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終章 微かな光



開けない夜は、俺を呑み込もうとしていた。

空は黒よりも深い闇に沈み、星々はほとんど姿を消した。

街は静寂に覆われ、もはや誰の声も聞こえない。


――そのときだ。


視界の端に、ひとつの光が瞬いた。

豆粒ほどの、小さな、小さな光。

消えかけた街灯でも、星でもない。

それは確かに、この地上で瞬いていた。


俺はふらつきながら近づいた。

それはアスファルトの上に落ちていた。

ビー玉ほどの透明な球体。

その内側で、淡い光が脈打つように揺れている。


触れると、ほんの一瞬だけ――

朝の光景が、脳裏をよぎった。

青い空。

雲。

眩しい太陽。

笑い合う人々。


「……これは……」


言葉にならない。

それが何かは分からない。

未来なのか、記憶なのか、あるいは幻なのか。

ただ、確かに「朝の気配」がそこにはあった。


気づけば球体の光は、俺の手の中で静かに消えていた。

だが、胸の奥にはまだ微かな温もりが残っている。


夜は終わらないかもしれない。

それでも――

どこかで、誰かが、また朝を灯そうとしているのかもしれない。


俺はもう一度、暗い空を見上げた。

そこには依然として深い闇が広がっていた。

けれど、ほんの一瞬だけ、確かに見えた気がした。


――夜の奥に、かすかな光の揺らめきが。





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