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閑話3(視点:加賀美浩介)



[視点:加賀美浩介]



 俺の名は加賀美浩介。男子高校生である。

 教室(クラス)では人気者で、休み時間になると俺の周囲には多くの生徒が集まる。それだけ俺には魅力があるってことだ。

 俺は基本、なんでもできる。勉強はもちろんのこと、運動神経もかなりいい方だ。だから、学校中の女子生徒達がこぞって俺に夢中になる。仕方ないことだと思う。だって、俺、普通にかっこいいから……。

 万人受けする容姿で生まれてきてしまったこと自体が罪なのか、とうとう同じクラスの地味でブスな女──東雲悠理までもが告白してくる始末だ。ブスは自分の身の程を弁えろって思う。こんな地味でブスな女にまでも好かれるとか、俺って本当に罪な男だ。


 そんなある日、俺たちは今流行りの異世界召喚というものをされた。


 まさか俺たちが? とは思ったが、これは夢ではない、現実に起こっていることだ。


 突然のことで戸惑っている俺達に、一人の少年が声をかけてくる。

 悔しいが……俺と同じくらい顔が整っていると思う。


 美少年──ルイ・アルフォードは言うには、どうやら俺達に力を貸して欲しいらしい。これも何かの縁だ。だから、この美少年を……いやこの世界を救ってやることにした。

 ルイに指示され、三年六組の生徒達は自分達のステータスを確認する。

 俺も『ステータス』と唱えてみた。



『ステータス』


【名前】コウスケ カガミ

【職業】勇者

【スキル】

 ・火・水・光属性の魔法

 ・剣術スキル

【加護】

 ・女神の加護(小)



 俺は一瞬自分の目を疑った。なぜなら、俺の職業欄に『勇者』と書いてあるのだから。


「よっしゃ! 俺が勇者だ!!」


 俺は思わずガッツポーズをしてしまった。

 高校生といえど心は幼いころのまんまである。世の男にとって、勇者ほど憧れの職業はあるだろうか? いや、ない。


「浩介スゴイ! 私は魔法使いだったわ!」


 すかさず俺の取り巻き達が周囲に集まりだす。


 「天は二物を与えず」ということわざがあるが、どうやら俺には関係ないらしい。顔はよし、運動もできる、そして……異世界では勇者。これほど完璧な男はいるだろうか? 

 あの金髪碧眼のイケメン王子でさえも俺の前では霞んでしまうに違いない……なんてな。俺もそこまで阿呆ではない。

 ちゃんと分かっている。俺とあの王子とでは、元から持ってるものが全然違う。なんとなくだが、それが分かった。

 しかし……あの王子の横に並び立つことはできる。俺はそう強く決心した。


 でも、俺は裏切られた。あの王子が地味でブスな女の代名詞である東雲悠理を選んだのだ。同じクラスの姫川麻里ではなく……。

 俺は自分の目を疑いたくなった。なんであの王子は、誰もが見惚れる姫川麻里ではなく、地味でブスでなんの取り柄もない女を選ぶんだ? 

 俺はどこか裏切られた気分になった。男の俺から見ても、あの王子はかっこいい。それに人柄も良いのだろう、自然と人があの王子の周囲には集まる。

 なのに……あの王子は自ら望んだのだ。かつて俺が馬鹿にした女を……。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 それから俺は、ハルス王子、オーリア王女、姫川麻里と同じ訓練所で一緒に訓練を受けることになった。

 オーリア王女は、とても素敵な女性だと思う。頭は少し残念だが……。

 でも、俺が掠り傷や切り傷を負う度に、目に涙を浮かべ、心配するオーリア王女。そんな彼女に少しずつ惹かれていく自分がいた。

 少なくとも、オーリア王女は俺に気があると思う。

 なぜなら、俺がオーリア王女に触れる度に顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに笑うからだ。

 俺は少しずつ彼女との距離を包めていった。


 そんなある日、訓練に熱中する俺達の下に、一人の伝令が走ってきた。

 どうやら、魔の森の遠征で怪我人が続出したらしい。

 すかさず、俺達はその場に向かった。そこはまるで地獄絵図のような光景が広がっていた。

 それ以上に驚いたのが、クラスの中でも特に真面目な奴達が必死に怪我人を治療していることだ。俺の取り巻き連中は、一人もいなかった。

 俺も何か手伝えることはないかと探していると、俺の目の前を一人の少女が駆け抜けていった。地味でブスな女の代名詞である東雲悠理だ。

 東雲悠理は、俺のことなど眼中に入っていないようで、すかさずルイ王子が診る男の側へと行く。

 そして、誰もが男のことを諦めたとき、東雲悠理は奇跡を起こした。なんと、男の失った腕を再生させたのだ。

 俺は自分の目を疑った。そして、近くで呆然とその光景を魅入っていた白衣姿の男に尋ねる。


「う、腕は再生できるのか?」と。


 すると、男はこう言った。


「有り得ない。一人の人間が持つ魔力では…不可能だ……」と。


 男の言葉を聞いたとき、俺は眩暈を覚えたのであった。



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