表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/43

19話



 お披露目会を無事に(と言えるのか?)終えることができた。


 そして翌日、悠理はディオス様の執務室に呼ばれていた。


「ユウリ殿、私に合体魔法を見せてくれないかな?」


 少年のようにキラキラした目でお願いしてくるディオス国王。

 

 え? なんか怖いんですけど……。


「父上、ユウリが怖がっています」


 すかさずルイ王子が、悠理とディオス国王の間に割って入る。


「あ…すまない。思わず探究心が刺激されてしまってな……」


 どこか申し訳なさそうに謝ってくるディオス国王。


 悠理は、ディオス国王になんか申し訳ないと思ってしまった。


「ディオス様、『クリーン』ならいつでも見せることができます、よ?」


悠理がそう提案すると、ディオス国王がズシズシと近付いてきて、悠理の手をガシッと握る。


「本当か、ユウリ殿!!」


 嬉しそうに笑うディオス国王を振り払うこともできず、至近距離からのイケメン攻撃に固まっていると、ルイ王子が悠理とディオス国王を引き剥がす。


「父上! 悠理に触りすぎです!」


 ルイ王子(不機嫌度MAX)は、そう言った。

 そんなルイ王子を見たディオス国王は、ニヤニヤとする。


「ルイよ、心が狭い男は嫌われるぞ」


「なッ!?」


 ディオス国王(人生の先輩)からのアドバイスに、ルイ王子は動揺する。


「ユ、ユウリなら、こんな私でもきっと受け入れてくれる……」


 ちょ、ちょっとそこの人、流石の私も心が狭い人は……ハッ!? ルイ王子に向けてそんなこと言えるのか、私? 


 悠理の脳内に昨日の記憶が蘇る。


 ……何も言えない。ルイ王子よりも私の方が、心が狭いかも……ふ、複雑。


「ユウリ、さっきから黙ってどうしたの? もしかして……私のことを考えてる?」


 悠理の耳元でそっと呟いてくるルイ王子。突然のことに思わず身震いしてしまった。


 さ、さてはこの男、これを狙っていたな!? 油断も隙もない!!


 悠理は、ルイ王子から逃れるためディオス国王の背後に身を隠した。


「……ユウリ殿?」


 ディオス国王は、若干戸惑いながら悠理に問いかけてくる。


「ルイが意地悪するので、匿って下さい」


 悠理は頬を膨らませながら、ディオス国王にそう告げた。

 するとディオス国王は、とても嬉しそうな笑みを浮かべた。


「もし私に娘がいたら、こんな感じなのかな?」


「……え?」


 よしよしと悠理の撫でてくるディオス国王。


 あれ? 私、今この方に娘扱いされてる? 


 悠理は若干戸惑いながらもディオス国王に頭を撫でられる。

 自然と悠理の口元に笑みが浮かんだ。


「ふふ、気持ち良いです」


 悠理の頬が緩む。その途端、ディオス国王がこれでもかッ!? っていうぐらい目を見開いた。


「……ユウリ殿、試しに私のことを“お父さん”って呼んでくれないか?」


「へ?」


 突然のディオス国王の要求に、悠理は呆けた声が出る。


「父上、ユウリが困っています。ん? 待てよ、どのみちユウリが私のお嫁さんになったら、そう呼ぶことになるのか?」


 ルイ王子はブツブツと呟く。

 そして結論に至ったのか、ルイ王子はうんと頷いた。


「ユウリ、私からもお願いするよ」


「ほらほら、ルイもこう言ってくれているんだから」


 ルイの許可も得られ、ディオス国王が悠理に迫ってくる。


 ……これは呼んでいいのか? ディオス国王を『お父さん』と呼んでしまったら、なにか引き返すことができなくなりそうなんだけど……。


「ユウリ、はやく」


 ルイ王子が悠理を急かす。


「え……えーと、お父さん?」


「か……」


 か?


「可愛い!! ユウリちゃん、私の養子にならないかい?」


 え? よ、養子? 王族の養子って、そう簡単になれるものなの?

 それと呼び方がちゃん付けになってる……。


「父上!! 悠理が父上の養子になってしまったら、私のお嫁さんになれないでしょう!!」


 ルイ王子、突っ込むところそこ!? もっと他にあるよね!? 


「まあ、ユウリちゃんがルイのお嫁さんになれば全て解決するんだよね……」


 ディオス国王は、どこか意味あり気な視線を悠理に送ってくる。


「ちょ、ちょっと待ってください! 私、ルイは好きです。しかし、異世界人といえ、平民の私が王族であるルイと結婚するのは、身分的に問題があるんじゃないか?」


「ユウリ……」


 真剣な話をしているというのに、蕩けるような笑みを向けてくるルイ王子。


「な、なんですか? 私、真剣な話をしているんですけど」


「今、初めて私のことを好きって言ってくれたよね?」


「……あ」


 ルイ王子の指摘に、悠理は自分が盛大にやらかしたことに気がつく。


 言うつもりなかったのに……ポロッと口から漏れてしまっただと!?


「あれあれ? ルイとユウリちゃんは両思いであってる?」


 近所のおばさんのような顔をするディオス国王。


「今、悠理から言質を得ました。これで私とユウリは両思いです!」


 待て待て~~!! ルイは好きだよ。でも異性となると……よく分からない。


 誰かを好きになったことが一度もない悠理は、自分がルイに抱いている気持ちに戸惑いを覚える。


 ルイが自分以外の女の子と喋っているのを見ると、胸の辺りがモヤモヤはする。


 この感情は一体何?


「……私とルイでは、身分が釣り合いません」


 こんなことを言いたいわけではないのに……自分の口が勝手動いてしまう。


「身分? ユウリちゃんなら大丈夫だよ」


「そうなんですか……へ?」


「ユウリは聖女なんだよ? それなら大丈夫」


 王族と張り合うレベルって……聖女ってどのくらい尊い存在なのよ!!


「だから私はユウリの心の整理がつくまで気長に待つことにするよ。父上、それでいいかな?」


「うん、それならいいよ」


 勝手に話を進めないで!! てか、なんでそんなに結婚話にノリノリなのよ!!


 誰も悠理の心の叫びを聞くことはなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ