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新一年生

この物語はイジメを助長する目的ではありません。この話はイジメを含む一部作者の体験を織り交ぜたフィクションです。精神的に不安定な方や気分を害す方、感情的になりやすい方などは閲覧を控えてください。


登場人物


早川イサム(勇)

一卵性双生児の兄。弟より小柄で気弱な面もあるが努力家。父のサッカーに憧れる。


早川マサル(勝)

一卵性双生児の弟。明るくて素直な活発な少年。気弱な兄を支える優しい子。いつも兄と勘違いされている。


早川ソウスケ(宗佑)


双子の父親。サッカーJ2リーグのプロ選手。


早川ヨウコ(陽子)

双子の母親。フリーのカメラマン。取材の時に宗佑と出会い結婚。双子を出産している。今は専業主婦になっている


あらすじ


マサル達野球少年団の勝山リトルファイターズは県大会優勝、地区大会4位と好成績を残して六年生の引退となった。

そして双子たちは中学生になっていた。


双子は二月で12歳になりもうすぐ中学生になる。希望と不安が入り乱れる中残りの月を過ごしていた。

互いの日課のトレーニングが今まではイサムが早朝のランニングとシャトルラン、マサルが夕方のランニングと投球練習だったのだが、

マサルが六年生の春に襲われた事件以降イサムがマサルの方に合わせて一緒にランニングする様になっていた。

 

イサムは基礎トレーニングに加え、サッカーの練習も個人でやっていたが、大会の終わったマサルが兄の練習を手伝う形で1対1でドリブルやパスの練習をやっていた。


 イサム達が通う勝山(かつやま)市立朝比奈(あさひな)学園は小中一貫校ではあるが卒業式は初等部、中等部とで行われるため初等部での卒業式を迎える事になった。


朝比奈学園初等部での生活はマサルが2年と数ヶ月、イサムはほぼ1年なので思い出と言う思い出は少ない、


しかし感情の高い二人は卒業式中、涙が溢れて自分でも何でこんなに涙だが出るんだろうと思うくらいボロボロと泣いていた。

 

それを見た教師達も次々ともらい泣きしていた。式の後クラスごとに集まり集合写真を撮る事になり、


イサム達の祖父である倫治(ともはる)が元プロカメラマンであったことから孫二人を自分のカメラで撮れると知り喜んで引き受けていた。


桜が咲き花びらが舞い散る頃、中等部での入学式が行われた。小中一貫校なのに入学式が行われる理由は近隣の地区に小学校はあるが中学校が無い地域の子がいる為に中学から入学と言った生徒もいるからだ。

式後さっそく部活勧誘している運動部の見学するのにイサム、マサル、護の三人は一緒に動いていた。


「お前ら二人は野球だろ?俺はサッカーだからこっち行ってみるよ」

「兄ちゃん一人でいける?」

「子供じゃないよ」

マサルにからかわれイサムはヘソを曲げて反論する。二人が笑い出したのでイサムも合わせて笑い出しその場で別れた。


「えーっと。こっちがテニス部だから…こっちか」

入学式後に渡された手づくり感満載の案内状を片手にサッカー部を探すと左手に生垣の側で屈んでいる上級生達が見えた。


「あのぉ、サッカー部はこちらでしょうか?」

体格の良いボール磨きをしている人に声をかけると


「えーっと、新一年生かな?入部希望者でいい?」

「はい」

「ならこっちに」

体格は良いが物腰の柔らかい少年が部室に案内された先にマネージャーの女の子がいた。


「キャプテン。忙しい時に何してたんです?さっきまで新入部員がいっぱいで大変だったんですよ。それに余り歩き回っていたらといざって時に大変ですよ」


イサムはその言葉に反応して彼を見てキャプテンだと知り驚いた。


「分かっているよ、だから僕も一人連れて来たよ、吉岡さん」

部長は悪びれる事なくイサムを紹介して、部員募集の長い会議机に片手を置いて椅子に座った。


「キャプテンだったんですね」

イサムの言葉に

「あぁ僕はサッカー部のキャプテンをやらせて貰っている山本夏実(なつみ)、こっちの女の子はマネージャーの吉岡恵美(えみ)さん」


そう紹介されると二人は軽く会釈をした。


「お…僕は早川イサムです」

「早川くんか、ひとまずこのノートに名前を書いてね。今日からしばらくは仮入部扱いになるから他の部活動に行きたくなったら遠慮なく行って良いからね」


物腰の柔らかさは変わらず笑顔でノートをイサムに手渡す、

「あぁ一応自宅、もしくは親御さんの携帯電話もわかったらノートに書いておいてね。仮入部中にもしもの怪我や体調不良を起こすかも知れないから緊急連絡ようだね」


ノートを書き終えるとマネージャーの吉岡が練習グランドにイサムを連れて行く、

「今日は体育ジャージまだもらってないと思うのでここで他の一年生と一緒に見学しててね」

他の一年生に挨拶しつつ上級生達の練習を見学していた。小学レベルとは格段上のプレーにイサムは興奮を隠しきれなかった。


一人の上級生が新一年生の存在に気が付き練習を中断させて複数人を集めて話をし始める。しばらくするとその中の一人が見学している一年生の元に寄ってきて、


「観とるだけやつまらんやろ、ちょっと参加してみぃんか」

そう声をかけられると一年生達はざわざわと混乱し始める。その中で一人の少年が手を挙げ立ち上がる。


「あの、僕たちジャージもスパイクまだ支給されてませんが」

「えーっと、君は何くん?」

「坂口翔駒(しょうま)と言います」

その先輩は名前を聞くと


「あーショウマくんやっけ?サッカーは何でプレーするんや?」

「何でって…サッカーボールでですが…」

「せやろ、せやったらジャージもスパイクいらんのんちゃう?」

再び一年生がざわつく、


「上着だけ脱いどき、そしたら君ら一年生、1、2…16人か丁度ええわ8人づつに分かれて俺ら二年と三角サッカーやろか」


上着を脱いだ一年生からランダムにカラービブスを渡される。二年生が赤色、一年生Aチームが青、Bチームが黄色のビブスを着用してグランドに連れ出される。イサムは青のビブスを渡されていた。

 

声をかけに来た先輩以外が白線やゴールの配置などをして三角形の角に折りたたみ式のゴールが三つ置かれていた。


「初等部からいっしょの奴、他の学校からこの中学にきた奴、入り乱れとるやろがここは互いに仲良うなるとこや、自軍のゴールはキーパーがおるから分かるやろ。そこにボールを2個掘り込んでサッカーしようちゅー訳や」


「これだとごちゃごちゃし過ぎて自軍の点とか分からなくなると思いますが」

一人の一年生がそう言うと「そうだそうだ」と声が出る


「アホか、これは点取ったらええだけのもんちゃうねん。まずは楽しむ、そっから技術や周りがどんだけ見えとるか鍛える練習やねん。

その上で得点チャンスをどれだけ作れるか、チャンスをどんだけ活かせるかそこを知る為の練習や」


その二年生の先輩に圧倒されながら練習に参加させられる事になった。

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