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4話



 それから悠理は、ルイ王子と二人っきり(、、、、、)で訓練を受けることとなった。大事なことなのでもう一度言う。二人っきり(、、、、、)で訓練だ。辛すぎる……。

 訓練所に向かうたびに、四方八方から殺人光線を飛んでくる。もし悠理が豆腐メンタルの持ち主だったとしたら、きっと豆腐の原型を留めていなかったことだろう。


 そして、少し問題が発生した。聖属性以外の属性を全て持っている事がルイ王子にバレた。泣きたい……。

 まだ聖属性持ちであることはバレていないと思う……多分。


「悠理は凄いね。火・水・風・土・光・闇の六属性を持っているなんて。過去の大賢者並みに凄いことだよ」


 優しく褒めてくれるルイ王子。それもキラキラの笑みを浮かべながら……。

 見てるだけなら幸せなのに、今の悠理にそんな余裕はない。

 ああ、眩しすぎる……。


「あ、ありがとうございます。で、でもそんなに凄くないです、よ?」


「いや、とても凄いことだよ。流石私の悠理だ」


 ……あれ? 今この人、聞き逃してはいけないことをポロっと言ったような……。

 気のせいですね。きっとそうです。そういうことにしておきましょう。


「よし、次は光属性の魔法の訓練をしようか」


 ルイ王子に促され、次の訓練に移る準備をしていると、一人の兵士が息をきらせながらこちらに向かって走ってきた。


「殿下! 緊急事態が発生しました!」


 緊急事態と聞いた途端、ルイ王子の顔が引き締まる。

 ああ、やっぱり一国を背負う王子様なんだあ、と悠理は思った。


「緊急事態? 何かあったのか?」


 ルイが眉をひそめながら、尋ねる。


「はい! 魔の森に駐在していた第二騎士団がワイバーンと遭遇したらしく、けが人が多いため、光属性を持つ者を医療室に急ぎ集めよ、との王命が下りました」


 ルイ王子は、ファンゼル国屈指の光魔法使いだ。だから、すぐにルイ王子に王命が伝えられたのだろう。


「分かった。今行くと伝えていてくれ。それと悠理も」


「へ?」


 返事をする暇もなく、悠理は若干引きずられるようにしながら医療室に向かった。


 私の意思はどこにいった~~!



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ルイ王子に連れられて(引きずられて)王城近くの医療室に向かうと、そこは鉄臭い血の匂いで充満していた。


「これは酷いな……」


「っ……」


 ルイ王子がぼそりと言った。悠理はあまりの悲惨な光景に言葉を失う。

 呼び出された三年六組の生徒達も似たような感じだった。


「き、気持ち悪い……」


「うぇ……」


「ゲロゲロ……」


 近くのバケツに吐いてる人もいた……。

 それもそうだろう。医療室は数えきれないほどの怪我人で溢れかえり、近くの更地には簡易テントまで立っているのだから……。

 平和ボケしている日本人には、かなり衝撃的な光景だと思う。

 下手したら、鬱になるレベルの光景だと思っていただければ良い。


「退いてください! 急患です!」


 唖然とする三年六組の生徒達をかきわけ、医療室とテントの間を医者や看護師と思われる人達が、忙しなく走り回っている。

 ワイバーンは、ドラゴンの頭、コウモリの翼、一対の鷲の脚を持つ化け物で、その尻尾の先には毒があるらしい。それが原因となって、怪我人の肌がドス黒い色に変色し、あちらこちらで呻き声が聞こえる。

 ホラー映画さながらの光景である……。


「ルイ殿下! 来てくださったのですね!!」


 ルイ王子を見つけた男の医者が目に涙を浮かべながら、近づいてくる。しかし、男の手は血まみれだった。


「遅くなってすまない。それで現状は?」


「最悪、ですね……」


 医者はどこか辛そうな顔をする。


「まだ諦めるな。一人でも多くの命を助けるぞ!」


「は、はい!!」


 ルイ王子の言葉に医者は大きく返事をし、すぐさま近くの患者を診察し始める。


「ここにいる者は全て光属性持ちだと聞いています。どうか、我が国の騎士達の命をお救いください!」


 ルイ王子がそう言うと、三年六組の生徒達は強く頷き、近くの患者達の患部を光魔法で治療していく。


「ル、ルイ殿下! こちらに来てください!」


 医療室の奥の方で、誰かの声が聞こえた。

 声がした方を見ると何人かの医師や騎士達が集まっている箇所がある。

 視界の端でルイが急いでそちらに向かうのが分かった。


「ロ、ロイトっ!!」


 そしてその中心で倒れている人物を見るやいなやルイは悲鳴に似た声をあげた。

 悠理もすぐさま人をかきわけ、患者の側に向かった。

 そこには右腕を食い千切られた男性が横たわっていた。どことなく、レオン君に似ている。そんな気がした。


「く、くそっ! 回復!! 回復しろ!!」


 ルイ王子は男性の患部を治療しようとした。しかし、相当傷が深いのか、傷は塞がらず、男性の出血は止まらなかった。

 


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