俺がその子供に出会った事
「被告人の犯行は計画的であり、被告人に反省の色もありません。よって検察側は被告人に懲役5年の刑を要求します」
ふぅ。今日も無事に終えることができた。
まぁ、今回の事件は最初から証拠も出てたし、何より被告人の態度があまりにもよろしくなかった。
あれでは裁いてくれと言っているようなものだ。裁判官もあきらかにお怒りだった。
何というか、幸運にも楽な事件だった。
立石 奏 27歳。 AB型。 職業 検察官。 身長176cm、体重65kg。小、中、高と優秀かつ真面目な生徒として生活し、T大学法学部へ進学。司法試験をパスし、検察官となる。
これが俺のこれまでの全て。所謂、エリートコースというやつだ。自慢でも、卑下でもなく、客観的事実である。
時々思う。何てつまらない人生かと。
親のいいなり、教師のいいなりになって生きて、用意されたレールの上を走って、今に至る、といった感じ。何も自分自身でしようとしていない。
今は上司のいいなり。若いのに真面目で優秀だという評判を得た。
そろそろ疲れてきた。もういいんじゃないか。そんな事を思いつつ、今まで通りの生活を繰り返す。
こんな自分が嫌になる。何か他に夢中になれる事でもできれば少しはマシになるんじゃないか。そんな事を考えながら我が家へと足をすすめる。
「おかえり!遅かったな!」
ん?俺の部屋、305号室の扉から超えがする?
あぁ、俺はこんなに疲れていたのか。今日はもうねよう。
「おい!シカトか!?おかえりと言われたらただいまと言わなきゃだめらしいぞ」
ヤバイヤバイ。かなりリアルな幻聴だ。ホントに今すぐねよう。
そう思って俺は扉を開ける。
ガチャ・・・ゴツッ!
「いたっ!!」
ん?扉が開かない。もしやと思い、下の方へと視線を移すと・・・
「よう!やっとめがあったな!」
あきらかに小学校低学年と思われる少女が笑っていた。