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15話



 ルイ王子が悠理に誓ったその日から、ルイ王子の態度がガラリと変化した。自分の気持ちを一切隠さなくなったのだ。


「ユウリは本当に可愛い」


「ユウリ、好きだよ」


 遊び人になってしまうのでは? と懸念していた悠理だったか、どうやらルイ王子の甘々言葉攻めは、自分限定であるらしい。


 嬉しい反面、周囲の視線が以前よりも刺々しくなった。


 でも……そんなことが気にならない(正直に言うと、気にする余裕がない)ぐらい、ルイ王子との攻防に悠理は全神経を注いでいる。隙を見せたら、最後。多分……取って喰われるだろう。


 あ、ちなみにルージャの(スパルタ式の)躾なのですが、二日で完了したらしいです。今ではルイ王子の従順なる忠犬((しもべ))となっております。


 悠理は、時々ルイ王子の許可を得て(・・・・・・・・・・)、ルージャのもふもふを堪能している。とても最高です。一度ルージャと一緒に寝ようと思い、寝室に連れていったことがあるのですが……黒い笑みを浮かべたルイ王子に阻止されました。


「主人である私よりも先にユウリと寝るなんて……躾し直さないといけないね」


 ルイ王子はそう言って、ルージャを引きずり……ゴホン、引き連れ、部屋から出ていきました。


「あ~~、私のモフモフが~~」と、悠理は心の中で叫びました。


 どうしてルイ王子に抗議しないのかって? いや、だってルイ王子に勝てるはずがないもの。最初から負けるって分かっているのに挑むほど馬鹿でありません。


 勝てるものは勝てません。逆に返り討ちにされるのが目に見えて分かっています。


 黙っていることが、今の自分の最善策なのです……。


 というわけで、悠理は今大人しく、厚化粧のババア…ゲフンゲフン、膨よかなご婦人達(年齢40~60の間と思われるお化け達)の着せ替え人形と化しています。


「まあ!! なんて素敵な容姿をしているの? 隠すなんて勿体無いわ!!」


 身体の向きがクルッと変わる。


「今、髪のセットアップしていたのですよ! 急に身体の向きを変えないで頂戴!!」


 再び同じ向きに変えられる。


 このご婦人方は、老衰という言葉を知らないのだろうか? 全く力が衰えているように見えないんですけど!? まるでゴリア……。


「まあ、なんて細い腰ですの! 羨ましいですわ!!」


 怪しい手つきで悠理の腰を撫で撫でするご婦人。どこか蕩けきっているような顔をしているのは気のせいだろうか?


「服の上から分かりませんでしたが……かなり胸も大きいのですね!!」


 悠理の胸は、まだまだ成長段階にあるが、普通にDはある。子供を三人も産みながら、ナイスバディな体型を維持している母の遺伝子をしっかりと受け継いだのだろう。どうせなら、体型の遺伝子よりも顔の遺伝子の方が欲しかった……。


 そんなわけで悠理は、身体(・・)だけはモデルとしてやっていけるレベルなのである。服の上から全く分からないけれど……。


「オホホホ! なんてスラッとした脚なの!! それに、思わず舐めまわしたくなるような肌のきめ細やかさ!!」


 後方のご婦人が、身の毛がよだつようなことを口走る。


 もうやめて~~!! 主に私の精神が保たないから!


「本当にユウリ様は美しいです! まるで神話に出てくる聖女様のようですわ!」


 お世話係のノーラさんが、少し離れたところで絶賛の声を上げる。


 ノーラさん! あなた、私のお世話係よね? 主人である私が、目をギラギラにした野獣共に、今にも襲われるそうになっているというのに、どうして傍観しているのよ!


 そんな悠理の心の叫びがノーラさんき届くはずもなく、それから三時間、みっちりと着せ替え人形の使命を果たしのであった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「うん、やっぱり悠理は綺麗だ!」


「ルイ殿下もそう思いますか? 私、本当にユウリ様のお世話係になれて幸せですわ!」


 地獄のような三時間を耐えた悠理は、控え室で三時間待っていたルイ王子の前に連れ出された。

 逃げる気力もありませんでした……。


「ルイ、ノーラさん、お世辞でもありがとう……」


「またまた~~、ユウリ様って本当に謙虚な方ですよね! ユウリ様がブスだったら、私たちはゴミ屑以下になりますよ!」


 ノーラさんは何を思ってそんなことを言うのだろう? 


「ルイ殿下に、ユウリ殿、失礼します! 居ても経ってもいられず、来てしまいました!!」


「俺も~~」


 そう言って控え室に入ってくるレオン君とロイトさん。


 あれ? 二人ともお仕事は?


 二人は控え室に入ってドレスアップした悠理を見るなり、石のように固まった。


「「……」」


「どうしたのですか?」


 悠理はそう問いかけた。しかし、二人は固まったまんまである。まるで何かに目を奪われているようだ。


「ユウリを見るな。減る」


 ルイ王子のどこか不機嫌な声を聞こえ、悠理は攻防に引っ張られる。そして、ルイ王子は、二人の視線から遮るかのように悠理を背中で隠した。


「私……心臓が抜き取られるかと思いました」


「俺もだ……あれは詐欺だろう」


 二人がブツブツと呟き出す。


「ハア、今日はルージャのお披露目のはずなのに……これではユウリが目立ってしまうではないか」


 ルイ王子がボソリと呟く。


 そう、今日は神獣様であるルージャのお披露目である。

 契約者として、ルイ王子もそのお披露目会に出席することとなったのだが、なんとルイ王子のパートナーに悠理が選ばれたのだ。

 もちろん、お断りしようと思いましたよ。どうして、自分より綺麗な男の隣に立たなければいけないのか、と。でもね、そのときのルイ王子の笑みが真っ黒でしたの……。


 小心者の悠理がルイ王子(ブラック)に敵うはずもなく、三時間もかけてあれよこれよと飾り立てられた。


 三時間も飾り立てられるとか……どんだけ地味でブスな私を誤魔化そうとしていのよ!?


 そしてこれから悠理は、お披露目会(戦場)に赴こうとしているわけである。


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