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最速の勇者/父はビジネスマン
19.最速の勇者
この日をどれだけ待ちわびたか。はやる気持ちを抑えきれぬまま、彼はスキップしながら王城へ向かう。荘厳な門を通り抜け、城内を往けば、最奥には国王が悠然と鎮座していた。
「おお勇者、よく来」『スキップ!』
長ったらしい話を聞いている暇はない。今日こそは、最速クリアタイムを更新してやる。
20.父はビジネスマン
時刻は21時。母親は渋る息子の背中を押し、半ば強引にベッドに横たわらせる。毎晩寝かせるのに苦労していた母親は、絵本の読み聞かせをしてみることにした。
『昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました…』
息子の目がパッと開き、嘆息する。
「あのさ、結論から話してくれない?」