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【揺花草子。】(日刊版:2016年)  作者: 篠木雪平
2016年7月
212/366

【揺花草子。】<その1646:人間の素晴らしさは。>

 【揺花草子。】<その1646:人間の素晴らしさは。>


 Bさん「オリンピック目前ですよ。」

 Aさん「オリンピック目前ですねぇ。」

 Bさん「今回は・・・いやまあ正味なところ今回に限らないんだろうけど、

     オリンピック目前のこの時期になお様々な問題が噴出していますね。」

 Aさん「お・おぉ・・・」

 Bさん「さすがに競技場の建設が終わってないとかはないだろうけど、

     選手村の施設がどうとか、競技場の環境がどうとか・・・」

 Cさん「そもそもの問題として開催都市の治安とか気候とかの懸念もあるようね。」

 Aさん「うーん。」

 Bさん「そんな数多くの中でこの数週間オリンピック界隈を揺るがす話題として、

     選手のドーピング問題が存在します。」

 Aさん「あぁー・・・そうだね・・・。」

 Cさん「もう国レベルでドーピングを行ってて、

     その国の選手団丸ごとオリンピックから追放。なんて言う

     とんでもない事態も発生しているわね。」

 Aさん「そうですね・・・。」

 Bさん「オリンピック憲章がどうこうとか言うのはあんまり詳しくないけれども、

     そもそもオリンピックってのは人間の努力と鍛錬を尊び

     自らの力で人類の限界の扉をこじ開け新たなステージに進むことを

     称賛するようなマインドがあるのじゃなかったかと思う。」

 Aさん「それは、確かにそうだ。

     だからこそ、クスリの力で無理っくりその扉をブチ抜けようとする悪意を

     オリンピックは厳しく糾弾するわけでね・・・。」

 Bさん「その通り。

     その思想と言うか理想には全面的に賛成だよ。

     人間賛歌は勇気の賛歌だから。」

 Aさん「なぜに唐突なツェペリさん・・・。」

 Bさん「けれど、──これからぼくが述べる意見はきっと、

     多くの人が眉をひそめるような意見だろうと言うことは覚悟しての発言だけど、

     例えドーピングをしても、肉体改造をしても、

     その『記録』を叩き出したのは確かに人間であるわけだよね。」

 Aさん「えっ・・・えぇっ・・・いやそれは・・・。

     さっきもきみ自身が言ってた通りクスリに頼って・・・」

 Bさん「あ、うん、それは分かってるの。

     だからきっと多くの人には違和感を覚えるであろう意見だってことなんだけど。

     でも、例えばドーピングをガッツリやって、100mを8秒台で走ったとする。

     これはオリンピックの精神に照らして決して記録として認められないだろうし、

     世界中の人がその『結果』を悪しきもの、悪魔の所業、

     あるいは邪悪なる意志と見做すだろう。」

 Aさん「それは・・・そうだねぇ。」

 Bさん「けれども、そのような批判的な意見や精神を全く度外視したとすれば、

     100mを8秒台で走ったと言う結果は、あくまで数字上は

     人類が初めて到達した新たなステージであることは確かじゃないですか。」

 Aさん「うーん・・・。」

 Bさん「マインドとかエモーションが優先されるのは必然だし、

     人間賛歌を謡う以上それは当然だしあるべき姿なんだけど、

     客観的事実としての100m8秒台と言う記録。

     これはあくまでロジカルなものの見方に限れば、これはこれで価値があると思う。」

 Aさん「いや・・・まあ言ってることは解らないでもないけど・・・。」

 Bさん「だから、ぼくは考えたよ。」

 Aさん「え? なにを?」


 Bさん「もうなんなら

     『ドーピングしてる人リンピック』とか

     やればいいんじゃないかな。」

 Aさん「語呂が悪い!!!」


 皮肉ですよ。


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「Meister's Brief」から自動転送

http://www.studiohs.com/28if/brief/2016/07/30.html


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