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【揺花草子。】(日刊版:2016年)  作者: 篠木雪平
2016年4月
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【揺花草子。】<その1526:有言実行。>

 【揺花草子。】<その1526:有言実行。>


 Bさん「今日は4月1日なのでウソをつこうと思いますよ。」

 Aさん「ウソをつくって言い切っていくスタイル・・・。」

 Cさん「エイプリルフールのウソは午前中にしかついちゃだめだって言われるわよね。」

 Aさん「ああ、そうですね。」

 Bさん「4月1日の11:59からウソの話を始めて、その話が終わったのが

     12:00を回っちゃったってケースは果たしてセーフかアウトか。」

 Aさん「えぇー・・・それは・・・難しい問題なだぁ。

     行為を始めた時間はまだ午前中で、

     完遂したのは午後に至っていると言うケースだよね。

     でもそれは、ウソとして話が成立したのが午後に掛かっているわけだから、

     どっちかと言うとアウトじゃないかな。」

 Cさん「そうかしら?

     行為が完遂するのが午後になるかどうかと言うのは実際のところ

     受け手に依存する事象じゃない?」

 Aさん「え、どう言うことですかね?」

 Bさん「例えばさ、大袈裟なやつになると、

     イギリスなんかでは4月1日の新聞にウソ記事を載せたりするんだよ。

     でもその新聞を読む時間は読者によってバラバラじゃない。

     朝読むかも知れないし、もしかしたら朝忙しくて時間が取れず、

     おシゴトを終えて帰って来て夜に読むかも知れない。」

 Aさん「まぁ・・・そうですね。」

 Cさん「こう言うケースでは、『新聞社は夜になってからウソをついた!』と訴えるのは

     あまりにも筋違いであると思うのね。

     それどころか4/1当日は読まずに翌日に読むかも知れないんだから。」

 Aさん「それは・・・まぁ。」

 Bさん「さっきの例でも、話し始めたのが午前中で、午前中に話し終えるつもりだったのに

     聞いてる人がやたらと話の腰を折って来たりとか、

     話を理解できず何度も詳しく説明してるとかしてるうちに

     気付けば12時を回ってしまっていた、と言うことはありえるじゃん。」

 Aさん「ふむふむ。」

 Bさん「そんな風に考えれば、『行為を始めた時間』、

     新聞のケースで言えば出版し世に頒布された瞬間だし、

     人と人との会話であれば話を始めた瞬間を以て

     ウソが午前中に放たれたものか午後に放たれたものかを確定していくのが

     論理的でないかと思うんです。」

 Aさん「うーん。確かにそれは筋が通る。」

 Bさん「こう言う議論を刑法分野では『実行の着手』と呼ぶらしいよ。

     さらには『未遂』に関する議論も必要になる。

     ウソをつこうとしたけど途中でやめたケースとかだね。

     『未遂』にも『障害未遂』と『中止未遂』と言うのがあって、

     刑法上はそれらは概念的にしっかり峻別されてて・・・」

 Aさん「ちょっ・・・いや、あの、知らない言葉がわんさか出て来て

     ちょっと理解が追い付かないんだけど?

     と言うかなんでそんな話になってるの?

     いきなり刑法の話とか・・・」

 Bさん「あ、ごめんごめん。

     ちょっと本格的に街の国際バリスタ弁護士を目指そうと思って

     法学の勉強してるんだよね。」

 Aさん「いやどこのラビットハウスの店員さんだよ。

     夢が多すぎるってチノちゃんとかリゼちゃんに怒られるやつだよ。」

 Bさん「ま、それは冗談だとしても、法律の勉強はちょっとしてますよ。

     ロースクールとか進学したいと思ってるし。」

 Aさん「へぇ・・・そうなの?

     意外だなぁ・・・。」


 Bさん「ウソだけど。」

 Aさん「そこがウソかよ。」


 そう言うことを考え始める年頃ではある。


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「Meister's Brief」から自動転送

http://www.studiohs.com/28if/brief/2016/04/01.html


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