3話.真の踏み台は種族を越える! 見よ、あれが踏み台だ!
ちょっとずつ更新とは何だったのだろうか。
でもしょうがないよね、ブクマ増えてるとついつい書いちゃう作者なんだ。すまない。
読んで下さり、本当にありがとうございます。
今回、視点変更を試してみました。分かりにくいようでしたらお伝えください。書き直すかもしれないです。
「フミシロ! あんな所にゴブリンの大群がいるよ!」
移動を始めて、数分語、唐突にアリサが言葉を発した。
「うん……? 確かにいるな」
さっと見るだけでもそれは大群と呼べる数なのが分かる。
「ゴブリンは群れて行動する種族! 単体での戦闘能力は確かに低い! だが、彼らにはそれを補って余りある程の種族としての強さがある! それは数! ゴブリンが集団戦に強いのはもはや常識! どうしようフミシロ! このままではこの近くの村が襲われてしまう!」
確かに、前方のゴブリンはこの平原を埋めつくす程の数だ。このままでは、この近くの村には永久に明日が来なくなる。
「確かにそうだ。だが、良く見て見ろアリサ。アイツ等、何か困っているようじゃないか?」
「え……? 確かに、困っているように見えるね」
困惑しながらも、頷くアリサ。
……ふむ。ちょっと話を聞いてみるか。
だが、ゴブリンはれっきとしたモンスター。正面から馬鹿正直に行っても攻撃を仕掛けられるだけだろう。避けられる戦いを避けるのは踏み台の定め。
良し、あのスキルを使うか。
「せええええい!」
「そ、それは巨大化! 細胞分裂を高速で繰り返す事で、一時的に自身の体積を膨張させる技ね! この技は完全なフミシロのオリジナル! 子供の時から、父さんに生物学などの学問を教えてもらっていたフミシロだから出来る妙技よ! 野生において大きさとは強さに直結する! つまり、今この瞬間フミシロは、ゴブリンの王とゴブリンに誤認させる事に成功した! 流石ね!」
オレの狙い通り、ゴブリンの群れはオレに気付くなり平伏して来た。流石はオレの踏み台スキルだ。その効果は絶大だな。
「よう、お前達、何があったんだ?」
一時的に、普段の五倍の高さになった視点からゴブリン達に問いかける。
「ゴ、ゴブゴブゴブブ」
「ああっ! しかしダメ! フミシロはゴブリンの話を理解出来ない! 何故ならゴブリン語を理解するのは、踏み台に求められるスキルじゃないから! ダメだ! このままではゴブリンの悩みは解決されないし、近くの村も崩壊してしまう! 正に踏んだり蹴ったり!」
ふっ……。甘いな、アリサよ。
人間とは、進化する物だ。踏み台も、それと同じ。進化無き生物に明日は訪れないように、進化無き踏み台にも明日は無い。確かに、今までのニーズに答えるというだけならば、ゴブリン語を理解する必要は無かった。だが、本物は常に先を見据える。時代を先取りしてこそ、真の踏み台だ。
「ゴブゴブゴブー」
「そ、それはゴブリン語!? まさか、フミシロが話せるなんて……! 私は今、進化を目撃したのね! それは一つの奇跡! この感動を何と言って表せばいいの!? 言葉なんかじゃ、とてもじゃないけど言い表せない!」
「ゴブゴブゴブ……。ふむ、どうやらコイツ達は飯が無くて困っているようだな」
「成程、確かにこれほどの群れなら食料には困ってしまうね」
「コブゴブゴブブ!」
……何? 食料が無いから今夜村を襲う予定だと?
それはヤバいな。物語というのは、読者が居て初めて意味があるのだ。村が減るというのは、そこの住民が減るという事。とてもじゃないが、その襲撃は感化出来ないな。
「お腹が減っているなら、フミシロが森から食料を集めて来たらいいんじゃない?」
アリサ、それは出来ない。
少し考えれば分かるだろう。この人数が満足出来る食料を集めるには、森中の食材を集めてくる必要がある。それは自然破壊レベルになってしまう。
自然破壊はダメだ。踏み台から悪役にクラスアップしてしまう。それはオレの望む所では無い。
だが、襲撃も見逃すわけにはいかない……。よし、決めたぞ。
「縮小化!」
「ああっ! そのスキルは対象の細胞を縮小する事で体積を小さくするスキル! ゴブリンが見る見るうちに小さくなっていく! 成程! 確かに小さくなれば一人当たりの食べる量は減る! つまり食料問題は解決する! 流石ね、フミシロ!」
これで、万事上手くいくだろう。オレは踏み台だ。たまには、モンスターの手助けをするのもいい。
……ん? ゴブリン達が何か言っているな。
「ゴブゴブゴブ」
オレが魔王様だって? おいおい、馬鹿な事を言うなゴブリン。
「オレは、踏み台さ」
そう、オレは踏み台だ。さあ、勇者決定戦の会場に急ごう。
アリサと共に、音速でその場から離れた。
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オレの名前はアキラ! 地球で勉強してたら突然、謎の光に包まれて、そこで美人な女神様からチートスキルを貰ったぜ!
このチートスキル、剛力は凄いぜ! 何と言っても、パンチするだけで木を倒す事が出来るんだからな!
そして、もうすぐ勇者決定戦だぜ! 勿論、エントリーしたぜ! だって、オレより強い奴なんている訳ないからな! オレが勇者になるんだ!
さあ、試合開始が待ち遠しいぜ。
……ん? 黒髪のペアが受付に向かったな。黒髪とは珍しい。この世界では色の付いた髪の奴が多いからな。
まあ、余り戦えなさそうな雰囲気の美男美女だ。細身だし、筋肉もなさそうだ。警戒に値しないな。記念に応募したとか、そんなんだろう。だからといって、戦う時になったら手加減はしないけどな。
あーあ、早くトーナメント表が発表されないかなー。早く始めようぜ。
どうせ、オレが優勝するんだからさ。