにぎりを手に取った。
「あ、それはツナマヨか。えっと、魚を油で浸けたもので、マヨネーズって卵から作られた調味料を混ぜた具が入ってるよ。」
おにぎりを作りながら調べた知識を話すと、オフェリアは大きく口を開けて食べた。具を多目にしたので一口でたどり着けたようだ。
「んん!うまいっ!ライガ、これうまいぞ!」
そばにいたライガにもおにぎりを進めるオフェリア。
「アカネ殿。異世界の食文化に触れるのは初めてで、何から手をつけて良いのか。」
「ライガさんはこれかな。」
渡したオニギリは、甘辛く煮た馬牛のそぼろだ。それを説明しながら、どうぞと勧めると、ライガはオフェリア同様大きな口でかぶりついた。
「んん!確かに美味いな!」
「良かった、好きなだけどうぞー。」
私はお腹に卵を抱えたまま、梅の入ったおにぎりを食べる。
カズトも黙々と食べている中、私はカズトのコップに水筒からお茶をついでいく。
すぐにザイアスが帰ってきて、昼食に混ざる。ザイアスも私と一緒で梅おにぎりを手にして、慣れた手つきで食べている。
炭鉱探索はひとまず無事に帰還となった。
私の両手にいる鉱石トカゲの卵が、小刻みに震えていた。




