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第0話 禁断の召喚術

「………………痛い、体が……痛い」


 頭痛、吐き気。

 体を押し潰されるような感覚。


「…………くる……しぃ」


 呼吸が上手く出来ない。


「あっ頭が………あぁぁぁ」


 少しでも気を許したら、痛みで意識を持っていかれそうになる。


 私は死んでしまうのだろうか?


「………こんな終わり方なんて」


 嫌だっ!

 まだ、死にたくない。


 死ぬわけには……いかないのに。


「……これ以上は、耐えられなぁああああああ!」


 いたい!


 いたい!


 いたい!


 意識が朦朧とする。


「……どうして?」


 何を間違えたの。


 私には、無理だったの?


「……ごめん……ごめんね、ヒユナ」


 仇を取りたかった。

 あなたを奪ったあいつらに、復讐してやりたかった。


 それなのに……。


「ぁああああ………ああああ!」


 これ以上は、もう耐えられそうにない。


「……こんな姉で、ごめんね」


 全ての痛みを受けいれるように、まぶたを閉じる。


「大好きだよ、ヒユナ」


 今、あなたに会いに行くからね。


 …………。


 …………。


 ———『見て見てお姉ちゃん! こんなにいっぱい魚が捕れたよ、すごいでしょ!」


 ———『もう、お姉ちゃんはすぐ調子に乗るんだから。やっぱり僕がついてないと心配だよ』


 ヒユナ、大好きな私の弟。


 あなたの成長を、どこまでも見ていたかった。

 ずっと一緒に、生きていきたかった。


 ―――『魔術師になったら、お姉ちゃんは僕が守ってあげるから!』


 あなたは誰よりも優しい魔術師になって、みんなに愛されながら幸せに生きて行くはずだったのに。


 ―――『おねぇちゃん。……怖いよ』


 ———『お……ねぇちゃん。……どこにいるの? ……暗いよ、痛いよ……嫌だ……嫌だよ』


 ―――『死にたく……ない』


 ……どうして?


 なんで、私は死のうとしている?


「……許せない」


 こんな終わり方で、いいはずがない。


「許せるわけがないだろうがぁぁあああああ!」


 この程度で諦めるな!

 どうせ死ぬほど痛いなら、もっと魔術を………。


「はあぁぁぁあぁぁぁぁあああ!」


 何も考えるな。

 術にだけ意識を……意識の全てを、集中させろ!


「せやぁああああああああああああ!」


 ―――ブォオオオォオオオオオオ。


「………か、風?」


 どこからか強い風が吹きはじめ、周囲を囲むように渦巻いていく。

 竜巻のように激しく、風はどんどんと勢いを増していく。


 体が……熱い。


 ―――ばちぃん!


「……え?」


 体の中で、何かが切れる音がした。


 ―――ゴォォォォオオオオオオオオ。


 大きく足場が揺れる。


「きゃっ……!」


 視界が……見える世界が、眩い光で破裂した。


 …………………。


 ……………。


 ………。


 死ぬほど苦しかったはずの痛みが、少しずつ引いていく。


「……生きてる?」


 だが、それと同時に猛烈な眠気が襲ってきた。


「あ、力が抜けて……」


 力が入らず、その場に倒れてしまう。


 何がどうなって………。

 意識が朦朧とするなか、何が起きたのかを確認するためになんとか視線を起こす。


「………えっ?」


 視線の先には、3人の男女が倒れていた。

 いつの間に……ここには、私以外は誰もいなかったはずなのに。


 …………突然……あらわれた?


「…………………!」


 ……召喚……できたの?


 それはすぐに、疑心から確信に変わる。


 ……成功したんだ。

 私は、やり遂げたんだ。


 これで、やっと……。


 これで……あいつらに。



「待っててね、ヒユナ」








「お姉ちゃんが、あいつらを殺してやるからね」

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