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終焉のコドク  作者: 百舌巌


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37/67

集う狂喜

 前原達也は外科の診察室で保護した女子高生・佐藤優子を連れて戻って来ていた。

「それでは、もう一度、隊長に説明していただけますか?」

 佐藤優子を片山隊長の前に連れて来た。

「私はこんな風になる前に老人ホームにボランティアで行ってたんですが、変な人が一杯になって老人ホームに閉じこもって居たんです」

 老人ホームにはホーム職員が6名、ボランティアの学生が3名、老人たちが8名居るらしい。

動ける老人たちは近所の人たちが避難所に一緒に連れて逃げてくれたが、残ったのは自力では動けない老人たちばかりだった。

 そこで職員やボランティア活動の学生たちが一緒に残っていた。

「ある時、何人かの鉄砲持った人たちがやって来て、皆を脅し始めたんです」

優子は時系列を思い出すように眉間にしわを寄せている。

「貴女を連れまわしていた、あの3人組ですか?」

 片山隊長が尋ねた、銃を持った反社会集団がいるのはちょっと不味い。

「いいえ、違うグループです。 彼らは鉄砲を持っていて誰も逆らえなかったんです」

 話によるとリーダーは口のうまい男で、林上日義と言った。頭に赤いバンダナを巻いているのが特徴だ。

最初は協力するからとか言っていたのだが、食料が少ないと知るや豹変して水と食糧を、自分たちが管理すると言い出し、皆に自分たちの言う事を聞くように要求しはじめた。

「老人ホームの所長は、それは変だろうと言って、協力出来ないのなら出て行ってくれと言ったら、その場で射殺されてしまいました」

 いきなりの展開に、皆すくみ上ってしまい反抗する事も出来なかった。

そして、後に残された職員と学生は、男たちの慰み者にされたと言った。

 優子はそう言うと目を伏せてしまった。

 冨田看護師が優子の肩を優しく抱き、”この話はもういいでしょう?”と片山隊長に目で合図を送った。

「空から落ちて来た人が、ここに自衛隊が向かったと喋っていたので、何とか抜け出してここを目指して来ました」

 しばらくして落ち着いた優子が喋り始めた。

「空から落ちて来た?」

 片山隊長が聞いた。

「はい、自衛隊のヘリコプターが黒い煙を吐きながら、公園に墜落した時です。 その男性は老人ホームの樹に落ちて来たんです」

 優子が天井を見上げて思い出しながら言った。

「ああ、それ 俺らだ。 落ちて来た奴は増田機銃手だろう」

 東雲が答えた、増田が機外に振り落されるのを見たからだ。

「でも、皆さんと服装が違ってましたよ?」

 優子は達也の迷彩服を指差して言った。

「これは陸上自衛隊の官給品なんですよ、彼は航空自衛隊所属なので服装が違うんです」

 達也は所属や職種が違うと、着ている服装も違うのだと説明した。

「それで彼はどうなりましたか?」

 片山隊長が一番気になる点を優子に聞いてきた。

「容態が思わしくなかったのですが、老人ホームの奥の方に連れていかれて、それから見ていません」

 その優子の言葉を聞いて、片山隊長はマズイと直感した。

「ヤツラは自分たちのしている事が露見するのを恐れるあまり、増田を亡き者にしようとする可能性が高いですね」

 眉間にしわを寄せて小山が呟いた。片山隊長も頷いた。

 その後、優子に占拠している集団の武器を尋ねてみると。

 猟銃が6丁に拳銃が2丁。ボウガンが1つ、ツルハシが1つ、全員文化包丁を棒に括り付けて持っている。

 優子は弾の数までは判らないと答えた。

 そして、占拠している武装集団の人数は9名だ。

 銃は厄介だが所詮は素人の集団だ、訓練を受けた者の敵にもならない。

「どうやって脱出したんですか?」

 片山隊長が優子に尋ねた、見張りとかの警備体制を聞こうとしたのだ。

 優子によると、彼らに逆らうと独房と呼ばれている地下室に閉じ込められるらしい。

「逆らったの?」

 冨田は優子に尋ねた。

「……口でもしろと言われたので、嫌だと言ったんです」

 優子は見せしめに散々殴られた後に、地下室に閉じ込められてしまい、隙を見て逃げ出して来たのだった。

 だが、運悪く逃げ出した時に3馬鹿に遭遇してしまった、最初は親切を装っていたが直ぐに欲望ぎらぎらで迫って来た。

拒んで暴れたら縛られてしまい、そのまま病院に連れてこられて、冨田たちに出合ったのだった。

 そこまで話を聞いて片山隊長は決断した。

「話は判りました。 全員、装備を整えておくように、老人ホームの避難民救出と同時にこの反社会的武装集団を排除する」

「「「はい」」」

 その場に居た全員が答えた。

 非常時に人は簡単に堕落する、踏みとどまれるかどうかは、その本人の資質なのだろう。

人の親切心に付け込み、暴力を持って服従を強いる彼らを許しては置けない。

「本部への報告はどうしますか?」

 出川が無線機を指差して片山隊長に聞いてきた。

「増田の捜索中に間違って、やっちまったって言うだけさ」

 片山隊長が作り笑顔で答えるが、目が笑っていない、どうやら本気で怒っているようだ。

 出川も他の隊員たちもニヤリと笑った。

 その時、出川が持つ無線機に連絡が入る、出川は何かやり取りをすると隊長に向き直って報告した。

「救出ヘリがやってきます、避難させる人たちを屋上に案内してください」

 その場にいた全員がホッとした。これでもう少し安全な場所に移れると思ったのだ。

「じゃあ、女性と子供たちを屋上に案内して、ここに残ってもらうのは……」

 片山隊長がそう言いかけた時に木村が手を挙げた。

「誰かがここに残っていないと駄目でしょ、それなら機材にある程度詳しくい僕が残って連絡役を務めますよ」

 木村がそう言った。

「じゃあ、お願いします。 何か異変が有ったら無線で知らせてください」

 片山隊長は隊員たちにヘリの誘導と脱出組の支度を急がせたのだった。


 やがて救出ヘリの爆音が、疾病センターの屋上に響いて来た。

UH-60JAが2機とAH-1Sが4機だ。

貴重な燃料を使ってまで攻撃ヘリが4機も来るのは、走る不死者の攻撃、あるいは外国の特殊部隊の襲撃を警戒してなのか……

 恐らくは後者だろうなと達也は思った。

 UH-60JAが1機、屋上のヘリポートに着陸し、中から整備官の島田が下りて来た。

 手にはでかいダンボール箱を持っている。

「頼まれたものを持ってきましたよー」

 ダンボールを床に降ろして、箱を開け中身を手に取りだした。

「見てくれが悪いですが、50%程度音が軽減されますよ」

 手にしているのは海苔の入っている缶の様な大きさだ。

「なんだか海苔の缶みたいですね?」

 片山隊長がそれを手に受け取り、縦に横にして繁々と眺めている。

「ええ、海苔の缶ですよ。中にグラスウールを詰め込んで居るだけです」

 缶に棒のような物が付いており、それを89式小銃のナイフ取り付け口に差し込んで固定するようだ。

 後から取り付けるので隙間が空いてしまい、完全な消音は難しいそうだ。

「重さも対して無いので、邪魔にはならないはずです」

 島田は手に載せてお手玉のように弾ませてみた。

「でわ、使い心地を教えてくださいね」

 片山隊長は減音装置を全員に配るように東雲に渡した。

これで不死者を気にしないで射撃が出来る。

「はい、判りました」

 片山隊長は帰隊しだい報告書を出すことを約束した。

「それと、走る不死者用の銃です」

 島田はダンボールの底に無造作に入れておいた銃を取り出した。

 片山隊長は走る不死者対策用の散弾銃を受け取った。

薬室1発、装弾室に5発。水平2連銃でポンプ式で給弾が出来るようにしてある。

それとチョーク(銃身先端絞りのこと、弾のまとまりや飛距離を制御します)を拡げて、散弾がすぐに広がるように工夫してある。

 これなら1射で直径3メートル程度の弾幕が張れるはずだ。

 致命傷で無くても良い、肝心なのは走る不死者を足止めする事だ。

 足さえ止まれば銃でも斧でも処分が出来る。


「第一陣の出発を急がせるんだ」

 片山隊長は松畑隆二らの救援ヘリへの搭乗を急がせた、ヘリの爆音は近所の不死者を呼び寄せてしまう。

 最初の救援ヘリに隆二たちが乗っていき、友康は2番目の機に乗っていた。

「このヘリは12名までです!」

 救援ヘリにのろうとした保母の山谷が止められてしまった。

「あれれ、じゃあ、誰かあぶれるのか……機銃手、この人を乗せてやって下さいよ」

 手の怪我を柴田に縫合してもらった栗橋友康はあぶれてしまった保育師と交代した。

「貴方はどうなさるんですか?」

 我人を優先するように言われていた機銃手は戸惑ってしまった。

「救出チームのお手伝いをしながら逃げるか、次の便を警備室の木村さんと待ちますよ」

 友康は麻酔が効いていて、まだ自由に動かせない手をブラリとさせたまま言った。

「じゃあ、これを使って下さい」

 機銃手は自分の拳銃を渡そうとした。

「いやいや、いらないです。自分の足を撃つのがせいぜいですから」

 友康は笑いながら拳銃を辞退しヘリを離れた、生き残るべき人間がヘリで脱出すれば良い。

 ”自分はどうとでも生き残って見せる” これまでの経験が友康を少しだけ成長させたようだ。

 やがてヘリは爆音を響かせて、夕焼けの中に飛び立って行った。

 去ってゆくヘリ群を見送りながら片山隊長が全員に告げた。


「さあ、俺たちを待ってる人たちが居る。 出発しよう」


いつも読んで頂きありがとうございます。

ついでに下のアクセスランキングをぽちっとしてもらえると、少し幸せになります。

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