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【揺花草子。】(日刊版:2016年)  作者: 篠木雪平
2016年8月
230/366

【揺花草子。】<その1664:汚れつちまつた悲しみに。>

 【揺花草子。】<その1664:汚れつちまつた悲しみに。>


 Bさん「今日もカネの話をするよ。」

 Aさん「カネの話って言い方しないで? 薄汚く聞こえるよ?」

 Cさん「『それはぼくが得することなの?』が口癖の阿部さんらしからぬ物言いね。」

 Aさん「そんな口癖ないですけど!!? なに言ってくれてるんです!!?」

 Bさん「あのね、この前収録終わっておウチに帰る途中、

     いつものように近所のショッピングセンターで

     晩ごはんの買い出しをしていたんです。」

 Aさん「うんうん。」

 Bさん「小銭がなかったからやむなく大きなお金で払っちゃって、

     結果お財布の中は10円玉でいっぱいと言う状況に。」

 Aさん「あぁ・・・。」

 Bさん「でもね、よく見たらなんと、その貰ったおつりの10円玉の中に、

     やけにピカピカ光るものがあった。」

 Aさん「ピカピカ光る?」

 Bさん「なんと平成28年鋳造の10円玉ですよ。しかもそれが2枚。」

 Aさん「おぉ! そうなんだ!」

 Cさん「10円玉って100円玉に次いで発行枚数が多いらしくて、

     去年は2億枚くらい発行されたらしいわ。」

 Aさん「2億枚!? そんなに!!?」

 Bさん「そう考えると今年はもう半分以上過ぎてるわけだから、

     まあ日常生活で今年発行の硬貨に出会うことも

     そりゃ当然あるだろうって感じではあるんだけど、

     でもやっぱりそのインパクトたるや生半可じゃないわけ。」

 Aさん「生半可じゃないんだ?」

 Bさん「生半可じゃないよ!

     だってめちゃくちゃピカピカしてるんだよ?

     もうこれ金貨じゃないのかってぐらいピカピカだよ?

     むしろキレイすぎて偽造硬貨なんじゃないかって疑っちゃうぐらいだもん。」

 Aさん「そんなにか!!」

 Bさん「でね、この話には続きがあってさ。」

 Aさん「続き?」

 Bさん「さっきも言ったけど、お買い物のおつりでお財布が10円玉で

     いっぱいになっちゃったんだけど、

     良く見たらそのおつりの中には平成28年発行のやつの他にも、

     なんと平成27年発行のもの、さらに平成26年発行のものも交じってたの。」

 Aさん「へぇ! それはすごい偶然。」

 Bさん「平成28年の10円玉はさっきも言ったように

     贋金じゃないかってレベルでピカピカだったけど、

     平成27年のやつは少しくすんでて、輝きはだいぶ失われてしまっていた。」

 Aさん「あぁ・・・。」

 Bさん「そして平成26年のやつはもうすっかり輝きを失っていて、

     良く見るこげ茶色の物体と化してしまっていたよ。」

 Aさん「うーん。」

 Bさん「こうやって時を経るごとにいつの間にか初めの頃の輝きを失い、

     薄汚れてくすんで行ってしまうんだなあって思った。」

 Aさん「まあ・・・それはそうかも知れないね・・・。」


 Bさん「きっと10円玉を手にした人々の欲望の数だけ

     汚れていくんだろうね・・・。」

 Aさん「なにその表現!!???」


 穢れを溜めていく。


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「Meister's Brief」から自動転送

http://www.studiohs.com/28if/brief/2016/08/17.html


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