第三章 魔導具製作 4話
翌日、何とか着れた着物と不釣り合いな杖を持ち、私はお茶会に向かっている。
馬車はザイアスが用意してくれたが、本人は乗っていない。
「急用が出来たそうです。」
そう言いながら馬車を操縦していた御者の人から、一枚の手紙を渡してくれた。
紙には短く、同行できないと書かれていて、理由も明記されていた。
「王族の方の対応がある。」
オフェリアとのお茶会がある日に王族に呼ばれるとは、何かしら意図を感じずにいられない。
「まぁ、とりあえず行こうか。」
黒紫色の着物にバスケットという、こちらも不釣り合いな格好のカズトが馬車に乗り込んだ。
「ああ、うん。すみません、お願いします。」
御者さんにそういうと、私は乗り込み、ドアを閉めた。ドアを閉めたのを確認した御者さんは、馬車を走らせた。
「どう思う?これ。」
「さぁ?」
短い会話は続かずにいたが、ふと窓を見ようと視線を移すと、
「(馬車なんて久しぶりだわ。)」
アリスがさも当然のように座っていた。
「うわっ!」
思わず声をあげるが、カズトもアリスもきょとんとした顔になった。
「び、ビックリした。」
「さっきからいたろ?」
カズトは食うか?とバスケットとは別に持ってきたお菓子をアリスに差し出した。
アリスも、頂きますと受け取っていた。
「き、気づかなかった。」
「(ザイアスからお願いされたから来たの。)」
アリスは美味しい、とおかきをほうばっている。
「ザイアスに会ったの?」
「(うん、お願い以外にも話ができたよ。)」
私は少しホッとした。良かった、ちゃんと話せたんだね。
「(ありがとう、アカネ。)」
「いや、いいよ。気にしないで。」
お礼を言うアリスの笑顔が可愛かった。
「で、ザイアスがあなたに何を頼んだ?」
カズトはアリスに水筒とカップを差し出しつつ、話をする。
「(まぁ、身の安全かな?ちょっと見てて、位だよ?)」
「自分の代わりに、ってことかな?」
私の言葉に頷くアリス。なら特別警戒することはないかな。
「ありがとう、アリス。」
「(いいのよ。私も今のお姫様見てみたいし。)」
カップに注がれたお茶をのみながら、アリスは楽しげだった。
というか、精霊でもお菓子やお茶とか大丈夫なんだ。
「んー、新しい杖はしっくりくるねぇ。」
昨日出来上がった杖を握りながら、魔石を見たり、簡単な魔法を唱えたりしてみた。
微量だが、魔力の流れが少なく済んでいる。これが大魔法になればかなり負担は軽くなるだろう。
「カズトはどうなの?」
銀色に黒い石を嵌め込んだ腕を見ているカズトに言うと、馬車のソファーからはみ出てる糸を掴んだまま、詠唱する。
すると糸がするする天井に伸びていき、糸玉を作り出した。
さらに糸玉は光を帯びてぐにゃぐにゃと形を変え、ソファと同じ色の膝掛けにかわった。
そして、キレイに私の膝に着地した。膝掛けを触ると触り心地のよい材質の良いものだとわかる。
「さすがカズト。」
「(こんなあっさり作れてしまうとは、さすがは魔王様。)」
表情があまり動かないが、明らかにドヤ顔になるのが私には分かった。
「後で持って帰って、寝室においとこ。」
「好きにすればいい。」
カズトは問題なさそうだ、と呟いた所で馬車は止まった。
ドアを開けて出ようとしたら、勝手にドアが開いた。
そこから姿を出したのは、オフェリアの執事さんだった。
「お待ちしておりました。」
「あ、ありがとうございます。」
わざわざ頭を下げ、手まで差し出してくれた。さすが執事。
「オフェリア様がお待ちです。」
前回とはうって変わって、笑顔を見せて対応をする執事さん。
「お待たせして申し訳ありません。」
カズトが頭を下げて謝罪する。声のトーンが低い、そういう時は警戒している時だ。
「いえ、時間通りです。ただ、オフェリア様が待ちきれないようで。」
執事さんの案内で、前回と同じ道を歩いている。
良かった、あの絵を確認できそうだ。
あの絵を探しながら廊下を歩くも、
「(アカネ、どの絵なの?)」
すぐ横にいるアリスから聞かれてるが、私は戸惑いを隠せない。
「(あの絵が、ない?)」
「(ああ、ないな。)」
私達は廊下に並ぶあの絵を探すが、あったはずの所には別の絵があった。さらに、並びまで変わっていて余計に戸惑った。
「いかがされましたか?」
執事さんに声をかけられ、ハッとそちらに顔を向ける。
「あ、いや、」
「ここに飾ってあった夕日の絵はどうされたんですか?」
私が言うことに戸惑っていたが、カズトがあっさり追及をする。
執事さんは、ああ、と呟いて、
「やはり気づいておいででしたか。」
と答えたのを聞いた私達は一瞬身構えた。それを手で制する執事さん。
「あれはもう撤去させていただきました。」
「何故ですか?」
カズトが落ち着いたトーンを続けて質問する。
「必要がなくなった、ともうしますか。」
執事さんは返答に困っているようで、カズトはそれ以上追及する気が失せたようだ。
「変なことを聞いてすみません。」
私が代わりに対応すると、執事さんは曖昧な笑みを浮かべて濁した。




