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第三章 沈黙する世界



十五日目。

テレビの放送は途絶えた。

最後の映像は、疲れ切ったアナウンサーが原稿を読み上げる姿だった。

「……現在も原因は調査中です。国民の皆様は――」

その言葉の途中で画面は暗転し、以降は砂嵐だけが流れ続けている。


十六日目。

インターネットも繋がらなくなった。

スマホを握りしめて更新ボタンを押しても、表示されるのは「接続エラー」の文字ばかり。

世界と繋がっていた細い糸が、一本ずつ切れていく。


十七日目。

隣人の奥さんに久々に会った。

やつれた顔に、異様な笑みを浮かべていた。

「聞いた? 夜は神様がくれた贈り物なんだって」

彼女はそう呟き、玄関の扉を閉めた。

その夜、夫の姿を見た者はいなかった。


十八日目。

街を歩く人の数が減った。

残っているのは、目の焦点が合わない者か、独り言を呟きながら徘徊する者ばかり。

誰もが壊れかけている。


十九日目。

俺はベランダに出て、暗い空を見上げた。

星々は確かに輝いていた。

だが、その配置がほんの少しずつ変わっているように見えた。

いや、変わっているのではない。

星が、一つずつ……消えているのだ。


二十日目。

もう、時計を見るのをやめた。

針が進んでいようといまいと、意味はない。

朝が来ないのだから。


ただ一つ分かるのは――

この夜の向こう側にあるものは、きっと人間には耐えられないものだということだ。





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