晴天の先
登場人物
早川イサム(勇)
一卵性双生児の兄。弟より小柄で気弱な面もあるが努力家。父のサッカーに憧れる。
早川マサル(勝)
一卵性双生児の弟。明るくて素直な活発な少年。気弱な兄を支える優しい子。いつも兄と勘違いされている。
早川ソウスケ(宗佑)
双子の父親。サッカーJ2リーグのプロ選手。
早川ヨウコ(陽子)
双子の母親。フリーのカメラマン。取材の時に宗佑と出会い結婚。双子を出産している。今は専業主婦になっている
坂口ショウマ(翔駒)
朝比奈学園中等部1年。サッカー部でイサムと仲良くなる。明るく元気だけど少しドジっ子。
山本ナツミ(夏実)
朝比奈学園中等部3年。サッカー部のキャプテン。大柄でぽっちゃりとした優しそうな先輩。口調も性格もおっとりしている。
夜桜イオリ(伊織)
朝比奈学園中等部2年。サッカー部のエースストライカーで長身イケメンだけど言葉遣いが荒いのがちょっとネック。関西弁なので余計にきつく聞こえるが実はすごく後輩思い。
吉岡エミ(恵美)
朝比奈学園中等部2年。サッカー部のマネージャーをやっている唯一の女の子。
制服のまま練習に参加させられる手前でマネージャーの吉岡さんがこちらの様子に気がつき一年生分のジャージの古着を借りてきて、それを配られ着替える。イサムは1番小さなジャージでもぶかぶかで仕方なく袖口も裾も折り上げて対応した。
チーム分けがされ、軽く自己紹介と作戦を練る事になった。会議が終わるとイサムの肩を突いて一人の少年が声をかけてきた。
「オレ坂口翔駒。君はマサルくんの双子のお兄さんでしょ」
「う…うん。何で知ってるの?」
「初等部クラス一緒だったんだ。双子だから顔良く似てるし、早川くんって苗字この学校君らしかいないからね」
そう言うと手を差し出して握手を求めてきた。
「そっか。よろしくね、坂口くん」
「ショウマでいいよ。みんなそう呼ぶし」
「わかったショウマくん、僕はイサムでいいよ」
「OK、んじゃイサムくんこれから先輩達に一泡吹かせますか」
ショウマの手を強く握って勝利を誓った。
二年生の先輩がルール説明をし始める。
「基本ルールは8人制サッカーと同じでポジションはさっき話し合って決めたと思うが、キックオフ無しオフサイド無し当然だが反則も無しな。各チーム自軍以外のゴールならどっちを狙っても構わない」
「ようは俺ら二年生に敵わん思ぉたら一年生同士で点取り合いでもええちゅう訳や。わかったか?」
ショウマは先輩に聞こえない様な声でイサムの耳元で囁く
「あの関西弁の人、説明は人に任せてるのに…」
「聞こえてるでぇ、ショウマくん」
「す…すいませんでした」
「あまり一年生をいじめるなよ夜桜くん。僕も見学にきたよ」
おっとりとした声のキャプテン山本が夜桜と呼ばれた二年生を嗜たしなめる。
「ルールの途中だったね、ここからは僕が説明するね。使うボールは二つ、キックオフの代わりに僕とマネージャーの吉岡さんがピッチにボールを投げ入れる。そこからはゴールを決められたチームのキーパーがキックオフの代わりに味方にパスしてね。この時手を使ってパスしてもいいよ。もちろんゴールラインを越えてのハンドは無し」
山本の説明が続く
「ラインを割ってボールを外に出したら最後にボールに触って出した人がボールを取りに行く、もちろんキーパーも例外なくね」
そのルールを聞いて一年生がざわつく。
「キーパーが抜けた時、ディフェンダーはどう守り抜くかな、そこも鍵だよ」
「つまり三角サッカーってのは常に2チームから狙われて攻めより守りが重要だとですか?」
イサムの知らない一年生が質問をする。
「君は田中君だね、正解と言いたいけど少し違うのさ。この状態だとどうしても守り重視になって攻撃の手が緩んでしまう。そうなると引き分けには持ち込めても勝ちは見出せない。この練習の目的は攻防を一体に考えれるかどうかなのさ。味方の力を見極め、自分に何が出来るのかを考える練習なのさ。論より証拠まずは三角サッカーをやってみて自分達で考える、いいね」
山本が説明を終えると一、二年生がそれぞれピッチに入る。
「思ったより狭い…この中で3チームが動くのか…」
イサムの不安通り不慣れな一年生の動きはぎこちなくボールを二年生に2つとも奪われていた。次々と得点を決める二年生に圧倒されつつ一年生も健闘はしているが得点までは至らない。
やきもきしていたショウマが飛び出す、ボールの一つをインターセプトし走り出す、一人二人と交わしてイサムにパスを出した。パスを受けたイサムはピッチの味方を判断し指示を出し始めた。
イサムがフェイントから味方へパス。パスを受けた味方もイサムの指示通りに他の味方へと繋ぎ始める。
一年生のAチームが狭いピッチの中を自由な空を飛ぶ鳥の様に動き始めた。
「中々やるね、Aチームの早川くんと坂口くん。チームが一体になってきたよ」
山本も目を見張る様な動きで二人が中心になって得点を重ねて行く。狭いピッチとルールに慣れた頃に無情にも終了の笛が鳴り練習が終わった。
「はいお疲れ様。一年生どうだった?やってみて」
山本の優しい声に、楽しかったもっと時間があればなど色々な声が上がる。山本が手を挙げざわつく声を制した。
「今日みたいな練習だけじゃ無くてもっと辛くて厳しい練習もあるけど、それを続けてレギュラーを目指してね、あぁそれと今渡しているビブスとジャージは洗濯してマネージャーまで持ってきてね。では、明日からよろしくね」
山本の挨拶を締めに解散をした。そして次の日の一年生一同は激しい筋肉痛に悩まされる事になるのである。




