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変態科学者  作者: oKome
3/3

透ける薬・3

 あるところに四六時中桃色妄想ばかりをしていた老いた科学者がいました。


「警察に捕まり、部屋に隠していた大量の違法DVDも見つかって20年も牢屋に入れられてしまった」


 老いたの科学者はその間の苦労を思い、涙をにじませながらつぶやきました。


「だがこの薬の効き目は本物なのだ。どうにかしてこれを世間に活かせないだろうか」


 科学者初めて自分のためにではなく、人のために研究を始めました。


 研究を始めて数年後、一人の外国人が老科学者のもとを訪ねてきました。


「はじめまして、偉大なる科学者様。あなたが世間のために有意義な研究をなさっているが資金が不足しているという噂を聞きまして、それではぜひ私が世間のために出資をしようと参ったわけでございます」


 この願ってもない話に老人はよろこんで資金の提供を受けました。


 莫大なる資金提供のおかげでついに老科学者の研究は完成しました。


「ありがとう。あなたがお金を出してくれたおかげで私の研究は完成した。あとはこの薬をどう世間に役立てていくかだが・・・」


 老科学者は話の途中で固まってしまいました。男の目がぞっとするほど冷たい目をしていたからです。


「ありがとうございました。これで我が国の軍事力は他に類を見ない最強の部隊になるでしょう。博士はきっとノーベル博士のダイナマイト以来の偉大なる開発をしたとして語り継がれますよ」


 この時までこの人のいい老科学者は、この研究が軍事目的に使われることの危険さに気づいていなかったのです。


「見えない兵士に見えないミサイル。スパイもできるし暗殺だって簡単になります。これほど世間くににとって有意義な発明は無いでしょう」


「わ、私の研究はそんなもののためではない、世間の役に立つ皆に喜ばれるもののためにしたんだ」


「そんなこと私には関係ありません。あなたは私たちのおかげで研究を完成させることができたんだ。ならばその恩恵に最初にあずかるのはパトロンである私たちであって当然ではないですか」


「私の研究はお前たちには絶対に渡さん」


 老科学者は研究の全ての成果が詰まったデータを抱きかかえると、必死で外にかけだしました。


「逃げても無駄ですよ。あなたはいつでも私たちに監視されているのだから」


 遠くで聞こえた男の声は本当でした。老科学者が薬を飲んで一時的に姿を消そうが何をしようが、どこまで逃げても彼らは老科学者を見つけ出したのです。


「もういい加減にしませんか。そう何カ月も逃げ続けられるとこっちもそろそろ生死を問わなくてもいいという指令がでてきそうなんですよ。私としても天才科学者であるあなたに死なれるのはあまり面白くない」


 ついに廃工場に追い詰められた老科学者にむかって男は冷たく言い放ちました。 


「ええいだまれ、これは戦争に使うための物ではない。人類の平和のための物なんだ」


 そう言うと老科学者は携帯電話を取りだしました。


「私がただやみくもに逃げ惑っていたとおもうか。逃げながらも私はこの研究を信頼のできる仲間に広め、ある準備をしてもらっていたのだ。これが本当の私の研究の成果だ」


 老科学者がボタンを押すと世界中の研究所から桃色の液体が噴出し、世界中を桃色の雲で包みました。


 それは数分間だけの出来事でしたが、その美しい桃色を見た人たちは不思議と周りの人間を愛することができるような気がしました。


 戦争は止まり、殺し合いをしていた兵士たちは突然涙を流して武器を捨てました。


 全ての宗教に寛容になり、差別はなくなり、世界中の人が優しい気持ちになりました。


 老科学者は言いました。


「私の本当の研究の成果は服を透けさせることなんかじゃない。人の心の悪い部分を透けてなくしてしまうことにあったのだよ」


 いつでも桃色妄想ばかりしていた変態てんさい科学者は透けていない顔中に満面の笑みを浮かべていましたとさ。






(おしまい)

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