【揺花草子。】<その1468:泣いた赤鬼。>
【揺花草子。】<その1468:泣いた赤鬼。>
Bさん「今日は節分ですね。」
Aさん「ああ、うん、そうですね。」
Bさん「節分、すなわち節を分ける。
従って今日までのぼくらと明日からのぼくらは、
違うピリオドに存在していると言うことになります。」
Aさん「いやそんな大仰なやつか?」
Bさん「だってもう暦の上では明日から春ですよ。
逆に言えば今日が冬の最後の日ですよ。
去りゆく季節を惜しんだりしていい日ですよ。
この街で見る雪もこれが最後ねと寂しそうにきみが呟いたりする日ですよ。」
Aさん「いやそんなことないよ。
絶対この先1か月ぐらいの間に嫌んなるぐらい雪を見られると思うよ。
ぜんぜん名残惜しくないよ。」
Bさん「で、節分と言えば豆撒きです。
冷凍食品のグリーンピースとか買って来ようか?」
Aさん「なんで敢えて冷凍グリーンピースをチョイスするんだよ。
普通の煎り豆でいいだろ。べっちゃべっちゃになるよ。」
Bさん「まあ言ってもぼくらの街の習慣では煎り豆じゃなく落花生だけどね。」
Aさん「そうなんだよね・・・。」
Bさん「ともかく、迫り来る鬼共を駆逐するために
7.7mm機銃とか25mm三連装機銃集中配備とかを大量生産するわけだよね。」
Aさん「そんな掃討作戦に打って出るの!? 対空重視なんだ!!?」
Bさん「でもさ、正味な話、鬼たちは本当に人間に仇なす存在なのかな?」
Aさん「えっ・・・どう言うこと?」
Bさん「鬼と言うものは、もとは人だったかも知れない。
あるいは人の心に潜む怨嗟の念から生じたものとも言われるよね。
そう言う彼らはその内に相応しい恐ろしい形相をしているかも知れないけれども、
その心の奥底にあるのは人として生きたいと言う渇望なんじゃないのかな。」
Aさん「えぇー・・・そうなのかな・・・。」
Bさん「そんな鬼たちを、人間は、無下に『鬼は外』なんて言いながら拒絶するわけだ。
近づくな、不浄なものたちと忌避するわけだ。」
Aさん「いや・・・まぁ・・・。」
Bさん「鬼たちはあの恐ろしい形相に反して、
心では泣いていると言うのにね。」
Aさん「きみはなに鬼の友達かなんかなの?」
解り合えるかも知れない。
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