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7話



 今悠里とルイは深~い深~い森の中にいる。

 それも二人っきりで……。

 色んな意味で危険だと思う。

 森の中には、獣がうじゃうじゃいる。夜になればなるほど襲われる可能性は増加する。とても危険だ。

 それに、獣は動物だけとは限らない。

 悠里の隣にいる麗しの美少年ことルイ王子も血迷って、獣に変貌する可能性がある。そして、隣の雌こと悠理を襲うかもしれない。

 普通の男だったら、悠理みたいな地味でブスな女を襲ったりはしないだろう。

 しかし、人は時々可笑しくなるものだ。なんせこの世の中、八十歳のお婆さんが強姦されている、と聞く。

 何が起きても可笑しくはないだろう。「私、地味でブスだから~~」なんて油断していて、襲われでもしたらシャレにならない。

 したがって悠理は、今とても危険な状況の中にいた。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 



 二日前、悠理はルイ王子につれられ、とある部屋に行くと、そこにはロイトさんとレオン君がいた。


「ユウリ殿、この度はありがとうございました。おかげで私は騎士を続けることができます」


「私からもお礼を言わせてください、ユウリ様。我が兄を救っていただきありがとうございます」


 ロイトさんとレオン君がお礼を言ってくる。

 やっぱりロイトさんはレオン君のお兄様だったようだ。どこか似ていると思った。


「いえ、元気になって良かったです」


 悠理は嬉しかった。自分の力で一人の人生を救うことができたのだから。


「ユウリ殿のおかげで、怪我をする前より、体の調子が良くなりました」


 ロイトさんはそう言って、自分の右腕をブンブンと振り回し始めた。


「わあ!!」


 悠理が感心していると、ルイ王子は悠里の肩に手を置いてきた。


「ユウリは凄いだろう? 私よりも光魔法に特化しているんじゃないかな?」


 自分のことのように自慢をするルイ王子。


「おい、なんでルイが自分のことのように喜んでいるんだよ」


 ルイ王子がしゃりしゃり出てきた瞬間、ロイトさんの態度が急変した。

 多分これがロイトさんの素なのだろう。


「兄上、殿下に対してその口調はどうかと……」


 すかさずレオン君が注意するが、ロイトさんはそんなのお構い無しだ。


「今更ルイを殿下として敬えるかよ。ただでさえ、親父がこいつを自分の養子にしようと奮闘してるんだぜ? もしかすると、レオンのお兄ちゃんになるかもな」


「それは本当ですか!? 殿下のような武術に優れた方を兄に持てるなんて、私、とても嬉しいです!」


 いやいや、レオン君はそれはないと思うよ。なんたって、ルイ王子は第一王位継承者なのだから……。


「おいおい、レオン。お兄ちゃんは俺だけで十分だろう?」


「ヘマして、右腕を食い千切られるような兄では、頼りないです」


 レオン君がロイトさんにピシャリと言い放つ。

 ふと悠理の脳内に疑問に思い浮かび、隣のルイ王子に尋ねてみた。


「どうして、弟のレオン君が次期騎士団長なのですか?」


「それはね……ロイトが次期将軍に選ばれるからだよ」


「将軍?」


「ああ、騎士団長率いる騎士団は王族を守り、将軍率いる軍は国を守る。じゃないと、守りが一方に偏ってしまう。それに現将軍がもうすぐで引退することになっていてね、その後継者に選べれているのが国で一番強いロイトなんだ」


「なるほど……では、そんなロイトさんがどうして魔の森で魔物退治を?」


「人数が足りないからと、第二騎士団の連中に同行していたらしい。それで、偶然にもワイバーンと出くわしたわけだ。運がいいのか、悪いのか」


「おいおい、何二人でイチャイチャしてるんだよ。俺も混ぜろ!」


 物凄い勘違いしたロイトさんが、会話に混ざってくる。


「イ、イチャイチャなんてしてません! そうですよね、ルイ?」


 悠理は全力で否定し、隣のルイ王子に確認する。が、とても嬉しそうな笑みが返された。

 い、嫌な予感……。


「ねえ、ロイト? 私とユウリは恋人に見えるかな?」


「はあ!? 何を言っているんだ、ルイ!! ま、まあ、ユウリ殿のような素晴らしい女性なら俺も大歓迎だが……」


 イヤイヤ、ちょっとそこの人、可笑しくないですか? こんな地味でブスな女が、そこらの女よりも見目麗しい男とお似合い? あなたの目、大丈夫? ちょっと腐ってるんじゃないですか!


「ロイトも分かってくるんだね。きっとお父様も喜んでくれる」


 待て待て。なんでそこでお父様が登場してくるの? いろいろ飛ばしすぎでしょう! 


「ルイとユウリ殿か……俺は大歓迎だ!」


 そこの人、賛同しない!! 誰かヘルプミー!!


「兄上、今日はユウリ殿にお願いしたいことがあったのではないですか?」


 悠里の魂の叫びが届いたのか、レオン君が話をガラリと変えてくる。


「おっと、忘れるところだったぜ。回復魔法に特化しているユウリ殿にお願いがあったんだ。ユウリ殿、ぜひ、次の魔物討伐隊に加わってくれないか?」


「え……でも、私の一存では……」


 悠理はそう言って、ルイ王子に視線を送る。


「うーん、なるべくユウリを危険な目に遭わせたくないのだが……仕方ない。私も同行するか……」


 え? 第一王位継承者様が魔物討伐隊に加わっていいの? 危なくないか? 


「おぉ!! ルイも加わってくれるのか。なら、安心だな」


 そこの脳筋! 止めなさいよ! 一国の王子様が魔物討伐隊に加わって怪我でも負ったら、どうするのよ! 

 悠理は、最後の頼みの綱であるレオン君に視線を送った。


「では早速、陛下と父上に相談して来ます」


 レオン君は、優雅にお辞儀をして部屋を後にした。

 って! レオン君も止めなくてどうするのよ!! 


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