第一章 マナリスでの異世界生活 4話
講義はだいたい昼御飯や休憩を挟んで日中ほとんどを占めている。
半月の講義の中で異世界人として私が感じたのは、似て非なる日本というイメージ。
辿ってきた歴史はかなり違う。だが、文化面は近いものがある。
日本には八百万の神々という神話的な話がある。マナリスには、神様1人だが全ての存在には神霊や精霊が宿るという認識なのだ。
マナリスの魔法が多種多様にあるのは、これがあるからなんだろう。
共通言語も発音は日本語がそのままなんだが、文字は違う。
こうも似て非なる部分があると、ご都合主義すぎてかえって気持ち悪い感じだった。
「近づきすぎたからこそ、"扉"が現れた。」
これがザイアスと私達が今のところ出した推論だ。
今後、私達も魔導師として活躍出来れば、もっと調査が進むと願っている。
講義が終わると、洗濯の取り込みやミューラと一緒に屋敷の清掃や買い出しに向かう。
「アカネ、すまないが買い出しを頼む。」
今日はリゼルからも紙に書いたリストを渡され、追加買い出しが出来た。
ミューラを含む私達で、買い出しをしながら生活に慣れるために町へ繰り出す。
食材の良し悪しはやはり、長年貴族のメイドだったミューラの目利きを参考にする。
野菜は日本にもあるものが多いので、何となく解るものだが、見たことないマナリス産の野菜はお任せしてる。
「今日はミズハのリクエストでハンバーグだったね。」
「うん!好きー!」
日本から持ち込んだ丈夫なマイバッグを持ち、ミズハは嬉しそうにバンザイをする。
「アカネが持ってきた料理本にも載ってましたね。」
ミューラは日本語が読めないが、口頭や絵を見て説明すると理解できる為、和食の勉強もしているらしい。
料理本に関しては、私が出来なくなる料理が増えるのがいや、とのことでカズトがかなり持ち込んだ。
講義以外で勉強するとパンクするから、と私はまだ見てないが。
「アカネ、食材はこれで全部かしら?」
ミューラの声に我に返り、内容を確認する。
「あ、うん。これでとりあえず大丈夫かな。」
「じゃ、私は支払いを済ませるから待っててちょうだい。」
どっさりと食材が乗った台車を押しながら、店員と話を始めた。
私達のマナリスの生活費は、魔導師協会が全部持つことになっているが、やりすぎないようにしている。
といっても、まだ贅沢できるのか解らない現状で無駄遣いなんて出来ないけれども。
「ママー。」
ミズハが呼んでいるので近づいて返事をする。
「あれ、なあに?」
指差したのは、雑貨屋においてある鳥かごだった。ただ、中にはキラキラと光る羽を持つ蝶に見えた。
「ちょうちょ?いや、違うな。」
私は意識を集中して、再度まばたきをする。
するとやはり蝶ではなく、蝶の羽を持つ少女だった。
「ああ、やっぱりフェアリーだね。」
「フェアリー?」
「自然の中に生きる精霊さんのお友達。」
ミズハには大雑把だが、分かりやすく説明する。
「ママ、あの子泣いてるの。何かあったの?」
確かにミズハが指摘した通りにフェアリーのその顔は涙を流している。
何かあったのかは解らないが、今それをどうにかするわけにはいかなかった。
「多分、でもママにはまだ何もしてあげられない。」
「どうして?」
「ママたちは異世界人だから、まだこの世界のルールを知らないの。」
半月でこの世界の一般常識を学んだが、ただそれは大雑把な一般常識で、この町でも通じるか解らないのだ。
だから、ミズハにはそう伝えるしかない。
「でも、泣いてるよ。」
「そうだね。んー。」
私はミューラが戻ってくるのを横目で確認し、ミューラに雑貨屋のことを聞いてみる。
「あそこの雑貨屋にある鳥かご、何が入ってるの?」
「あー、ありゃ多分観賞用かねぇ。」
「私達にはフェアリーに見えるのよ。」
その言葉にミューラは目を擦り、もう一度見直している。
「私には解らないわねぇ。素質がある人には見えるのねぇ。」
「ちょっと寄ってもいいかな?」
その言葉にミューラもそうだが、ミズハは喜んだ。
雑貨屋に近づくと、やはり鳥かごのフェアリーは私とミズハを交互に見て驚いている。
「はい、いらっしゃ-----あ、アンタは。」
「はじめまして。アカネと申します。」
私達一家は異世界から移住した異世界人ということは、屋敷に引っ越してから速報で伝えられたらしい。
町長との握手してるシーンを、魔導カメラで撮影されたらしく、速報で早速顔バレしている。
その為、最初は買い物行くのにも人だかりに合うというレベルだったが、ようやく半月で収まった方と思ってる。
雑貨屋の店主が驚いたのは、それだろう。
「いやぁ、異世界人が来てくれるなんてなぁ!」
「店先のアレが気になって。」
と私は例の鳥かごを指差した。店主はにこやかに売り込みを始め出した。




