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透ける薬・1
あるところに四六時中桃色妄想ばかりしている若い科学者がいました。
「どう考えてもあの服という忌々しい布切れが邪魔だ。どうにかして服が透けて見える薬を作ることはできないだろうか」
この変態科学者は寝ることも食べることも忘れ、透けて見える薬を作るために部屋にこもりました。
「ようやく完成した。理論的には完璧だ。これでいつでも女の裸体がタダで拝めるぞ」
科学者はいそいそと支度をして人がたくさんいる繁華街にくり出すと、用意した薬をいっきに飲みほしました。
「出でよ、裸体のボインちゃん」
しかし周りを見渡しても何も見えません。真っ白です。
科学者の理論は間違っていませんでした。
ただし薬の効き目が強すぎて服だけでは無く体も、壁も、地面さえもが透けてしまったのです。
若き天才科学者は泣きながら研究室へと壁伝いに帰って行きましたとさ。
(おしまい)