第9話
◇◇~ミレイヤ・クラリス~
「うーん、はえ!?」
少し前までとは違い何故かぬくもりと少々の重みが私に押しつけられてましたが、見た感じ人?みたいです。
「え? どういうこと? 私何してたか覚えてないんだけど……。」
寝ぼけていた私は隣で寝ていた男性にようやく気付きました。
「きゃーーーーーッ、どういうこと!?!」
私は気づかないうちに男性と一夜を過ごしてしまったということ?
そんな、私は酔った勢いでそんな節操のないことをしてしまったの?
私の不安をよそに隣の男性は目を覚ました。
「お、起きたのかミレイヤ。おはよう。昨日は凄かったな。」
え?
私、ほんとに昨日何をしたんだ。ナニかな。
そんな、レイヤと私が…そんな。
「えっと、私たちこれから一緒ってことだよね?(結婚するってことだよね)」
まさかレイヤが私のことを捨てるわけないだろう。
捨てないよね?
勇者パーティーから追放されて今は無職だけど。
「ミレイヤは勇者パーティーから追放されて行く場所がないんでしょ?それなら僕の手伝いをして欲しいかな。もちろん給与は出すし、衣食住の保証はするけど。」
あれ、話が通じてない気がしますね。
いやいやいや、こんな美少女(自称)と一晩を過ごして手を出さないなんてことありますか?
…あるか。レイヤならあるいは。
とりあえず、夜の件はひとまず置いておくことにしてこれからのことです。
私は勇者パーティーから追放されて実質指名手配中のようなもの。
雇ってくれるところなんてあるわけがないし、この国に居れるかどうかも怪しい状況です。
「ありがとうレイヤ。気持ちは受け取っておきます。でも…。」
迷惑をかけてしまうだけです、という言葉を呑み込んで私は黙りました。
「ミレイヤ、こういう時だけでも僕を頼ってくれよ。そりゃあミレイヤの方が能力は優れてるし、こんな状況でも何とかできるかもしれない。でもこれ以上ミレイヤが傷つくのを見たくないんだ。」
やっぱり、レイヤは優しい。
こんな私の面倒を見ようとしてくれるし。
だからこそ甘えたくはないんですけれど…。
「取り敢えずさ、僕の診療所に来てよ。話はそれからでもいいから。」
レイヤはさっそく自分の荷物をまとめはじめました。
そして、私の背中を押して自分の診療所がある王都の中心部から少し離れた真っ白な壁が目立つ巨大な建物の方に向かい始めました。
「あの、ミレイヤって人、勇者様を罠に嵌めようとしたのよね。」
「魔王の手下だったとも言われてるわ。やっぱり、辺境の村から来たってのは嘘だったのよ。」
道中、通り過ぎる人々が私のほうを指差して噂をしているように感じます。
本当はそんなことなんてしてないのに。
来たばっかりの頃はみんな暖かく迎えてくれたのに全員に裏切られた気分です。
レイヤは私の手を強く握ってくれました。
「着いたよ。さっさと中に入ろう。」
私とレイヤは足早に診療所に入っていきました。
待合室は静かでしたが、私たちの姿を確認するやいなか騒がしくなり始めました。
そして、カウンターから見覚えのある白銀の甲冑を身に纏った男が中から出て来ました。
「ミレイヤ、やっぱりここに来たのか。」




