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引きこもりの本質

 栗橋友康は日々広がっていく社会の崩壊模様をインターネットを通して見て、いた。

 国会の会期中に国会議事堂に不死者が乱入した、との書き込みがあった。

議員の9割がたが噛まれてしまったそうだ、国会は護衛艦に機能が移され、そこで議論の続きをやるらしい。

 憲法の解釈がどうので収拾がつかなくなってるそうだ。

”まだ、そこなの?”

その話を見た時の友康の反応だ。

 最初は不死者も救助しようとしている様子も有ったが、襲われるのが判ると誰も手を差し伸べ無くなったようだ。

 TVニュースでは相変わらず『国会が紛糾している』としか言ってないし、不死者に関する情報もセンセーショナルに喚いているだけだった。

 こういうとき映画やマンガだと、何故か都合良く銃器を入手出来たり、妙に戦闘に長けていたりするものだが、残念な事に友康にはどちらも不得意な分野だったりする。

何分にもネットや家庭内限定の内弁慶であるので、リアルな暴力のたぐいは苦手なのだ。

死ぬのは嫌だが、死んだ後に不死者のようになるのはもっともっと嫌だ。

 今、友康の手元にあるのは工作用のカッターとハサミ位……ここからどうやって身を守る武器を創れるのか。

友康がネットやニュースから入手している限りでは、不死者に噛まれると感染するらしい。

ならばある程度の距離から攻撃出来る、飛び道具が必要となってくる。

出来れば狙撃用ライフルが理想的だが、拳銃も無ければ弓も無い、どこで入手可能なのかも不明だ。

警察にはあるんだろうが、大人しく貸してくれるとは思えない。

逆に警察に行く前に、不死者たちに捕まってしまうのが落ちだろう。

 ジリジリと考えている時、窓から庭を見ていてふと思い付いた。

 自転車のタイヤチューブでスリングショットが作れるんじゃないか?

「いけるかも知れない」

 だが問題もあった、あの自転車を細工する為には、一旦屋外に出てから屋内に持って来ないといけないからだ。

不死者たちを刺激してしまうのは目に見えている。

「そういえば音に反応するってネットに書かれていたな……」

 なにか足留めできる方法を考えないと……

ふと枕もとの目覚まし時計に注目した、これを門の外に投げて、ベル音で引きつければいいじゃないか!

”俺ってば天才!”一人ほくそ笑んで、目覚まし時計を持ち玄関口に面してる2階の窓に行った。

 そして窓から道路に投げ、ベル音で不死者たちが引きつけられるのを待つ……待つ……待つ?

「ああ! 肝心の時間をセットしてないじゃん……何やってるの、俺……」

友康はいつものドジに嘆いてしまった。

 次に何かないかと考えたとき、台所にキッチンタイマーがあるのを思い出して持ってきた。

 今度こそは時間の設定を忘れない、ちゃんと1分後に鳴るようにセットしてから道路に投擲した。

そして階段を降り玄関ドアの傍に立ち、タイマーが鳴るのを待っていると外から「ピピピッピピピッ」とアラーム音が聞こえる。

 友康は極力音を立てないように玄関ドアを開け外の様子を伺うと、不死者たちは音を立てているキッチンタイマーの方に群がっていた。

”よしっ!”

 一応、自宅の門は閉まっているのを目視で確認し、友康は玄関先に出て自転車を玄関内にそっと運んだ。

 不死者は門を開けて中に侵入するという行為が出来ないのは解ってはいるのだが、もし襲われたらと考えてしまい心臓はバクバクしてしまう。

友康は深く息を吸い込んで気を落ち着かせ、まずタイヤからチューブをはずし、カッターで1メートル程に切り分け、中を切り開いて長いゴムの紐状にした。

それを頑丈そうな鉄の棒に縛り付けると、お手製の簡易スリングショットが完成した。

 手近な壁に向かってビー玉を撃ってみると、簡単に壁に穴が開いた。

 まだ威力が判らないのでとりあえず2階のベランダから撃って見ることにした。

そして父親の書斎に合った、文鎮替わりの直径5センチくらいの鉄玉を手に取り2階に向かう。

ベランダから見ると不死者は、口元から血を垂らしたまま、所在なげに自宅前の道路上をさまよっている。

 友康はその中の一人に目を付けた、170cm位で平均的な身長で中肉中背、どこにでも居そうな手頃な的だ。

 スーツを着ている事は着ているが、全体的に薄汚れて所々破れたり、血が乾いて張り付いてるのだろう、赤黒く変色したりしている。

表情は焦点の定まらない白濁した目とだらしなく開いた口。

「……多分、不死者だろ」

普通の健常者と間違えるのは嫌なのでテニスボールをぶつけてみた、当たっても反応は無くそのままフラフラと歩いている。

 不死者の特徴を全て備えているし、これなら大丈夫だろう……中学の時の虐めっ子に似てるし……

友康は良く狙いを定めてギリギリとスリングショットのゴムをギリギリと引いた。

「バチン!」

ゴムの縛り付けが甘かったのか、片側のゴムが外れて友康の顔を直撃した。

「ンがーーー!? 痛ぇーーーー!」

 お約束通りのドジに、友康は痛さで悶絶して転げまわった。

涙目になりながら、またゴムをちゃんと付け直し、今度こそと再び狙いを定めた。

「びゅん!」

 鉄玉は目標の不死者の頭に当たり、命中した不死者は崩れ落ちていった。

 本当は体の中央部分を狙ったのだが照準に問題が有るようだ。

やはりガイドレールを付けるなどして、照準を正確にする必用がありそうだ。

「カーテンレールを短く切って使おうかな……」

 後、ゴムを引っ張る方法を考えないといけない、今のままでは非力な友康ではものの5分位で腕が疲れてしまう。

それと弾が必要だが、鋼鉄製の棒と釘を縛り付けたものが作れそうだ。

 とりあえず身を守る武器は出来た、まだちょっと頼りないが、改良する時間はたっぷりとある。

 次は家中の窓を閉め雨戸も閉めた、何を辿ってやって来てるのか不明なのだが、不死者が集まる家とそうじゃない家がある。

恐らく不死者に集まられているのは、生存者が在宅してるのだろう。

この家に来ないのは、友康しかいないせいなのか?

色々と疑問に思うが、音を極力出さないように生活してるので、それのおかげではないかと思うことにした。

 戸締りを終えたら食料を集めておく、それと水の確保を考えないといけない。

飲み水ももちろん必要だが、トイレの水が一番困るらしい、出したまま放置する訳にいかないからだ。

コンビニなどのビニール袋に排泄して、口を縛っておけば匂いは漏れないが、いつかは処分しないとならなくなる。

 あとトイレの場所も考えないといけない、庭先にトイレ用の穴を掘る訳にもいかない。

この様子だと社会インフラの断絶も有るだろう、そうなるとまず水の確保に困ってしまう。

家中の容器に水を貯めて、あとは風呂に水を張っておく、これで2週間は大丈夫だろう。

 本当は濾過装置が欲しいが、ホームセンターにでも行かないと無理だ。

 電気もいつまで持つかわからないので、ろうそくなどを用意して置いた。

ずっと籠城する気はないが、判らない事だらけなのに、外をうろつくのは御免こうむる。

 それと脱出経路の確保だ、折り畳みのアルミ梯子があったので隣家の屋根とベランダに渡しておいた。

こうしておけば緊急の際に逃げ出すことが出来る、その先の事はその時に考えれば良い。

 隣家には幼馴染の俊彰がいるはずだが姿は見えない、自分と違って会社員だから出先にでもいるのだろう。

数少ない友人なので、気にはなったがまずは自分の事を優先する事にした。

「後は噛まれるのを防止する為の、防刃対策が必要だな……タオルでも巻いておくかな」

 次は残された時間を使って情報の収集だ、友康は再びパソコンに向かった。


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