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人は他人から見ると化け物に見える。これは、相手を自分の傷ついたレンズを通して見るので、歪んで見える。見られている相手も、自分をよく見せたり、嘘をついたり、気分、体調によっても、色々と変わる。これで、レンズを通して見た相手が歪まずに居られるだろうか。
だが、まあ、互いに歪んでいても人間関係は続けられる。歪みあって笑ってられる。その点は問題ない。
ただ、問題は断ち切る時だ。この時、我々は、今までの歪みのツケを一気に払わせられる。 契約によって、下手に合理性があるとなおさらだ。まあ、色々言ったが一言でいうと、
「たすてけくださーいー!!」
「四中、てめえ、今頃辞められると思ってるのかよ!」
僕がこの企画を下りたいとプロデューサーさんに直談判した時、僕にとって味方だったものたちが敵に回った。
つい5年前まで僕はニートであった。キングオブニート! などと今どきの自虐的な自己紹介をしたい訳ではなく、まずは、この大前提から物語を始めなければならない。僕は貧しい4人家族の末っ子として生まれた。父親は居なく、母親はシングルマザーとして僕たちを育ててくれた。日曜日も遊びに連れて行ってもらえない僕はテレビが大好きだった。
ある日、テレビで、イレブンバックの岡田さんという芸人を初めて見たとき、僕は一大決心をした。
「僕、お笑い芸人になろう、そして、岡田さんみたいな人になりたい!」
僕が19歳の時、夢のチケットを掴むチャンスが出てきた。岡田さんの冠番組、『ちょいイケ』のメンバーを募集するオーディションがあったのだ。僕は母親にろくに説明もせずに東京に上京した。オーディション当日、岡田さんの前で自己アピールした時は緊張と感動で涙でぐずぐずで・・・・・・。そんなことより、僕の虐められた惨めな学生時代の話が聞きたい? それはプロデューサーさんが編集してくれたチョイイケの番組で出てるからそっちを見てよ。
とにかく、僕は、ニートから一点、番組の企画オーディションで素人性が評価されてテレビタレントになったのだ。なったは良いけど僕は芸が出来ない。プロデューサーさんから『素人キャラ』として売り出すよう指示された。僕は素人という一見欠点がアピールポイントなのだ。
それからしばらく4年くらいは、番組の企画に出させてもらったり、高速道路のサービスエリアで店を開いたり色々していた。
だけど、サービスエリアも終わったところで、プロデューサーさんから新たな企画を言い渡された。
「幽霊屋敷に一年間住んで幽霊と仲良くしろ」と。既に幽霊屋敷にいた過去4人の持ち主が変わったが、全員が一ヶ月と経ず首をくくっていると。
「僕の体重で首をくくったらロープくくりつけた天井が抜けて、家主に怒られちゃいますね」とか笑って言ったら、
「手放し物件でもらうときにむしろお金をもらったから大丈夫」
だなんて、真顔でプロデューサーさんが言うもんだから、僕はもう脂汗がタラタラと床に垂れちゃって。
今日はさっそく屋敷に行って一体残った死体を回収して、清掃しろなんて、僕はもう番組を降ろされていて、だから、こんな嫌がらせみたいな仕事をさせられてるんじゃないかと思って。だけども、我慢して屋敷に行ったら、中学時代にやってたクロックタワーって、洋館に出るサイコパスの話思い出しちゃって、もう、怖くて。
「わかる、わかる~」
「戻って、プロデューサーさんに抗議したら、もう、辞めるなら、お前なんていらんって」
「それで、逃げてきたんだ~」
「あのさ、ほんっとに言いたいことあるんだけど一言良い?」
「いいよ?」
僕は吸えるだけ空気を思い切り腹の中にため込んだ。ほこり臭い匂いにむせた。
「なんで、独り言なのに、相づちが返ってくるわけ~~~~~!?」
「だって、ここに私がいるから、聞いてあげないとと思って」
「あーあーあー聞こえない~!! 聞こえない!! あーあー!!」
聞こえる筈がない。ここは孤独の洋館。なぜか、プロデューサーさんから逃げて来たら、また、洋館に戻っていたのだが。幽霊・・・・・・アレなんているはずがない。
「聞こえるよ、私四中さんの声がちゃんと、だから安心して」
「安心なんか・・・・・・できるか~~~~!!?」
漂ってくる声をかき消すようにジタバタと床を叩いた。それでも少女は見えたままだ。
「四中さん、まな板の鯉みたい、可愛い」
うっせーばかーしねー、ありったけの声を発して地面を叩いた。床の木がミシミシと音を立てたが、それでも叩いた。さらに叩くと手が痺れてきた。
「あ、床が、危ない!」
「手がいてー!!!!」
わめいた瞬間、手の感覚がなくなった。いや、これは感覚がなくなったわけではない。床が抜けたのだ。-死ぬ。僕は落下した。
「四中さん!」
差し出された白い手を僕は・・・・・・無視した。
僕の人生はここでおしまいだ。企画からも見放された僕に居場所なんてない。
僕は浮遊感に身体を上に押し上げられながら、地面に、ん? 上に押し上げられて?
僕は僕の身体を包み込む感触に気付いた。企画中に他の芸人さんの悪口をオブラートに包んで言うとかそういう話でなく、いや、下手なたとえ話はやめよう。僕は助けられた。僕を包む感触は上に向かって押し上げられた。僕の身体も上に向かって肉を垂らして持ち上がる。
「重い~」
「失礼だな!」
「でも、羨ましいです」
彼女に床のある所に降ろされた。彼女の影のあるように見えた笑みはこの洋館の薄暗さのせいだろうか。
僕の目線に気付いて彼女の口角が上がる。
「誰にも必要とされていない人が集まる洋館へようこそ! すいません、もっとキャッチーな呼び方あります?」
幽霊に出会ったという事実よりも、僕はこの言葉に足が震えたことは言うまでもない。
◇
あれから三ヶ月が経った。
「四中さんって芸人さんなんですよね、じゃあ面白いことして下さい!」
黒髪ショートカットの毛先だけ、少女が僕に歩み寄ってくるのに合わせて揺れた。小ぶりな鼻と柔和に上がった口角は15、16歳を思わせる少女の体躯より大人びて見えた。
改めて見ると可愛い。
「よーし、じゃあ、とっておきのギャグを見せてやるよ!」
僕は頭の前に腕を伸ばした。最初は映画「ジョーズ」のイメージで、忍び寄る恐怖を予感させるように、
「ずーずん、ずーずん、ずだだだだ、工藤静恵です」
決まった。渾身のギャグ。だけれども、なぜか、彼女は白けてるでもなく、目を丸くしていた。もう一度やった。
「ずーずん、ずーずん、ずだだだだ、工藤静恵です」
やっぱり目を丸くしている。もう一度。
「それ、なんですか?」
「工藤静恵だけど」
「工藤静恵?」
幽霊はやはり芸能界に疎いようだ。それなら、
「ジョーズは分かるだろう?」
「じょーず?」
英語に疎いのか、幽霊だからなあ。
「鮫だよ、鮫! 見たことあるだろ?」
「さめ?」
「おいおい、実物はなくても、テレビで見たことあるだろ?」
少女は俯いた。
僕はこの屋敷を改めて見回した。そういえば、沢山のホコリをかぶっていながらも高級であったことを伺わせる家具が四方に散らばっていたのに、この屋敷には一台もテレビがなかった。
「父、テレビが嫌いなんです」
今時随分と堅物な父親だと思った。
「父親が亡くなられたのはいつ頃?」
「40年前です、つい最近ですね」
少女は照れくさそうに言った。
40年前ではテレビの普及率もそれほどではないだろう、たぶん。だが、その時代にテレビに対して、悪いイメージはあまりついていなかったと思うが。ボンヤリとしか時代をイメージ出来なかった僕は話題を逸らすことにした。
「ところで、前も言ってたけどさ、洋館のさ、アレ」
少女は一瞬ぽかんとしたが、目を輝かせて頷いた。
「誰にも必要とされていない人が集まる洋館へようこそ! ですか?」
「やめろ、その名を口にするな!?」
「私も気に入ってなくて、もっと短くて意味も伝わる名前が良いと思うんですけど、役立たずの館、とか? あれ、四中さん?」
僕はうずくまって口撃に耐えていた。やはり、幽霊だ。人の心なんてありゃしない。
「まあ、でも、名前よりも先に解決しないといけないやっかいな問題がありますけどね」
問題? これ以上さらにやっかいな問題があるのか。もう沢山だ!
「この屋敷、取り壊されるんです」
「え?」
「聴いてなかったですか? チョイイケの企画も破綻して、洋館が無駄になったから、取り壊して新地にして、社員の保養所を建てようって計画らしいです」
取り壊し? 本当にそんなことしていいんだろうか、それより、
「どうして、チョイイケの企画が破綻したってお前知ってるの? テレビもないのに」
少女は薄く微笑むとポケットからスマホを取り出した。
「僕のスマホ勝手に! でも電池なんてとっくに切れてるはずだけど?」
少女が電源スイッチに指をかざすと、画面から灯りが漏れた。昼でも薄暗い洋館で、灯りがともるとまるで蛍の光のようだった。
「べ、便利っすね~、幽霊って」
「でしょでしょ、四中さんもどうですか?」
「え? 僕にもできるの?」
「はい、ついてきて下さい」
僕は少女の後をついて行った。スマホが使えれば、アプリゲームも出来るし、無料の漫画も読める。小説なんかも読めば頭が良くなるかも。自分の名前をネットで検索して自分の有名具合を試す、エゴサーチも・・・・・・。
「やっぱりいいや、スマホ、お前にやるよ」
「もらっちゃって良いんですか! やった~!」
飛び跳ねて喜ぶ少女。所有権を少女に譲って僕は安堵する。確かに、この洋館は素晴らしいかもしれない。不気味な噂で誰も近づかない洋館。あふれ出す情報も電池が切れたスマホみたいにシャットダウンできる空間。いつの間にか、湿り気のある空気や、昼でも夜でも薄暗い洋館に僕は愛着を覚えていた。
「そういえば、いつになったら僕は君を名前で呼ぶことができるんだい?」
僕の問いかけに答えず、少女は僕を引っ張る手の力が強まった。幽霊は冷たいと聞いたものだけど、伝わる体温は少し冷え性なくらいで、僕とさほど変わりがなかった。あれ、おかしいな? 僕は、暑がりでサービスエリアで働いていた時は、ファンの方から冷え込みの激しい冬にも関わらず暖かいですね、なんて言われたもんだけど。
「ここです、ここで靴を脱いで下さい」
少女は静かに言った。スマホの電源をつけるなんてもう感心がなくなってしまった僕だけど、折角なのでついて来た訳だが、ここは・・・・・・。
「懐かしいなあ、丸い穴、僕、三ヶ月前にここで暴れて床をぶち抜いたんだよね」
目の前に広がる大柄な大人でもすっぽりと入る大きな穴。下を見ると、地面が見えない。穴に身を寄せて、底を見ようと凝視する。
「四中さん、もっと前に進んで下さい」
「何、ここで修行でも始めるの? 修行はやだなあ、僕、ずっと帰宅部だったから、運動部のノリとか嫌いで・・・・・・」
「早く、前に!!」
トーンの上がった声が響いて僕は身を竦ませた。怒っている?
「どうしたの、怖い声あげて、ほら、もっと笑ってよ」
「笑えないです」
少女は四中を睨んだ。少女の目はつり上がっていた。
「四中さんじゃ笑えないです! 少しも笑えないんです!」
少女は僕に詰め寄った。静かな歩みに僕はたじろいだ。
「どうして、そんな酷いことを言うの?」
僕が詰め寄ると少女は膝をついて泣き崩れた。
「だって、四中さん全然面白くない」
よけいなおせわだよ! いつもだったらツッコんだが、声がでない。僕はなんで声がでない? 悪いと思っている。誰に? 少女に?
「四中何やっとんねん」
野太い男の声が聞こえた。だが、なんだろう、聞き覚えがある。
「四中、俺や、お前の大好きなプロデューサーや!」
プロデューサーさん? どうして? あと、なんで関西弁? 関東の出身の筈だけど。
「いや、実はな、この前の企画、あれ、危険すぎるし、問題だろって上から詰められてな、追い出されてしまったんや」
やっぱりあの声だ。厳しいながらも優しかったプロデューサー。最後は僕が逃げ出して駄目にしちゃったけど。僕はにじんだ涙を隠そうともしないでプロデューサさんを探した。
「ここや、四中!」
「プロデューサーさん!?」
彼は穴の底に居た。今まで、底が見えなかったのに、見えてしまえば、4階ほどの高さだった。僕はどうして、こんな穴に怯えていたんだろうか。
「それでな、四中、この穴に飛び込め!」
「はいっ!ってえええ!? どういうことですか? 僕に死ねってことですか?」
僕の必死な訴えはプロデューサーさんの高笑いでかき消された。
「違うわ、新しい企画や、脱走した四中、洋館に籠城、転落、幽霊の呪いか、って感じや、視聴率とれるで!」
手を叩きながら喜ぶプロデューサーさん。僕は涙が枯れて声もガラガラで訴えていた。
「視聴率がとれたって、僕が死んだら意味ないじゃないですか!?」
彼は真顔になった。
「意味あるやろ! 視聴率がとれたら! それ以外何があるんや?」
僕は顔がこわばってそれ以上何も言えなくなった。
彼はその様子を見て笑うと、優しい声音になって、子どもに話す親のように語りかけた。
「冗談や、ほれ、見てみい、底にマットが敷いてあるやろ」
彼が指し示す先を見ると確かに他の焦げ茶色とはトーンの違う黄色いマットがしいてあった。だが、学校の体育につかうような薄さで、とても僕の体重を支えてくれるとは思えない。
「リアルティは最低限守らなきゃいかん、でもな、命までは取りはせんて」
方言が乱れてくるのに合わせて、言ってる内容も無茶苦茶になってきた。
「僕は飛びません!」
「また逃げるんか! 四中ああああ!!」
怒声が僕の背中を刺し貫いた。僕は思わず直立不動の姿勢になった。
僕は・・・・・・また、逃げるのか?
「四中さん待って!」
幽霊の声が僕の背中越しから伝わる。プロデューサーさんには、無理だけど、この子には強気で当たれる。
「なんだよ、散々面白くないって言って、どうせ、君も僕が死ねば良いと思ってるだろ!?」
「そんなことは・・・・・・思ってたけど・・・・・・」
思ってたんかい。僕はまた床に膝をついた。
「でも、それは、四中さんが面白くなくて寂しくて、私の仲間になってもらおうと思ったからで!」
また胸に突き刺さる。面白くない。僕がうなだれると、少女は見て慌てる。
「でも、四中さんが面白くなれば、私、四中さんが人間でも良いとおもう!」
励まされているのだが、馬鹿にされているのか分からない言葉で僕はゾンビのように脱力仕切った。僕はユッタリ足を持ち上げた。
「辞めて、四中さん! 死なないで!」
死ぬつもりは・・・・・・ない。まだ、こんなところで死にたくない。いや、死にたいのか?
「なんや、四中!? やる気になったんか!?」
下からヤジのような声が響く。
「うるせえなあ、このカスプロデューサーが! ない頭捻って思案してるんだろうが!」
「何やと!?」
プロデューサーは顔を真っ赤にした。
「お前、折角俺が有名にしてやろうと、素人のお前に知恵を絞ってやっとるのに」
「いらねえ、知恵なんかいらねえ!」
僕は穴に向かって大声を出していた。僕は僕だ。芸人の四中だ。
僕は振り返って彼女の目を見た。彼女は驚いて身をのけぞった。
「四中さんて、結構真顔だと怖い目をしてるんですね」
「君の名前を教えてくれよ」
「・・・・・・私を笑わせたら、教えて上げる」
僕は穴に向き直った。
「約束だぞ!」
見せてやる、僕の全力のギャグ! この三ヶ月間、一度も心から笑ってくれなかった彼女のために。
「見ててくれよ、少女ちゃん」
この言葉を最後に僕は穴に飛び込んだ。いや、飛び込むまでは僕の仕事だったけど、落下してからは僕は無力だった。重力に従って僕は落ちていく。どこまでも、どこまでも、落ちていく・・・・・・。触れてくる風の肌触りが僕に伝えた。もうすぐ、お前は死ぬよと。
僕は閉じていた目を見開いた。少女の顔が見れた。固唾を呑んでいる。
のまれるな、飛び出せ、ギャグ、ギャグ、ギャグ。腹の中に入った恐怖心を笑いへ変えろ!
「おっぱっぴー!」
少女の目が点になった。やっちまった。僕の人生は最悪だった。やっと絞り出した、心からのギャグ。それがまさか、他人のギャグなんて。何が平和だ。くそくらえ。
「死ぬのに平和ってシュール-!!」
少女の口角が上がった。彼女は笑った。笑い者になったのだろうか、いや、僕は初めて人を笑わせた。僕の力で。僕は真っ逆さまに落ちながら、歯を噛みしめて歯が削れるのも構わないまま、僕は幸せを噛みしめた。
あれ、違う、笑わせたんだから、彼女の名前を訊かないと。
浮遊感で頭が揺れる中、彼女の顔を見た。そのとき、僕の目に飛び込んだ、彼女の目尻は・・・・・・。
元々真っ暗だった洋館はさらにただの闇となってどこまでもどこまでも続く闇の中へ落ちていった。
◇
あの日は、夢だったのでは無いかと今も思う。僕は落下した後、病院で目を覚ました。栄養失調だったらしい。洋館の中で倒れていたのを偶々見かけた人が救急車を呼んだらしい。献身的な治療で身体は元気を取り戻した。だが、あの日、僕、四中以外は誰もいなかったらしい。プロデューサーは行方不明だった僕を見つけると思い切りげんこつをして抱きしめた。僕は一応涙を流して周りの期待には応えたけど、僕の心にはあの少女の笑顔が残った。あのとき、少女は笑ってくれたけど、本当に笑ってくれたのだろうか。
僕はスマホを無くしてしまったので、しょうが無くコンビニの公衆電話を使った。
「黒井か、久しぶり、今何やってるん? アイドル? そんなんいいから、俺と一緒に・・・・・・」
-あれから、数ヶ月、僕はお笑い芸人を本格的に目指した。今度は相方と一緒に。僕の足りないところを補ってくれる高校時代の同級生の黒井を誘って、一緒にお笑い芸人を目指すことにした。黒井は最初冗談だろ、なんて笑ってたけど
「本気やで! 僕、お笑いのプロを目指すわ!」
今までの僕は素人のよんちゃん、でもこれから僕はプロを目指す。今までは素人だけど頑張っています、というのを売りにしていた。でも、これからは違う。頑張るのは当然、だから、
「頑張りますので応援宜しくおねがい・・・・・・」
僕は口を押さえた。シャッターがまばゆいばかりに反射していたのが止むと周りの報道陣はキョトンとした顔をしていた。癖って治らないなあ。
「じゃあ、気を取り直して今から新しく考えてきた一発ギャグやります!」
僕は腕を大きく上に上げてもがくようなポーズを取った。あの日、洋館の穴へ落ちながら僕が考えたギャグだ。
あの少女はたぶん、本当には笑っていなかった。当然だ。他人から借りたギャグなんかで笑いをとれる筈がない。彼女には気を遣わせてしまった。
いつか、あの少女を本当に笑わせる日がくるまで、僕はもがき続けたいと思う。
だから、皆、歪んだレンズで僕を見て欲しい。歪んで歪んでその先で、もし、一瞬でも輝いて見える時があったら、それが真実だと思うから。
・・・・・・あと、すいません、受けなかったんで、もう一発、新しい一発ギャグ即席でやっていいですか? 幽霊屋敷の話が訊きたい?
いや、それよりも一発ギャグをそこんとこどうぞ宜しくお願い致し-
元めちゃイケのさんちゃんが微妙に他人事に思えず書きました。
感想よろしくお願いします!