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14話




 無事に王城まで到着することができました。


 やっとである。危うく精神(メンタル)ライフが0(ゼロ)になることころでした。


 あと、ルージャの件で一悶着がありました(駄犬のくせに……。byルイ王子)


 なんせルージャは、あれでも神獣様。


 神獣様って、とても神秘的な存在なんですって。あれですよ、神出鬼没って奴。出会えたら超ラッキーって感じ。


 ここ数百年、目撃されていなかったらしく、そんな神獣様が一国の少年の契約獣となったものだから、国の重臣達もびっくり仰天。

 ルイ王子のお父上である国王陛下は、レオン君曰く「ルイ、よくやった。流石私の自慢の息子だ」とキラキラの笑みを浮かべ、親指を立てていたそうです。


 とてもいいお父様ですね。


 で、王城では変な話が飛び交っていました。


「第一王子のルイ殿下が行方不明になった今、第二王子のハルス王子を次の国王に……」といった話です。

 行方不明になっていたといっても、一日~二日です。


 そんな話になりますか? そんな暇あるなら探せよ、と思わず突っ込んでしまいました。


「やはり、あの女が動いたか……」


 ルイ王子がボソリと呟く。


「あの女?」


 私がそう問いかけると、ルイ王子はどこか渋い顔をした。


 梅干しでも食べてしまったのだろうか?


「な、なんでもないよ、ユウリ」


 慌てて顔を逸らすルイ王子。


 多分話したくないことなんだと思う。


 悠理は、ルイ王子の心をすぐに察した。

 人は誰でも一つや二つ、話したくないことがある。悠理も同じだ。踏み込まれたくない話がたくさんある。

 だから、悠理は聞かなかったことにする。

 それが一番の最善策だと思うから……。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「あ、ユウリ。今日から一週間後、ルージャのお披露目会が開かれることになったんだ。そのとき、ユウリは私のパートナーとして出席して貰えるかな?」


「ブフッ!?」


 お茶を優雅に(・・・)飲んでいた悠理に、ルイ王子が言葉の爆弾を投げ込む。

 おかげで悠理は飲んでいたお茶を吹き出してしまった。牛乳瓶眼鏡もビショビショだ。

 悠理は、近くのナフキンを手に取り、眼鏡を外す。度は入っていないので、牛乳瓶眼鏡を外しても生活に支障はない。

 あー、前髪までビショビショだ。まるでワカメ……。


「ユウリ、ごめんね。顔もビショビショになってる」


 ルイ王子はそう言い、自分のナフキンを手にした。そして、悠理の前に跪き、ナフキンをそっと悠理の顔に近づける。


「ル、ルイッ!? 私、汚い!」


 慌てふためく悠理を無視して、ルイ王子は悠理の濡れた前髪をかき分けた。


「え……」


 ルイ王子の口から戸惑いの声が漏れる。


「わ、分かってるから! 自分がブスなことぐらい!!」


 悠理はルイの王子の胸を力一杯押し返す。


 美形家族の中で、一人だけ異質な自分。


 悠理はずっと自分に問いかけてきた。


 どうして自分だけが醜いのだろう、と。


「お願い…見ないで。私に、触らないで……」


 悠理は自分の醜い顔をルイ王子に見られたくなくて、両手で顔を覆った。

 ルイ王子は、相手に触れることで、その相手の考えや気持ちを読み取ることができる。

 だから、悠理は知られたくなかった。自分の身に巣食うこの醜い思いを……。


「……ユウリ」


 ルイ王子が優しく悠理に呼びかける。


「いや……」


 悠理は、イヤイヤと首を横に振った。


「ユウリ、どうして隠すの?」


「──にくいから……」


 悠理はボソリと呟いた。


「え? ごめん、よく聞こえなかった」


「醜いからッ!! 私は醜いの!」


 悠理はそう言って、顔を覆っていた自分の手を外した。


 これで全てが終わりになる。


 ……ルイ王子は自分から離れていくかもしれない。


 どうしてこんなにも心が痛いのだろう。もう慣れたことではないか……人が自分から離れていくことなど……。


「ユウリは、とても綺麗だ」


「そんなの分かって……え?」


 悠理は自分の耳を疑った。


「ユウリは、綺麗だよ。私がびっくりするぐらい……」


 ルイ王子は、悠理の頬に自分の手を沿わせた。


「……お世辞でも、ありがとう」


 ルイ王子は優しい。


 そんなルイ王子に、自分は一体何を期待しているのだろう? 


 同情? 哀れみ? そんなのじゃない。

 私はルイ王子と……。

 言葉にするのも烏滸がましい。


「ユウリ、オセジって何?」


「……え?」


 はて、この人は何を言っているのだろう?


「ルイ、冗談はよして。自分のことぐらい、自分が一番分かっているわ」


 悠理は、頬に添えられたルイ王子の手に自分の手を重ねた。これで最後になるかもしれない。だから、今のうちにルイ王子にたくさん触れておこうと思ったのだ。


「ふふ、ユウリは可笑しなことを言うね。私はいつも本気だよ」


 ルイ王子の目が怪しく光った。人を惹きつけて止まないその瞳が、悠理に向けられる。それだけで、動悸が早まった。


「ユウリ、顔を上げて」


 ルイ王子は優しくそう促す。これはお願いではない、いわば命令である。悠理はルイ王子の言葉に逆らうことができない。


 意を決して、目の前の彼を見つめた。すると、優しい口付けが悠理の涙で濡れた頬に落とされる。


「や、やめて……」


 どうしよう。ルイ王子にバレてしまう。一時でもルイ王子の側にいたいと願ってしまった、自分勝手な願いが……。


「私はずっと自分の力が嫌で嫌で堪らなかった……でも、今は違う。ユウリに触れるだけで、ユウリの考えや気持ちが分かるのだから。相手の考えや気持ちが分かると、とても安心するんだ。だから、私はこれから包み隠さず、ユウリに自分の考えや気持ちを話していくことを誓おう」


 悠理の手の甲に口付けを落としながら、ルイ王子はそう告げた。


 やっと女同士の、血で血を洗うバトルへと突入します(近いけど、嘘です。悠理の一人勝ちです。

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