いーりんしゅーれー!がじゅまるくん
いーりんしゅーれー
いーりんしゅーれー!がじゅまるくん
作 イソノ ゆきひろ
がじゅまるくんとうきょうへ行くのまき
ぼくらのすんでる
やまとの国の
はるか南のおきには、
てっぽう島とか、すぎのき島とか
うさぎ島とか、きかい島とかおさとう島
なんて、かわった名前の島がいっぱいある。
そんな島には遠い南の国にしかないようなじゃんぐるがあったり、
「はいびすかす」とか
「ぶーげんびりあ」なんていうむずかしい名前の花がさいてるんだって。
人があんまり入らないような
じゃんぐるのおくにはなん百年も
生きてるような大きなすぎの木や、
「まんぐろーぶ」なんていうふしぎな木がはえているんだ。
今日するお話しは、そんなふしぎなお花や木の中でも、とくにふしぎな大きな木、むかーし「りゅうきゅう」っていう国からつたわってきたっていう「がじゅまる」っていう木にまつわるお話。
この木にはむかしから、ケンムンっていう名前のようせいがすんでるっていうでんせつがあってね。
そう、きょうもケンムンの「がじゅまる」くんが近くに住んでるたった一人の友達の「ゆうすけ」くんを待って、つたのぶらんこをこいでいたの。
むかーし、テレビゲームとかなあーんにもなくて、外でとんぼをとったり、かけっこしたり、かくれんぼしたりするしかなかった時代にはね、「がじゅまる」くんにもたくさんのお友達がいたんだけど、ここ最近何十年かくらいは、みんなじゅくに通ったり、家の中であそぶことが多くなって、ずーっとがじゅまるくんはひとりであそんでいたの。
とってもさびしかった。
そんな時、都会から、おとうさんのしごとの都合ってやつでこの島にやってきた都会っ子の「ゆうすけ」くんは、生まれてはじ めてみる大自然ってやつがたのしくて島中をたんけんしているうちにがじゅまるくんと出会って、しぜんにお友達になったっていうわけなのさ。
「がじゅまるくーん。」あっ、ゆうすけだ。
がじゅまるくんは、はっとなって、ブランコからとびおりました。
「ゆうすけ。さい近、どうして来なかった。おれは、少しさみしかった。」うれしそうな顔をしてがじゅまるくんはゆうすけくんをみつめます。
そのしせんを見つめかえすことが出来ずに、ゆうすけくんは、うつむいたまま、小さな声で言いました。
「じつは、がじゅまるくん。とうきょうにまた帰ることになったんだよ。」
「ええっ。うそだろ。おれをおどろかそうとしてるんだろ。なっ、ゆうすけ。」
しばらくゆうすけくんはだまってから、こう答えました。
「本当なんだ。じつは父さんだけをのこして母さんとぼくだけが、とうきょうに帰ることになっちゃったんだよ。よく言う『たんしんふにん』っていうのうちでもやることになっちゃったんだよ。」
「ゆうすけだけのこれないのか?」がじゅまるくんは必死です。
「だめなんだよ。母さんがとうきょうにかえりたがっててさ。少しノイローゼっていうのぽいんだよ。」
「ゆうすけも、帰りたいのか?」もうがじゅまるくんは泣きそうです。
「ぼくもとうきょうには友だちもいるしさ。
もちろん、こっちの島にも友達いるし、がじゅまるくんとおわかれするのはとってもかなしいよ。
でもね、仕方ないんだよ。」
そこまで言われて、もうがじゅまるくんには何も言えません。
「だから、これぼくのたからもの。
がじゅまるくんにあげるよ。」ゆうすけくんは背中にかくしていたものをさし出しました。
「なんだこれ。」白いプラスティックで出来た小さな箱みたいなものはゆうすけくんの大事にしているゲームでした。
「ぼくだと思って大事にしてね。
じゃあね。がじゅまるくん。」
何度もふりむきながら、ゆうすけくんは行ってしまいました。
がじゅまるくんは何も言えずただその後ろすがたをいつまでもずっと見つめていました。
その夜、がじゅまるくんは一睡もしないで、一晩中こぐこともせずに、つたのぶらんこにすわって遠くの海の方を見ていました。
仲間のケンムンたちが心配そうによってきても、まるで石になってしまったかのように、うごきません。なかまたちもあきらめてそれぞれの木の上のねどこに帰ってゆきました。
そしてとうとう、東の空が白みはじめ、やがて朝がやってきました。海からのぼってくるうつくしい、それはそれはうつくしい太陽。だって、じゃまするものが何一つないんですもの。
じっとそのうつくしい太陽をまばたきもせずながめていたがじゅまるくんの心にその時きゅうに名案がうかびました。
「そうだ、おれもとうきょうに行こう。」
朝の太陽に心をあらわれたような気もちにがじゅまるくんはなりました。もうこうときめたら、なかまのケンムンたちがどう言おうとがじゅまるくんの決心はかわりません。
ゆうすけくんにもらったゲームとパイナップル一つをかかえて出発です。
その時がじゅまるくんのかたに、ぽんととびのってきたものがあります。ゆいいつのどうぶつのなかよしの、りすの『ちょろ』くんでした。
「ちょろくんも行く?」ちょろくんは答えるかわりに木のみをかりかりとかじっています。
「行こう。出発だ。」がじゅまるくんは右手を大きく空にむかってつき上げました。
ゆうすけくんのいる、みも知らぬとうきょ うという大都会にむけて、がじゅまるくんの大ぼうけんが今はじまったのです。
続きはまたのお話で。それでは、またうがみょーろ。
またうがみょーろ