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最終章 開けない夜の果てに
二十五日目。
人の声を、ほとんど聞かなくなった。
街は静まり返り、暗闇に沈んだビル群だけが影のように並んでいる。
俺は歩いた。
理由は分からない。ただ、このまま部屋に閉じこもっていても、息が詰まるだけだったから。
人気のない大通りに出たとき、ふと空が光った。
雷でも、花火でもない。
夜空の一点が、脈動するように明滅していた。
次の瞬間、星座が大きく形を変えた。
まるで「誰か」が空に指を走らせ、書き換えているかのように。
――あれは、地球が動いているのではない。
世界そのものが、別のものに差し替えられている。
理解した途端、膝が崩れ落ちた。
息が詰まり、喉が焼けるように乾いた。
どうしようもなく恐ろしいのに、不思議と涙は出なかった。
「俺は……ただの人間だ」
呟いた声は、静まり返った街に吸い込まれていった。
何もできない。抗えない。
ただ見届けることしか、俺には許されていない。
空が、さらに暗くなる。
音もなく、色もなく、夜そのものが形を変えて迫ってくる。
そして、視界がゆっくりと閉じられていく――。
開けない夜は、ついに俺を呑み込んだ。




