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27話



 再会したばかりだと言うのに、悠理とルイを突きつけられたのは、とても残酷な未来だった。


『王都に魔物が迫っている』


 それは王城にいる全ての者を、震え上がらせた。


「父上!!」


 騎士から報告を受けた悠理とルイは、ディオスの執務室に雪崩れ込んだ。


「ル、ルイと悠理ちゃん!?」


 二人の姿を見たディオスの目が大きく見開かれる。


「父上、これは一体どういうことですか!?」


「それが分からない。魔物の大群がこの王都に引きつけらるかのようにして移動しているらしい」


「そ、そんな馬鹿な……」


 魔物が王都に侵入したら、どれほどの民の命が犠牲となることだろうか? 


 一体どうして、魔物の大群が王都に向かっているのだ? 魔王らしき存在が出現したのだろうか? 


 悠理の胸が痛くなった。


 またルイの大切な人達が失われていく。きっとルイは悲しむだろう。


 そして私は、ルイのために何をすることができるのだろう……。


 そんな時だった。

 ディオスの執務室の扉が大きな音ともに開けられた。


「ふふ、陛下。どうですか?」


 嬉しそうに笑みを浮かべた王妃が立っていた。


 悠理の脳内に警鐘音が鳴り響く。


 この人は危険だと悠理の勘が訴えている気がする。悠理の目には王妃をドス暗いオーラが包んでいるように見えて。


「……どうしてここに王妃がいる」


 ディオスの眉が僅かに歪んだ。


「絶望にくれる陛下の顔を見にきたのです。どうですか? 私が召喚した子達に、あなたの創り上げたものが全て壊される気分は? 陛下が守れるべき民、そしてこの国が私の召喚した子達に蹂躙されるのを見ていて下さい」


 口元を歪めて笑う王妃から告げれる事実に、ディオスの目はこれでもか! というぐらい大きく見開かれた。


「お、王妃が召喚しただと!?」


「そうです。あなたのすべてを奪うために……」


 王妃はそう言って、自分の体に魔法を発動させた。すると、王妃の姿がみるみると変化していく。


 色鮮やかなドレスが、漆黒と真紅の二色に変化していく。


 それは物語に出てくる魔王のような姿だった。


「ふふ、しっかりとその目で見ててください。あなたのすべてが私の手によって壊されていくのを……」


 王妃はそう言って、黒い渦の中に飲み込まれていった。


「ま、待て!?」


 ディオスが慌てて王妃の下に向かうとするが、黒い渦はすぐに消失した。


「有り得ない。王妃が……魔物に変化しただと……」


 どうやら王妃は、闇に心を売って魔物に変化したらしい。


 ディオスがその場に崩れ落ちた。


「ち、父上!?」


 ルイが慌ててディオスを支える。


「す、すまない。私のせいで……」


「いえ、父上のせいではありません!! どうか気をしっかりと引き締めて下さい!!」


 ルイの言葉にディオスはハッと我に変える。


「弱音を吐いてすまない、ルイ。ゼノンよ、今すぐ魔物の討伐隊を送りこめ」


「は! 陛下の仰せの通りに」


 ディオスに命じられたゼノンは、執務室から出ていく。


「ルイよ、これから忙しくなるぞ」


「大丈夫です!」


 ディオスの言葉にルイの目が爛々と輝く。


 ルイやディオスが頑張っているのだ。それなら……私も頑張ろう。この力はこの人たちを救うためだけに使うと決めたのだから。


 悠理はそっと執務室から退室した。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 



 先ず魔物の大群が王都に入れないようにしなければいけないと思い、ルイの部屋にいるルージャの下を訪れる。


 ルイの部屋に入ると、そこにはルージャがいた。


『ユウリ! 体調は大丈夫なの?』


 ルージャが心配そうに尋ねてくる。


「うん、大丈夫よ。それでね、ルージャに頼みがあるの」


『頼み~~?』


「そう、頼みというがお願いかしら?」


『ユウリのお願いなら、なんでも聞くよ~~!!』


 尻尾をブンブンと振るルージャに笑みが浮かぶ。


「ふふ、ありがとう」


 悠理は、ルージャの頭をよしよしと撫でてあげた。


『ユウリに撫でられるの、好き~~』


「私もルージャを撫でるのは好きよ。ルージャってとてもモフモフで気持ち良いの」


『ヤッターー!!』


 喜ぶルージャに、悠理は自然と笑みが浮かぶ。


 自分に何ができるかは分からない。でも……何もしないでルイの大切なものが失われていくのはごめんだ。


 ルイの大切なものを奪う王妃が許せない。その罪はしっかりとその身で償ってもらわないと……。


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