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【揺花草子。】(日刊版:2016年)  作者: 篠木雪平
2016年4月
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【揺花草子。】<その1528:人類の尊厳。>

 【揺花草子。】<その1528:人類の尊厳。>


 Bさん「動物と人間を分ける境界線はどこにあると思う?」

 Aさん「えっ?

     ・・・えっ・・・? なに・・・?」

 Bさん「だから、この世界に生きるたくさんの生物の中で人間だけが特別である理由だよ。」

 Aさん「人間だけが特別って言うとそれはそれで角が立たないか・・・?」

 Cさん「もちろんそうよ。

     我々は宇宙船地球号と言う同じ船に乗り合わせた仲間同士だからね。

     そこに本来特別も何もあるわけじゃない。

     言うなれば全ての命が等しく特別なのよ。

     我々は博愛と慈愛の心に目覚めるべきなのよ。

     全ての文明を投げ捨てて自然に帰るべきなのよ。

     我々が従うべきは光の恵みのみよ。」

 Aさん「なんか怪しい思想家みたいな発言になって来てますけど。

     けっこうな急進派ですけど。」

 Bさん「ま、それは冗談として、動物と人間の違いだよ。」

 Aさん「えっ・・・それは、言葉によるコミュニケーションとか・・・」

 Bさん「そう? 大型ほ乳類、例えばクジラやイルカなんかは

     高度に発達したコミュニケーション手段を獲得していると言われているよ。

     それは形態が違うだけでぼくらにとっての言葉と本質的には同じものじゃないかな?」

 Aさん「あぁ・・・じゃあ、道具を使うとか。」

 Cさん「うーん、それもイマイチね。

     高い知能を持つ動物の中には簡単な道具を使いこなすものもいるし、

     その中でもとりわけ賢い生き物は自分の意志で道具を作ることだってできるわよ。」

 Aさん「それじゃ、社会を構築するとか・・・

     あ、いや、でも・・・」

 Bさん「社会不適合者の阿部さんの口からそう言う言葉が出ると言うのは驚きだけど、

     阿部さんも気付いたと思うけど社会性と言うことで言えば

     アリやハチのような高度に統制された社会を形成する昆虫たちが存在します。

     そもそも大部分の脊椎動物はつがいとか子育てとかで

     社会性を備えているもん。」

 Aさん「イヤッ! いや・・・まあ・・・。

     じゃあ・・・うーん・・・。」

 Bさん「人間と動物の差を説明できない阿部さんはホント動物以下だね。」

 Aさん「ちょっ!! 酷くない!?」

 Cさん「ケダモノよね。」

 Aさん「それはニュアンスが違くなりますよね!!?」

 Bさん「人間が他の動物たちと異なるところ。

     それは、火を克服しているかどうかだと言えると思うのです。」

 Aさん「あぁ、なるほど、火ね。」

 Bさん「動物は本能的に火を怖がるよね。

     しかし人類はその歴史の中で、火を操る術を身につけてきた。

     その歴史は少なくとも20万年ほどは遡れるそうだよ。」

 Aさん「へえ・・・そんなに・・・!」

 Bさん「他の生き物がただ恐れ避けるだけの火。

     しかし人間は火を熾す技術を身につけ、暖房や調理、光源などの生活に用い、

     そうして高度な社会性を獲得するに至る。

     人類の歴史は水と火の歴史でもあるよ。」

 Aさん「うーむ。なるほど。」

 Bさん「その一方で我々の社会は高度化を極め、技術革新目覚ましく、

     最近では直接火を扱う機会と言うのはむしろ減って来ていると思います。」

 Aさん「え、と言うと?」

 Bさん「一昔前ならさ、一般家庭レベルで庭で焚き火をやったりだとか、

     いらないゴミを燃やしたりだとかしてたけど、

     最近はそんな機会はないじゃない?」

 Aさん「ああ、うん。」

 Cさん「たばこを吸う人はライターとかマッチとか使うでしょうけども、

     そうじゃない人はもうお料理の時にガスコンロを使うぐらいよね。」

 Aさん「確かに、そうかも知れません。

     ぼくも日常生活で火を使う機会なんて滅多にないですもん。」

 Bさん「さらに言えば、最近は調理もいわゆるIHクッキングヒーター的なアレで

     直火を使うようなガスコンロは少なくなって来てますね。」

 Aさん「まあ、そうですね。」


 Bさん「動物に対して絶対的なアドバンテージであった

     火を操る術を自ら放棄するなんて

     なんだか皮肉だよね・・・・。」

 Aさん「いやそう言うことではなくない?」


 なすに任せよ。


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「Meister's Brief」から自動転送

http://www.studiohs.com/28if/brief/2016/04/03.html


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