↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/28

キックオフ

この物語はイジメを助長する目的ではありません。この話はイジメを含む一部作者の体験を織り交ぜたフィクションです。精神的に不安定な方や気分を害す方、感情的になりやすい方などは閲覧を控えてください。


登場人物


早川イサム(勇)

一卵性双生児の兄。弟より小柄で気弱な面もあるが努力家。父のサッカーに憧れる。



早川マサル(勝)

一卵性双生児の弟。明るくて素直な活発な少年。気弱な兄を支える優しい子。いつも兄と勘違いされている。


早川ソウスケ(宗佑)

双子の父親。サッカーJ2リーグのプロ選手。


早川ヨウコ(陽子)

双子の母親。フリーのカメラマン。取材の時に宗佑と出会い結婚。双子を出産している。今は専業主婦になっている


坂口ショウマ(翔駒)

朝比奈学園中等部1年。サッカー部でイサムと仲良くなる。明るく元気だけど少しドジっ子。


山本ナツミ(夏実)

朝比奈学園中等部3年。サッカー部のキャプテン。大柄でぽっちゃりとした優しそうな先輩。口調も性格もおっとりしている。


夜桜イオリ(伊織)

朝比奈学園中等部2年。サッカー部のエースストライカーで長身イケメンだけど言葉遣いが荒いのがちょっとネック。関西弁なので余計にきつく聞こえるが実はすごく後輩思い。


吉岡エミ(恵美)

朝比奈学園中等部2年。サッカー部の女子マネージャー。


柴谷マモル(護)

朝比奈学園中等部1年。野球部で捕手、マサル親友。お調子者だが友達思いの優しい少年。


竹中メグル(廻)

朝比奈学園中等部1年。野球部で元サード。内野ならどのポジションでもこなせる、今はショートで活躍。勝とは仲が良い友人関係。


日高リュウセイ(流星)

イサムとマサルの同級生で三年生の時のクラスメイト。古備(こび)スポーツ少年団のチームメイトでもあり、中学年の部でマサルと同じレギュラー選手。悪い子では無いが噂好きで黙っていられないタイプの少年。ポジションはディフェンダー。現在は古備東中学校に進学、イサムたちとライバルになる。

中学サッカー夏の県大会が開かれる。県参加の各中学校、クラブチームが集うU(アンダー)-15の大会


開会式は一つのスポーツ公園に集まり行うが、日程のズレるチームは今日は開会式だけで終わり


本日の試合のあるチームは今いるこの会場ともう数ヶ所の会場で行われる。


Aグループが本日、明日がBグループ、明後日がA、Bのトーナメント勝ち抜いたチームが対戦となる。


朝比奈学園はAグループで初戦の対戦相手は古備(こび)東中学校。


運命の引き合わせか転校しなければイサム達が通う筈だった中学との対戦だ。


マサルの情報では親友の日高流星がレギュラー入りを果たしているとの事だった。


イサムも久しぶりに流星に会える事を楽しみにしていた。


ピッチに整列して一礼を頭を上げると一際背の高い少年がこちらを見てニコっと微笑み右手を軽く上げる


流星だ。背も伸び顔つきもすっかり少年から青年になっていたが


何処か懐かしさを感じれた。お互い声の掛け合いは出来なかったが視線だけでそれを察した。


互いのフィールドにバラける、イサムはベンチに向かうが流星はFWの左翼につく。


別々のポジションからのスタートでキックオフは古備東中(以下東中)からとなる。


「知り合い?」

ショウマが声をかけて来た。


「うん。僕の転校前にいたサッカー少年団の仲間。弟と仲が良かったんだ」


イサムのその言葉にショウマは少し引っかかる

「弟と?お前とはどうなんだ?向こうも知ってますって顔してたけど」


イサムは一呼吸置いてから口を開いた。

「何度か会話したとは思うけどイマイチ記憶が曖昧なんだよ」


「それって前にも聞いた事ある記憶の喪失ってやつ?」

「分からない、でも話はした事はある。マサルほど仲が良いとは言えないけど…」


そう言うと目の前で行われている試合に注目した。


朝比奈は終始押され気味でゴール手前までボールが運ばれる。ゴールにまで至らながいつ得点されてもおかしくない程だった。


「くっ今のはやばかった、キャプテン…いや、山本さん勝てますよね…」


ショウマが不安になり山本に尋ねる。


「う〜ん。うちの中盤はギア上がるまでに時間がかかるからね。もうちょっと様子見ようか」


おっとりした声に緊張感は無く、むしろチームを信用している証拠なのかも知れない。


山本の言う通り朝比奈側の中盤がもたついていてオフェンスラインまでボールを繋げていない。


「君ならどう動く?早川くん」


「今のうち中盤のなら4-3-3のシステムよりパスラインをもう少し空けれる4-5-1のワントップの方が中盤が生きると思います。」


「確かに東中のゾーンプレスに押されているからね…山田先生いいですよね」


何らかしらの打ち合わせを山本と山田が行っていたらしく、山田も頷いて同意した。


「早川くんアップの準備を、それと坂口くんと一緒にね」


「わ…わかりました。」


二人はここで試合に出れるとは思っていなかったので声がうわずってしまっていた。


山本がゆっくりと立ち上がり二人の肩をそっと抱くように包み込む、


「大丈夫、君たちでこの、現状を打開できる。思い切り楽しんでおいで」


長時間立つ事の困難な山本の励ましは二人にとってプラスに働く。


期待はプレッシャーとしては無く勇気として二人に伝わった。


前半の終わり掛けに東中のスローインになり二人が交代選手としてピッチに入る。


「よっ親友、ようやく出てきたな」

「俺、イサムだよ」


「知ってるよ、でも親友だろ」


「…ありがとう」


流星の言葉にイサムは胸が熱くなり、ショウマは少しそのやり取りに嫉妬した。


スローインからのスタート、イサムは中盤を動かしボールを持った古備東の選手にディフェンダーでプレスを指示した。


ディフェンダーから中盤にボールが周り先程まで超えれなかったオフェンスラインを超える事がが出来た。


パスを繋ぎショウマにボールが渡る。得意のドリブルで一人抜き去りサイドチェンジでライトサイドの島村にパスが渡る。


島村はフォワードの夜桜にクロスを上げる。夜桜のヘディングがゴールポストに弾き返された。


その隙をイサムは見逃さない。そのままバイシクルシュートでゴールに叩き込んだ。

その瞬間、前半終了の笛がなった。


「ナイスシュート、イサム」


真っ先に興奮気味に駆け寄って来たのは味方では無く流星だった。


「そんな敵に塩を贈るなんてことを…」


流星は泣きながらイサムに抱きついた。


「本当に…本当に良かった…あぁぁぁ」


ひとしきり泣き終えて東中の三年生に連れ戻された流星だったが、

イサムがサッカーに復帰している事をマサルから聴いていたので心配していたようなのだ。


「なんかあの話聞くと戦い難くくなりますね」


ショウマの言葉に夜桜が


「だから俺らが勝って勝って勝ち進めばいいんじゃねぇか」

と背中を叩いた。


後半までの休息に互いのチームの決意は固まっていた。

それぞれの道


後半戦、1対0のまま朝比奈のキックオフから。イサムは細かく指示を飛ばす、ライトサイドにパスを繋ぐもコースを読まれてインターセプトされていた。


「しまった!菅凪さん戻って!」

ディフェンダーの菅凪に指示するも、間に合わずパスが繋がり東中のカウンターが朝比奈布陣を崩し始めた。


自ら走り込みゴール前まで辿り着くが東中7番にシュートを放たれる。朝比奈ゴールキーパーの小野坂がボールをパンチングで弾く。


イサムが素早く反応してボールに追いつくがジャンプ力で負けてしまい、ゴールを割られてしまった。


着地時にしゃがんで悔しがるイサムに手が差し伸べられた。ゴールを決めるたのは日高流星だった。差し出された右手を支えに立ち上がり


「ナイスファイト、イサム。ジャンプ力だけなら負けたよ、相変わらずすごい反応だね」

「ゴール決めた君が言う?昔は同じくらいの身長だったのにその身長羨まし過ぎるぞ」


お互いがお互いを誉めながら各陣に戻る。


「すいませんでした。僕の指示ミスです」

「何言ってんだミスなんかじゃねぇ、相手がお前を知り尽くしていただけだ。ダチなんだろ?」

「はい…」

「今度はアイツの知らない成長したお前を見せてやれ」

「はい!」


イサムは一度目を閉じて瞑想に入る。その間数秒でピッチ上の選手の位置どりを把握、そこからのボールの流れと選手の行動予測をイメージして目を開ける。


「行けます」


そう断言すると朝比奈のキックオフでイサムがボールを蹴り出す。夜桜が右サイドにボールを回し横山はそのままドリブルで右ライン沿いを走り出す


「懲りずに同じ戦法か?…イサムはそんなに馬鹿じゃ無い筈だけど…」


流星が戸惑っていると横山は振り向かずにヒールキックで真後ろかついて来ていたディフェンダーの大泉にパスを出す。すかさず大泉は左サイドの菜花に大きくサイドチェンジする。


ゾーンプレスの為中央からやや右よりにポジションを置いていた東中の、空いたスペースに夜桜が入り込みフリーになる。


「イサムが動いて無いのになんで!?」


流星は混乱していたがイサムの行動と周囲の朝比奈の選手の動きでおおよその検討がついた。


「アイコンタクト!…短期間で勝ち得る力じゃ無い、それほどこのチームはイサムの信頼が厚いっていうのか!?」


1対1でのシュートはキッカー側が有利なのは明白でよほど反射神経と動体視力が良くなければ止める確率は上がらないだろう


夜桜のシュートはゴールネットを揺らし、それが決定打となって試合は朝比奈学園の勝利で幕を閉じた。


「今回は負けたけど、イサムともう一度サッカーできた事は本当に嬉しかった。オレ達の分まで勝ち抜けよな」


イサムと流星は固く握手を交わしお互いピッチを後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。