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第三章 魔導具製作 6話

ジェルドの町から一時間程離れた、マナリス大陸最大の山がある。

聖職者たちが神々に近い場所として、聖地指定されている。

この山の麓には鉱脈が豊富にあるそうで、鉱山が開拓されている。

魔導師協会の許可書を持ち、鉱山管理をしている冒険者ギルドへ向かう。

炭鉱夫たちが固まって生活するエリアの中に、冒険者ギルドがある。

私達は今、鉱山に入るための申請待ちである。

一番時間がかかる要因は、私のすぐ横にいる。

「やはり、事前に通知した割には時間かかるな。」

勇ましく鎧を着たオフェリアが、剣に片手でもて余すように触る。

「待つしかありませんよ。」

そのさらに隣に立つ男性は同じく鎧を着て、大剣を背負い、オフェリア様の横から離れず、語りかける。

彼はオフェリア専属の騎士、ライガ。

元々エレナス公国の騎士団長だったが、オフェリアが王位放棄した際に、団長を辞めて専属になったそうだ。

背中の大剣を見ればわかるが、かなりの腕をもつそうだ。

「凄いなー、剣使えるの。」

私がぼそっと呟くと、聞いていたのかライガが、

「私なら言わせて頂ければ、魔法を扱えるアカネ殿が羨ましいです。」

「あ、いや。ほら、私達もついこないだまで魔法なんて縁がなかったんだし。」

贅沢だよね、と苦笑いした私に、ライガににこやかに語る。

「剣にセンスが必要になるのは、剣聖と呼ばれるレベルですから。アカネ殿がよろしければ、多少の剣の扱いを伝授できますよ。」

「あー、なら私よりカズトを、」

「がんばっ☆」

カズトが表情動かさないまま、ガッツポーズをした為、オフェリアとライガが吹き出した。

ちなみに本人は満面の笑みのつもりだ。

「相変わらずカズトは面白いな!」

「聞いてましたが、実際に見るとなかなか。」

両名は笑いが抑えきれず腹を抱えている姿に、周りの冒険者は呆気にとられているようだ。

「これ、毎日だからね、私。」

「アカネは大変だな、ホントに。」

オフェリアはまだ抑えきれずに涙まで流しつつ、私の背中をトントン叩いたが痛い訳じゃないので、笑って流す。

ライガは一緒にやろうな、とカズトに話しかけているが、本人は満更でもないらしい。

「お待たせして申し訳ないです。」

そんなタイミングで、ザイアスが戻ってきた。和やかな雰囲気になっていることを気づいて安心したようだ。

「それでは参りましょうか。」




魔石が採掘できるエリアは、炭鉱内でもかなり奥の方だった。

手前のエリアは魔物が出ても対応できるように、冒険者たちも居るために安全だ。

炭鉱夫さんたちが、気をつけてな!と挨拶してくれるので手を降って返礼する。

「地図からすれば、今開拓されている採掘エリアのさらに奥の辺りと聞いてます。」

「そっか、ならちょっと時間かかるかな。」

ザイアスの持つ地図を皆で見ながら、私達は道を確認する。

「今のうちに準備をしようか。」

オフェリアの言葉に、それぞれの準備をはじめる。

私達は杖と腕輪の魔力充填を、ザイアスはレイピアと指輪の魔力充填を、オフェリアはブロードソードに魔力充填を、ライガは周囲の警戒をしながら、オフェリアから火の付与魔法を待つ。

準備が終わると、私達は静かに歩き出した。

足音や水の音、砂や小石を蹴る音が洞窟内に響いて、私の背筋をぞわぞわさせる。

閉鎖空間があまり好きではない私は、なかなか気持ちが落ち着かない。それを見ていたオフェリアが心配そうに声をかけられた。

「無理しなくていいぞ、アカネ。」

「いや、落ち着かないだけで、恐怖があるわけじゃないだ。」

なんというか、今はどちらかと言えば、

「わくわくの方がデカいから大丈夫。」

そっちの落ち着かないだから、と言うとオフェリアは破顔した。

「最初の冒険だからな、楽しみなのは分かるぞ。」

16も差があるオフェリアに言われ、私はあはは、と笑いを濁す。

「オフェリア様も落ち着かない様子でしたから。」

「こら、ライガ!」

ライガはがはは、と笑った。それを見て、少し落ち着きを取り戻す。

「まだこの辺は大丈夫ですが、気を抜かないように。」

まるで引率の先生のような発言をして、ザイアスはため息を漏らす。

「さて、アカネたちの初陣を支援するぞ、ライガ。」

「御意。」

気を引き締めたオフェリアとライガが剣を構える。

通路の奥から、ちらっと何かが見えた。私は大きく息を吸って、杖を構える。




現れたのはミズハ並に小さく、俗にいうゴブリンのように見えた。ただ、手に持っていた石をガジガジかじっていた。

そして、奥にはちらほら同じゴブリンが数匹見えた。

「炭鉱ゴブリンか、初心者にはピッタリだな。」

オフェリアが私の方を向いて、がんばっ☆と先程のカズトと同じポーズを見せる。その後、笑いをこらえるライガの背中が震えているのに気づく。

「が、頑張りまーす。」

私は何とか気を引き締めて杖を構えた。

「炭鉱ゴブリンの弱点はなんでしたか?」

ザイアスがにこやかに語る。

「火。」

カズトはそれだけ言うと、手をゴブリンの方へ向ける。

詠唱すらなく、手のひらの先に火の玉が生まれる。それはかなりの勢いで巨大化し、あっという間に射出された。

飛んで行った火球は、手前にいるゴブリンに着弾。汚いキィキィ声を上げ、逃げ惑う。

「ダ・サランダ・シュリー!」

私は杖をゴブリンに向け、炎の精霊の名を呼び、火の矢を数本放つ。火だるまになったゴブリンの横を通りすぎたおかげか、火の矢は勢いよく他のゴブリンに当たる。

火に巻かれたゴブリンは奥の通路へ逃げ込もうとしていたのを見て、私は杖をカンっと地面に打ち鳴らす。

「ス・ダラス・エンディア!」

今度は大地の精霊の名を呼び、ゴブリンの足元に石を浮き上がらせた。狙った通りの所に出た為に、数匹のゴブリンが転倒した。

それに反応して、カズトが片手を壁につける。

ゴブリンたちの頭上に岩がまるで氷柱のように生え、一人残らず突き刺さった。

ゴブリンたちの反応が止まった所で、私はカズトとハイタッチした。

「いやぁ、お見事。さすがご夫婦、息も合いますね。」

ザイアスが拍手してる間に、ライガがゴブリンの様子を見に行く。

一人、呆気にとられているのはオフェリアだ。

「あ、アカネ。」

「はい?」

剣を仕舞いながら、オフェリアが私に話しかける。

「カズトは詠唱してなかったよな?」

「ああ、そういやしなかったね。」

私がカズトを見ると、腕輪をした手をグーパーしていた。

「無詠唱、なのか?」

「まぁ、魔王だし。」

オフェリアが頭を抱えた理由は、精霊魔法にも関わらず無詠唱だったことだろう。

普通の精霊魔法を唱える際は精霊の名を呼び、かつ何をしたいかを精霊言語で伝えるのだ。しかし、カズトはそれをしてない。

「まさかと思うが、」

「カズトはもう精霊王とマブダチだから。」

私の言葉に、オフェリアは常識を崩されたかのようにうなだれた。

それは私が事実を知った際に、私も含むザイアス、リゼルが取った行動でもあった。

ある朝、やけに起きるのが遅いカズトを心配して寝室に向かったら、寝ているカズトの上に精霊言語が光で描かれ、静かにカズトの中に沈んだ。

その後すぐカズトは目覚め、開口一番にこう言った。

「俺、精霊王とマブダチになったかも。」と。

私は半分やりかねないな、とは感じたが、ザイアスの驚き方はかなりパニック状態だった。

今だかつてアリスのように仲良しにはなった例があるが、それはかなりの年月がかかったらしい。

が、カズトは移住してから一月弱で成し遂げたのだ。

「夢で会いに来て、話したら意外とフレンドリーだった。」

と語るカズトに、ザイアスはその日は1日放心状態だった。

その経緯を簡単に説明をするカズトに、オフェリアは大笑いした。

「いや、相変わらずカズトは規格外だな!」

「私はもう慣れたよ。」

そう呟く隣であはは、と乾いた笑いで立つザイアス。1日放心状態だったもんね。受け入れがたいだろうし。

ゴブリン達のドロップ品と、討伐証拠部位は回収してきたライガが、笑っているオフェリアを見て、少し驚いた。

「アカネ殿たちは、オフェリア様を笑わせるのが得意で助かる。」

「笑わずにいられない、の間違いだと思う。」

私はそう突っ込むと、カズトが声をかけてくる。

「さっき壁触った時に気づいたんだが。」

カズトは数歩あるいて、壁を押すとずずず、と音をたて壁が動いた。

「隠し通路みつけた。」

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